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「特定空き家」苦情増 県内自治体 特措法受け対策本格化

北日本新聞 7月25日(月)0時35分配信

 老朽化した空き家に倒壊の危険を感じ、近隣住民が不安を自治体などに訴えるケースが県内で後を絶たない。富山市中市の建物もその一つで、壁がはげ落ちるなど傷みが激しい。地元自治会の要望を受けた市が、所有者に適切な管理を促してもなしのつぶて。市は昨年施行された空き家対策特別措置法を受け、危険な空き家を撤去する手順などを示す計画を策定し、対策を本格化する。危険な空き家が増えている現状を打開する“特効薬”になるのか。 (社会部・柳田伍絵)

 「いつ倒れてもおかしくない」。木造2階建ての建物を前に、富山市中市の不二越1丁目町内会長、高橋修さん(66)がつぶやいた。窓ガラスは割れ、屋根はゆがみ、壁の一部が無くなって部屋がむき出しになっている。建物は、3世帯が別々に暮らせる構造になっており、うち2世帯分が空き家だ。傷みが激しいため町内会は市や警察に数年前から何度も対策を求め、注意書きが設置された。今春には強風が相次ぎ、高橋さんは「けが人が出るのではないかと不安で仕方がなかった。何かあってからでは遅い」と憤る。

 行政も手をこまねいているわけではない。昨年5月に全面施行された特措法は、所有者を迅速に特定するため、自治体が固定資産税の納税記録を照会することなども認めている。富山市は、特措法によって活用できるようになった固定資産税の情報などを使い、建物の所有者に適切な管理を促す文書を2度送ったが、返答はない。

 市が各町内会を通じて実施した調査によると、空き家は市内全域で5065戸確認された。中市の建物のように、適正な管理を求める苦情も市に寄せられている。県内ではここ数年、黒部市や高岡市で実際に空き家が崩れ落ち、付近住民や行政が後始末に苦労する深刻な事例もあった。

 富山市は今春、空き家問題に一括して対応する「居住対策課」を新設した。特措法に基づき、空き家対策の計画を本年度中に策定し、倒壊の危険や衛生上著しく害を与える恐れのある「特定空き家」への対応などを定める。

 特措法では、市町村が特定空き家を認定し、所有者に対して修繕などを指導、勧告、命令できる。さらに行政代執行による強制撤去も可能になった。ただ、中市の建物は一部で人が住んでいるため行政代執行の対象にならないという。こうした複雑な状況で、解決策を見出すのは容易ではない。

 同課の中村雅也参事・課長は「空き家はあくまでも所有者が適切に管理するべきもの。危険な空き家への市の対応をしっかりと検討していきたい」と話している。

■2月時点で県内48戸 強制撤去した例も 
 人口減などを背景に空き家は増える一方だ。総務省の2013年調査によると、県内の空き家率は12・8%で8戸に1戸の割合。倒壊の恐れのある特定空き家は、県が今年2月にまとめた調査で射水市5戸、砺波市6戸、小矢部市21戸、南砺市11戸、上市町4戸、立山町1戸の計48戸確認された。

 上市町は昨年11月、県内で初めて空き家対策特別措置法に基づき、同町大永田にある危険な空き家の強制撤去に踏み切った。住民からの苦情だけでなく、所有者が亡くなり、関係者が相続を放棄したことも取り壊す判断材料になった。勧告や命令を省いた略式の代執行で撤去した。滑川市では1月中旬から5月末までで、所有者との協議を進め、倒壊の恐れのある危険な空き家6戸を除去した。

 県内では魚津、滑川の両市と立山町が既に空き家対策の計画の策定を終え、富山市を含む9市町が本年度中に予定している。このほか空き家の適正な管理に関する条例は高岡市など10市町村が制定し、入善町も本年度中に定める。

北日本新聞社

最終更新:7月25日(月)0時35分

北日本新聞