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小島秀夫監督が、『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』の進捗からアイコン“ルーデンス”へのこだわりまで、大いに語る【コミコン 2016】

ファミ通.com 7月25日(月)23時26分配信

文・取材・撮影:編集部 古屋陽一

●こだわりのコジマプロダクションのロゴムービーが世界初公開
 2016年7月21日~7月24日(現地時間)、アメリカ・サンディエゴのコンベンションセンターにて、エンターテイメントコンテンツの祭典、San Diego Comic-Con International 2016(通称:コミコン)が開催。コミコンの会期に合わせる形で、コジマプロダクションの小島秀夫監督と、ゲームジャーナリストのジェフ・キーリー氏とのトークショウが、7月23日にダウンタウンにて実施された。トークショウには、コジマプロダクションの公式Twitterでの告知を見て応募してきた、限定100人のユーザーが参加した。

 最初にコミコンの感想を聞かれた小島監督は、「最高です」とひと言。ここ6年は毎年のようにコミコンに来ていたという小島監督だが、昨年は来れなかったとのことで、2年ぶりの参加に「帰ってきたという感じです」とのこと。コミコンに関しては、「すべてが楽しいです。街を歩いていてもゾンビがいるし、僕の好きなモノが溢れています。自分は究極のオタクなので、毎日がこういう感じだったらいいなと(笑)」とのことで、自身の嗜好にフィットするのがコミコンのようだ。

 ジェフ・キーリー氏が最初にトークのテーマとして取り上げたのが、コジマプロダクションのロゴ。小島監督によると、これはコジマプロダクションがどういう集団であるかを理解してもらうために考えたもの。人類の始祖となるホモ・サピエンスにはもともと“道具を使ったりする、知恵のある人”という意味がある。一方、オランダの歴史学者、ホイジンガは“遊ぶ人”ということで、ホモ・ルーデンスを提唱した。そのことにあやかって、“最先端のテクノロジーを使って、未知なるところに遊びを届けに行く”がコンセプトになっているという。


 小島監督がそんなコンセプトを立てて、盟友の新川洋司氏にオファーしたのは、「どんな環境にも耐えうるような宇宙服で、シルエットは中世の騎士風で、侍にも見えるようなものを」というもの。なかなかに難易度の高いオーダーだが、新川氏はそれを咀嚼。“船外活動スーツと甲冑をブレンドしたようなもの”というアイデアを基本線に、小島監督とディスカッションしながら、デザインを練りあげていくことになる。トークショウでは、本邦初公開となる新川氏によるデザイン案が公開された。「剣ではなくて一見、スピアー(槍)に見えるが、開くと旗が出てくるという設定にした」といったコメントも聞かれた。

 そして完成したコジマプロダクションのアイコン“ルーデンス”だが、昨年12月に会社を立ち上げたときは、スタッフが4人しかいなかったので、有名なCGスタジオにモデリングを発注。ところが、デキがよくなかったので、引き上げてコジマプロダクションで作ることになったのだとか。担当したのは、映画『ガメラ』でモデリングを手掛けていて、「コジマプロダクションに入りたい」と門戸を叩いた若いスタッフ。ひとりで取り組んで、1ヵ月半から2ヵ月かかったという。

 ちなみに、E3での『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』の発表以降、“ルーデンス”が同作に登場するのかよく聞かれるそうであるが(当のノーマン・リーダスにも聞かれたらしい)、「『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』とは関係ありません。あくまでもコジマプロダクションのアイコンです」(小島監督)とのこと。

 なお、“ルーデンス”の顔は、小島監督自身の顔をキャプチャーしたものらしい。今年の1月末にマーク・サーニー氏(プレイステーション4リード・システムアーキテクト)と世界中のスタジオを回ったときに、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのサンディエゴのスタジオで、たまたまCGスキャンをしたときのデータを使用しているのだとか。ただし、「僕の顔がスタッフの画面に出ているのを見て、“気持ち悪い”ということで、相当修正しました(笑)」(小島監督)という。

