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南シナ海仲裁裁定、「中国の完敗」と喜べない

ニュースソクラ 7/25(月) 12:10配信

裁定で「島」が「岩」に降格 どうなる沖ノ鳥島?

 オランダ・ハーグの仲裁裁判所は7月12日、フィリピンが2013年1月に提訴していた南シナ海問題について、フィリピンの主張15件の大部分を認める裁定を発表した。

 中国の主張してきた、いわゆる「九段線」については「法的根拠は無い」との判断を示し、満潮時に水没する「低潮高地」(干出岩)は「海域への権限を何ら生じさせない」と述べて、中国がその上に人工島を造っても、その周辺が領海や排他的経済水域(EEZ)にはならないとした。

 南シナ海の大部分を囲い込む形で、フィリピン、ベトナム、ボルネオ沖に引いた「九段線」は元々、1947年に蒋介石の中華民国政府が発行した地図に11本の線が描かれていたのが発端だ。49年に成立した中華人民共和国もそれを継承、53年にトンキン湾の島の一部をベトナム領と認めた際に2本を消して「九段線」となった。

 1947年当時の中華民国はその国民政府軍と中国共産党軍の「国共内戦」の最中で、南シナ海を実効支配するどころではなかったから、地図に描いた「十一段線」は大風呂敷を広げたにすぎない。線の緯度、経度も中国はいまだ示せておらず、当時の中国の地図でも線の位置はまちまちだ。

 こんなあやふやなものが海を排他的に支配する権限の根拠になるはずがない。仲裁裁判所が中国人が南シナ海で歴史的に航海、漁業を行ってきたことは認めつつ、「これは歴史的権利というより、公海の利用の自由に基づくもの」としたのは妥当だろう。

 また、「低潮高地」は「それ自体の領海を有しない」ことは国連海洋法条約13条に明記されているから、そのうえに造った中国の人工島が領有権の根拠とならないのも当然だ。

中国が無効と主張する理由は?

 中国外務省はこれに対し、「仲裁法廷が出したいわゆる判決は無効で拘束力はなく、中国は受け入れない」と声明した。海洋法条約は第298条で「海洋の境界確定に関する紛争」については、いずれの加入国も拘束力を有する解決手続きを受け入れないことを宣言できる、と定めている。

 中国はこの条文に基づき条約批准時から適用除外を宣言しており、今回の審理には参加しなかったから、中国が「無効」というのにも根拠が全く無い訳ではない。仲裁裁判所でも一部の審理は「保留」にすべきとの論も一時あった。

 今回、仲裁裁判所は「中国が主張しているのは九段線の内側の諸資源に関する歴史的権限であって、南シナ海域に対する歴史的な権限ではない」として、同裁判所に管轄権がある、と結論付けた。

 もし争点が、島や岩礁、海域の領有権争いなら仲裁裁判所に管轄権はないが、資源を巡る紛争だから審理は可能、との説明だ。だが、実態としては島嶼の領有権、海洋の境界に関する紛争があるのだから、仲裁裁判所の管轄権論には疑問の余地がある。

 とはいえ、紛争当事国の双方が裁判で決着をつけることに同意しないと国際的な裁判が始まらない今日の原則では、分の悪い側はまず裁判に応じないし、大国は弱小国を圧迫しがちになる。5大国は国連安保理で拒否権も持つからロシアが東ウクライナの反徒を支援したり、アメリカがイラクに侵攻したような場合にも、国連はブレーキをかけられない。

 それを思えば、国際司法裁判所や常設仲裁裁判所、海洋法裁判所などの管轄権がなるべく拡大されることは世界の公正、平和のために有益だ。フィリピンだけが訴え、中国は応訴しなかったのに、曲りなりにも管轄権の理屈はつけて裁定を出した今回の仲裁裁判所は貴重な先例を作ったとも考えられる。

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最終更新:7/25(月) 12:10

ニュースソクラ