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初心者にとって最も怖いのは誰か コンビニバイトの裏事情

ITmedia ビジネスオンライン 7月26日(火)8時11分配信

 その昔、高校生のアルバイトといえばコンビニやファストフード店が定番だった。人生初の面接に緊張した人も多いだろう。

【初心者のミスはたくさん】

 ところが、最近のアルバイト事情は変わりつつあるようだ。「コンビニバイトは初心者向け」と言われた時代は、もはや過去のものになろうとしている。

 今回は、コンビニバイトの裏事情を報告しよう。

●証明写真が「プリクラ」

 筆者がコンビニオーナーだったころは、高校生を含め、多くのバイト初心者を面接してきた。最も衝撃的だったのは、履歴書の写真に「プリクラ」を貼ってきた学生がいたことだ。

 「ついにこのときがきたか……」とも思ったが、こうした非常識な行為を時代の流れでスルーするわけにもいかない。バイトの面接のはずが、いつの間にか社会常識の教育の場へと変わった学生も少なくなかった。

 本来ならば証明写真がプリクラの時点で不合格なのだが、筆者はそういう学生は決して嫌いではなかった。なぜなら、履歴書の書き方1つ知らないような彼ら・彼女らが、数カ月もすれば主戦力へと成長する過程を何度も見てきたからだ。もちろん、社会の常識を知らない単なるアンポンタンなら採用しないが、“若気の至り”程度に面白いことを考えてくれそうな学生は積極的に採用したものだった。

●最も“あるある”なミスは「レジの打ち間違い」

 人生初の面接をめでたく通過すると、いよいよアルバイトの開始となる。バイト初心者が集まると「そんなことをするのか?」という想定外なことがたびたび起きる。

 最も“あるある”なミスは、レジの打ち間違いだ。預り金を打ち間違えてパニックになるなんてカワイイもの。人生初のアルバイトで慣れない作業に緊張しているのか、預り金を打ち間違えたまま、お釣りを渡してしまうのだ。

 「お会計は680円です。1000円お預かりします」と言いながら、間違えて預り金を1万円と入力してしまう。そして、その間違いに気付かないまま、9320円のお釣りを渡してしまうのだ。

 親切なお客さんは間違いに気付いて教えてくれるが、実際、気付かない人も少なくない(中には、気付いても気付かないフリをして、そのままお金を手にする人もいる)。売り上げの集計時に気付いても後の祭り、筆者も何度涙を飲んだことだろうか。

 誰でも最初は初心者だ、ミスは必ずある。ただ、初心者の域を出ないまま辞めてしまうバイトも少なくない。どういうことか、次のページで詳しく説明しよう。

●新人が新人の域を出られず辞めていく

 理由の1つに、アルバイトの人数が少ないということが挙げられる。コンビニ1店舗当たり10~20人のバイトが所属しているが、1つの時間帯に2~3人というのが平均的な人数だ。

 そして、少人数制はバイト1人当たりの仕事の負担が大きくなる。コンビニでバイトをしたことがある人ならご存じだと思うが、アルバイトの仕事はレジ打ちのほかに、商品の陳列、店内の清掃、仕入れの検品、弁当やファストフーズの廃棄・補充、宅配便の受け付けなど多種多様だ。時間帯によって偏りはあるものの、これらの決まった仕事を決まった時間内に分担してこなさなくてはならない。

 例えば、バイト歴数年のAさんと、入ったばかりのBさんがいるとする。ベテランのAさんはどんな作業もテキパキとこなすが、新人のBさんは戸惑うことが多く作業も遅れがちだ。すると店長は、作業を効率化するためにBさんにやらせるはずだった作業もAさんに任せてしまう。Aさんはどんどん仕事を覚えてスキルが上がっていくのに、Bさんは仕事が覚えられず面白くなくなって辞めてしまうのだ。

 また、24時間営業という環境もバイト1人当たりの負担を増加する要因になっている。オーナー店長とはいえ、24時間働けるわけではない。休憩や仮眠などで店を離れるとき、つい仕事が一番できるAさんに細かい指示を出してしまう。こうしてAさんの経験値はどんどん増えていくが、その他のアルバイトの経験値は一向に上がらないままとなる。

 1人の頼もしいバイトを成長させ、ある程度の仕事を任せられるようになるのは決して悪いことではない。しかし、新人が新人の域を出られず辞めていくということは、ずっとバイトの募集をかけ続けなくてはならないということ。新人が育つ土壌をつくるのは、オーナー店長の大事な仕事の1つなのだ。

●新人が辞めてしまう一番の理由は「人間関係」

 なんでもこなすAさんのように、単に経験値の高いアルバイトがリーダー的存在になるのは問題ないが、その人が女性の場合は少し注意が必要だ(もちろん女性だから問題なのではない)。オーナー店長が特別扱いすると、何を勘違いしてか、お局様と化してしまうことがある。新人バイトにとっての最大の鬼門は、人生初の面接でもありがちなミスでもない。「お局様バイト」なのだ。

 お局様バイトの特徴は、店内における決定権を持っていること。オーナー店長から権限を委譲されていることがほとんどで、それ自体は悪いことではない。その場で決定できる従業員が多ければ、仕事の効率も上がる。ところが、これを「権力」と勘違いするバイトがいるのだ。

 中には、派閥を作りたがるお局様もいる。従業員の多い職場ならいくつかのグループができることでバランスが取れることもあるが、少人数制のコンビニバイトでは、お局様率いるグループに所属するかしないかの選択となる。

 派閥を作って自分が店(大奥)を掌握したいというならまだマシなほうだ。職場ではいばっていたい、でも責任は持ちたくない。ヒマさえあれば、愚痴や悪口をいつも言っている――という、わがままお局様には目も当てられない。

 ゴマすり系お局様というのもいる。ゴマすり系お局様は、オーナー店長にいい顔をするだけではない。自分の地位を高めるために、他のアルバイトを落としめる。誰もいないところで、オーナー店長の悪口を他のバイトやお客さんにまで吹聴するのだ。

 最悪なのは、このようなお局様の存在にオーナー店長が気付いていないというパターンだ。なぜ気付かないのかというと、お局様はオーナー店長にとっては文句のつけようがない素晴らしいバイトリーダーだからだ。絶大な信頼を寄せ、お局様の言っていることが正しいと思い込んでいる。というか、洗脳されてしまっているのだ。

 こういう厄介なお局様バイトには即座に辞めてもらったほうがいいのだが、オーナー店長がそれに気付いていないのだからどうしようもない。実は、新人が辞めてしまう一番の理由は、こうした「人間関係」なのだ。

 本来ならば、オーナー店長がフォローをしなくてはならないのだが、忙しさにかまけて新人のフォローをおろそかにしてしまうことも少なくない。

 右も左も分からない新人アルバイトがお局様バイトと2人きりのシフトを組まれてしまうと、初めてのレジ打ちや新しい仕事を覚えることより、お局様と対峙(たいじ)するプレッシャーのほうがはるかに大きくてとっとと辞めてしまうのだ。

 実際、コンビニはお局様バイトを生みやすい環境だと筆者は考えている。先にも述べたとおり、少人数制の労働環境なので、性格が合わない人とも否が応でも付き合わなくてはならないのだ。

 ブラックバイトと言うと、世間では給料未払いやサービス残業が大きく取り上げられているが、労働環境悪化の要因の1つに「お局様バイト」という影の存在があることを忘れてはならない。

(川乃もりや)

最終更新:7月26日(火)10時0分

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