 “ルーデンス”の来歴が語られたあとで、トークショウではコジマプロダクションのロゴムービーが世界初公開された。そもそもは、E3で『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』のティザーを公開する前に完成するハズだったらしいのだが、「CGスタジオに発注したが、思うようなものにならなかったので、引き上げて(自分たちで)作った」という過程で、完成が遅れてしまったものらしい。

 このロゴムービーに関しては、「“ルーデンスが1歩踏み出すと足型ができる。アポロ11号の月面着陸のように、新天地に1歩を残すというイメージです。当初は足跡が三葉虫になって動き出して進化するというアイデアがあったのですが、“そんな時間はありません”と言われました(笑)。人が行かない深海のようなところにも遊びを届けたいというイメージですね。“ルーデンス”がスイッチを切り替える、海中だったと思われていたものがどこかの惑星だった。スピアを立てると旗が出て、そして鯨がブリーチングで応える(これは鯨が“遊ぶ”行動だといわれています)……という展開になります。現実なのか、バーチャルなのかわからない世界観になっています」とのこと。ロゴムービーなので、本編よりも目立たないような内容にしたという。とはいえ、「あまり説明しすぎるとよくないですね」(小島監督)とのことで、基本はご覧になる方が自由にイマジネーションを膨らませるのがいいのかもしれない。


 “ルーデンス”に関しては、ただいまフィギュアを制作中で、トークショウでは、何種類かの原型が紹介された。その中には、ねんどろいどやfigma(フィグマ)の商品も含まれており、会場でお披露目されたもののほかにも、コトブキヤやプライム1スタジオ(3分の1スタチュー!)が展開されるという。たくさんのフィギュアメーカーが、“ルーデンス”には注目しているようだ。「皆さんの家にも“ルーデンス”、遊び心を!」と小島監督。ちなみに、フィギュアの制作にはけっこうな時間がかかるのはご存じの通りだが、「今年発売されますか?」とのキーリー氏の質問には、「けっこうかかります」(小島監督)と、おそらく発売は来年以降になるであろうことがほのめかされた。それに合わせるように、小島監督が「『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』よりは早いです」と発言すると、会場からは笑いが湧き上がった。

 で、肝心の『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』である。小島監督はE3での発表の反響を「よすぎて驚いた」と振り返りつつ、「裸のおっさんが子どもを抱いているだけなので、発表前は“これで大丈夫なのか?”と、スタッフがいちばん心配していました」と会場の爆笑を誘ったあとで、「評価の9割はノーマンです。ありがとうございます」と続けた。

 いま『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』はいろいろな実験をしている最中で、ゲームエンジンがもうすぐ決まるという。E3で公開されたティザーは、ビジュアル実験の過程で作ったものだ。それとは違うエンジンで、ゲーム性の実験もしているという。公開されたティザーはカットシーンで、実際にゲーム中にも出てくるし、リアルタイムに歩いたりできるのだとか。「作りたい世界観の実験と新しいゲーム性を確認しながらやってきて、“このまま行けそう”ということで、エンジンをひとつにして本格的に作り出そうとしている段階です」と小島監督。

 引き続き、小島監督は、キーリー氏からの質問に応える形で、さらに『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』に言及。「E3でもお話したことですが」と前置きした上で、人間にとって悪しきものを遠ざけるために発明したものが棒で、善きものを近づけるために発明したものが縄。基本的にゲームは30年間棒を使うばかりで(ここにはもちろん銃も含まれる)、棒や銃を持って、ユーザーが何かに立ち向かうというゲームしかない。「棒や銃がないとゲームとして不満が残るので、『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』でも採用しますが、銃や棒を使いながらも、違うつながりかた、縄的なつながりを味わえる作品にしたい」と小島監督は『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』の方向性を語る。

