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躍進続ける携帯向け画像処理の覇者・モルフォ、大手企業がこぞって採用するそのDL技術とは

日刊工業新聞電子版 7月25日(月)17時0分配信

運転支援や構造物診断、画像の強みを大手に技術提供

 東京大学発ベンチャーのモルフォは、前田建設工業やデンソーなどの大手企業へ、ディープラーニング(DL、深層学習)を活用した画像・映像技術の提供先を広げている。同社はもともと、手振れ補正やパノラマ画像生成などの画像処理を手がけ、世界中のスマートフォンに採用される同分野の実力者だ。DLを使った画像認識に取り組む会社が複数ある中、大手企業に選ばれる理由は、自社の画像・映像処理の専門家としての強みがあるようだ。

 「最近、新しく声がかかるのは、DL関連が多い」とモルフォの平賀督基社長は話す。2015年12月には自動車部品最大手デンソーと次世代走行安全や先進運転支援向け人工知能の共同研究開発で合意し、出資を受けた。16年4月には前田建設工業と、DLを活用した構造物の画像診断技術の開発に着手した。作業者の手作業に頼っている劣化診断の効率化を目指すという。

 ほかにも、写真の被写体を認識し、例えば「結婚式」などの撮影シーンまで判別することもできる。こうした技術は、NTTコミュニケーションズなどに採用されている。「売上高に占めるDL関連の比率は、現在の10―20%から50%程度に増えていく」(平賀社長)とみている。

 DLを使った画像認識の基本的な仕組みは、他社と変わらない。例えば、猫を認識させたい場合、あらかじめ大量の猫の写真をマザーコンピューター(サーバー)で学習させ、猫を認識するモデルパラメーターを作成。モデルパラメーターと認識エンジンを、スマホなどのカメラを内蔵した端末に搭載すると、端末側で撮影した画像の中の猫を認識する。

■モルフォの画像認識精度は“力業”ではない
 モルフォの技術では、学習するのはサーバー側だけで、DLのフレームワークとして「Caffe」など既存のものを複数使用する。顧客の要望に合わせて、パラメーターと認識エンジンといった端末用ソフトウエアから、学習環境の提供までさまざまな形でDL技術を提供している。

 一般的に、学習データが多ければ多いほど、DLを使った画像認識の精度は高くなる。研究開発中心の企業とはいえ、モルフォの従業員数は約60人(16年1月時点)で決して多くない。素人目には、大量に学習させる“力業(ちからわざ)”に向かないようにも見える。

 規模が小さくても、画像認識用DLで注目される理由は、画像処理技術の応用などで学習効果の高い仕組みを構築しているからだ。同社のスマホ向け手振れ補正技術は、ジャイロセンサーを使わずにソフトウエアで写真の傾きを検知して補正している。同技術を使えば、一つの学習データの角度や色などを変更して学習データを増やせる。また、写真を人工的に色分けやラベル付けしたデータを学習に使うことで、画像認識の精度を高めている。
(梶原洵子)

最終更新:7月25日(月)17時0分

日刊工業新聞電子版