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【川崎大輔の流通大陸】ミャンマーでプライスリーダーを目指す日系自動車メディア

レスポンス 7月26日(火)10時0分配信

ミャンマーの自動車メディアは紙からウェブへの流れが出てきている。ミャンマーで自動車月刊誌を発行する日系自動車メディア『CAR SEARCH(カーサーチ)』の責任者エイコミィン氏にミャンマー自動車メディアビジネスについて話を伺った。

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◆ミャンマー自動車情報紙のウェブサイトへの流れ

ミャンマーは、日本が約半世紀前に経験したのと同じようにモータリゼーションの波を今迎えようとしている。一点異なるのはいきなりネットがあるということで、情報の伝達は早いということだ。

ミャンマーの自動車情報メディアにも徐々にではあるが紙からネットの流れが出てきている。現在ミャンマーには『AUTO CAR』、『AUTO MOBILE』、『iAUTO』、『AUTO WORLD』、『HIGH SPEED』、『CAR SEARCH』の6つの自動車情報雑誌がある。ほとんどが週刊誌で、月刊誌は『CAR SEARCH』のみだ。「最近ヤンゴンでは徐々に情報誌を読む人が少なくなってきた感じがする」とエイコミィン氏は指摘する。地方ではまだネットが完備されていないが、ヤンゴンではネットによって情報がより早く伝わるようになった。

また、最近は日刊の新聞などで一般的な自動車情報を仕入れることができる。自動車市場の普及に伴って、多くの自動車情報の氾濫(はんらん)とニーズが出てきたためだ。週刊誌などでは即効性よりも、一般的には手に入りづらい深い情報などを特集して、独自のカラーをより強めていく必要が出てきた。更に情報が、都市部で増えてきたネットユーザーに届くよう、各紙ともホームページやフェイスブックなどを立ち上げ情報発信に力を入れてきている。


◆ミャンマーで唯一の自動車情報月刊誌『CAR SEARCH』

日本全国に自動車販売のフランチャイズを展開しているジョイカルジャパンがミャンマーで自動車情報誌『CAR SEARCH』の発行を行っている。「ミャンマーの中古車価格は非常にバラバラでいい加減な状況の中で、『CAR SEARCH』の目的はミャンマーでのプライスリーダーになることである」という。また、ミャンマーでは日本車に対する情報が非常に少ない。そのため、個別の車種情報を深く伝えるという特集を組んでいる。ミャンマーにマッチするSUV特集は、人気のあるコンパクトカー特集などの車の詳細について情報提供を行う。

現在、取引がある中古車販売店としてミャンマーで47社(ヤンゴン30社とマンダレー17社)、合計の約1,000台の中古車情報が掲載されている。対象とする読者はエンドユーザーである。しかし、中古車ディーラーやブローカーも購入していると聞く。読者の目的は、自動車ニュース、政府の自動車施策の動向、中古車市場価格の把握だ。年齢層としては30歳以上の人が多い。中古車購入の潜在ユーザーがミャンマーには多い。エンドユーザーはこのカーサーチの中古車価格を参考にして購入を検討している。他雑誌が、2,000部ほどの発行に比べて、『CAR SEARCH』は月刊5,000部ほど発行している。ミャンマー自動車情報誌の中でも、目立った存在となっている。


◆『CAR SEARCH』の他情報誌との大きな違いは相場情報

「自動車の相場を知ることができるというのは他(ほか)との大きな差別化になっている」とエイコミィン氏は強く主張する。他自動車情報誌が無料の中、2,000チャット(約200円)の定価をとって販売をしている。しかし、「中古車車体価格の掲載(プライスリーダー)」、「車に関する詳細情報」、ということでミャンマーで認知されてきている。更に車に関する情報掲載も大きな違いだ。ローカルの自動車雑誌はあるが、知識も内容も浅い。情報に関して格段の差がある。

また、ミャンマーではまだ1社もなかったマーケティング方法を導入。週刊誌は2日以内に全国に配布する必要がある。一方で月刊誌の『CAR SEARCH』は、もうすこし時間をかけてマーケティングを行える。1~2週間ごとに電話でカーリサーチを置いてもらっている本屋やディーラーなどにアプローチを行うのだ。配布後の販売状況を確認し、売れるお店には多く配布し、売れないお店には少なく配布する。他情報誌は配布して終了という中で、配布後にも販売数を伸ばしていくマーケティングアプローチをとっている。このようなアプローチをする担当の人間をつけているのもミャンマー初であるという。


◆自動車情報誌の課題と魅力

「中古車の販売価格を表示したくないというのが中古車販売店の本音で大きな課題である」と、エイコミィン氏はいう。まさに『CAR SEARCH』の強みである相場情報の核となるところだ。購入者が来た際に交渉の中で車の値付けするというのがミャンマーでは一般的なのだ。価格を表示するのなら広告を出して売らなくても良い、という日本とは異なる嗜好(しこう)性をミャンマー人は持っている。車の相場情報は貴重であるのと表裏一体で、価格情報を入手しづらい状況である。そのためショールームページとフリーページの2種類のスペースがある。ショールームページは料金を記載。車の料金を記載したくない場合はフリーページを利用し販売会社に関する情報のみの広告掲載ができる。料金を記載する方が販売される場合が多いが、料金を掲載したくないディーラーもまだ多数存在している。

また政府の自動車政策、方針がころころと変わる、というのもミャンマーでビジネスを行っていくために考慮しておかなければならない課題である。このような課題はあるが、ミャンマーはヤンゴンという狭いエリアだけで経済活動がなされているため、ヤンゴンだけに車が集中している。地方に行けばまだまだ車は足りていない。「新政権になりこれからいろいろな政策が解放されると思っており、潜在的な大きな市場が存在する」とエイコミィン氏はミャンマーの魅力を語ってくれた。

今後は、『CAR SEARCH』として、整備などの自動車周辺ビジネスへの参入も検討しているという。また、メディアの紙からウェブへの変化に対応するため、今年度中にウェブでの情報提供をスタートする予定だ。メディア、情報を持っているのは強い。今までのミャンマーは情報の非対称性が存在し、情報を持たないものが損をしてしまうような状況であった。ミャンマーは『CAR SEARCH』が提供する相場情報によって、一歩一歩ではあるが新たなステージへ向かい始めた気がする。


<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《レスポンス 川崎 大輔》

最終更新:7月26日(火)10時0分

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