 さらに、ティザーを見たユーザーからは、『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』のジャンルを「SFなのか、ホラーなのか、スピリチュアルなのか?」と聞かれるらしいが、「ジャンルにで縛りたくないのですが、SF、科学、オカルト、ホラーなどの要素を哲学的に解釈できるように、いろいろな仕掛けを入れている」とのこと。ユーザーが、それぞれの得意ジャンルで語れるような広がりのあるティザーになっているという。「いろいろな要素を盛り込んでいるゲームです」と小島監督。

 キーリー氏から『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』の進捗を聞かれると、「いまは、プロットや実験、キャラクターデザインなどの設定に取り組んでいるところですね。設定も名称など細かいところは変わっています。スクリプトの手前です。検証しないといけないことがあるので、ディテールまでは詰めていません。もちろんセリフもまだです」(小島監督)とのこと。開発状態の一例を挙げると(※これはあくまで一例であって、実際に『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』の中にこんなシーンが出てくるわけではありません)、プロットの中に津波が出てきて街が流されるシーンがあるとすると、処理スピードがどこまでできて、どの規模まで津波が表現できるかなどの実験をしないといけない。それを精査している段階だという。


●日本に帰ったら、『ポケモンGO』で遊びたい
 トークショウの最後は、ユーザーから事前に募った質問に対して、小島監督が答えるというコーナーに。熱心な小島監督ファンからの質問ということで、小島監督の人となりに迫るものが多かったのだが、小島監督の思わぬ一面がうかがえて興味深かったり……。いくつかのやり取りをピックアップすると、

 「2016年の映画でおもしろかったものは?」との質問には、すでに決めているらしいが、「近日中に“HideoTube(ヒデチュー)”で2016年上半期ベスト10をやるので、それを見てほしい」とコメント。ちなみに、2016年1月~6月まで85本(!)の映画を見たらしいが、決めるのは難しかったという。

 いま、ゲームはほとんど遊んでいないらしいが、「日本に帰ったら『ポケモンGO』を遊びたい」と小島監督。「ちょっと出遅れてしまったかな……」ともつぶやきつつ。小島監督は、『ポケットモンスター』自体はものすごく好きで、とくに『ポケットモンスター金・銀』には相当ハマったという。


 「映画を作らないのか?」との質問には、一時期オファーはたくさんあったが、ゲームを作れなくなるので、一切断っていたという。いまは、「プロットであれば、『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』をやりながらでもできるので、やってみたい」と意欲を見せる。ただし、映画監督までやるのは、さすがにきびしいようだ。

 いま興味があるイノベーションに関しては、「やっぱりVRやAR」と即答。「誰もやったことのないものを本当はやりたいが、いまはできない」(小島監督)とのことだ。

 「インスピレーションの源は?」との問いには、(よく聞かれる質問のようですが)「映画を見て、本を読んで、音楽を聴いて、いろいろな国に行って、いろいろな人と会う」とコメント。つまり、特別な秘策のようなものはなく、「単純なことですが、いろいろなモノを食べて、いろいろなモノを出す。これに尽きます」と話すと、会場からは笑いが巻き起こった。

 ユーザーからの最後の質問は、『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』のテーマは? というもの。これに対して小島監督は、「どこまで言っていいのかな?」と困惑した表情でしばしスタッフを見回した上で、「『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』で描かれる時代は、いまとは違いますが、現実の世界で皆さんが案じていたり、悩んでいることがテーマです。ぜんぜん違う世界の話に見えて、私たちがリアルに生きている社会を描いているんです」(小島監督)と説明した。

 1時間に渡るトークショウはこれにて終了。“ルーデンス”の制作過程から『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』の進捗まで、小島監督のこだわりぶりを遺憾なく知ることができて、来場者も大満足だった様子。いまは、つぎの『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』の進捗発表を心待ちにしたい。

最終更新:7月25日(月)23時26分

ファミ通.com

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。