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遅延50ミリ秒未満のロボット向け無線中継技術

EE Times Japan 7月26日(火)10時46分配信

■ロボットを途切れなく遠隔制御

 情報通信研究機構(NICT)と産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは2016年7月25日、制御用の電波が届かない場所(見通し外)にあるロボットを他のロボットを経由して遠隔制御し、その状態を監視する技術を開発したと発表した。

【フィールド実証実験の様子】

 操縦者が広い範囲を移動するロボットを遠隔制御するためには、電波による無線通信が用いられることが多い。しかし、ロボットが厚い壁や建物、山など障害物の反対側に回り込んだ場合、電波は遮られて通信が切れ、遠隔制御ができなくなる。その場合、ロボット側から送られる位置や姿勢などのデータも届かなくなってしまう。

 これまでも他のロボットを経由して目的のロボットを制御するアドホックマルチホップ通信はあった。アドホックマルチホップ通信の多くは、主にインターネット用として設計された無線LAN技術をそのまま流用しているため、制御には適しておらず、複数のロボットを経由し、通信経路が周囲の環境の変化に応じて切り替わった場合に通信が1度切れてしまい、その間、制御が停止してしまうという課題があった。

 また、多くのロボットは、制御用の電波として2.4GHz帯を活用しているが、2.4GHz帯は、PCやスマートフォンに標準搭載されている無線LANだけでなく、電子レンジなどにも使われている。つまり、混信を受けるリスクがあるとともに、障害物による遮蔽(しゃへい)や減衰を受けやすいという課題もあったという。

 今回発表した技術を用いることで、操縦者とロボットが見通し外の位置関係でも、無線が同時に複数局に対して送信する性質を活用して、制御データとテレメトリーデータを、中継局を経由する通信経路によって冗長性を持たせて伝送できる。これにより、ロボットを途切れなく遠隔制御することを可能にしたという。

 電波が伝わりにくい建物内や災害時のロボットによる調査だけでなく、山間部でのドローンの低高度飛行によるモニタリング調査や物資の配送などへの応用、さらには、複数のロボットやドローンが自律的にお互いに協調し合いながら高い信頼性を持つ無線ネットワークを構成するシステム実現の基盤になることが期待される。

■時分割多元接続方式を制御に採用

 NICTは、同技術を実現したポイントとして、「通信方式を“ロボットの制御用”であることに特化し、中継伝送することを前提として、応答遅延時間が小さく、かつ、通信信号同士が互いに干渉しないことを両立させた新たな通信手順(アクセス制御プロトコル)を設計、開発したこと」を挙げている。

 具体的には、制御局と中継局間、中継局とロボット局間などの各経路に対し、通信信号をやりとりする時間のタイミングをあらかじめ割り振る「時分割多元接続方式」を、ロボット制御用として採用。データ伝送における時間スロットを効率的に使用できるとともに、通信路を確保するために応答遅延時間を一定に保つことができる。途中の中継局を経由しても、ロボットが受信する制御データの“鮮度”を一定に保つとした。

 また、従来の通信方式では端末の位置が固定、もしくは、あまり頻繁に動かない場合を前提としており、時間がかかっても必要なデータを全て送るために、通信開始前に中継経路の探索や設定などが行われている。同技術はこの手順をなくし、移動する端末を対象とした制御用として単純化した。異なる経路を経由して受信される信号を時分割多元接続方式を用いて常に全て受信し、受信側でどちらか強い信号だけを受け取るという手法を、ロボット制御用の中継方式として初めて採用したという。

 これらの技術により、これまで条件によって数十ミリ秒~数百ミリ秒まで変動していた中継局経由の応答遅延時間を、今回の開発装置では制御データの送信周期である50ミリ秒以内に抑えた。制御の不安定化の回避を可能にするとともに、中継経路がロボットの移動によって変更された時に発生する通信の切断をなくすことが可能になる。

■無線装置は920MHz帯を使用

 NICTと産総研が開発した無線装置は、920MHz帯を制御信号とテレメトリー信号の双方向で使用している。920MHz帯は、2.4GHz帯に比べて遠くに電波を飛ばすことができ、2.4GHz帯と同じく無線局免許や無線従事者資格は不要で、デバイスの価格も安価になってきている*)。また、相互の干渉なく、安全に電波を共用するための規格が定められており、混信を受けるリスクは小さくなっている。

*)920MHz帯と2.4GHz帯も、無線装置の技術基準適合証明(技適)は必要。NICTによると、今回の実証実験で使用した無線装置も技適を取得している。

 また、NICTと産総研は同技術を検証するため、試作装置を用いた屋外のフィールド実証実験を実施した。実証実験では、操縦者から見て見通し外にある小型四輪ロボットの安定な遠隔制御と、そのテレメトリー信号受信の実証に成功したという。

 ドローン(マルチロータ型無人航空機)に中継装置を搭載し、上空高度約20~30mでホバリングさせ、ドローンを経由して小型四輪ロボットへの無線通信回線を構成している。NICTはリリース上で、「ドローン経由で他のロボットを制御し、中継経路が途中で切り替わっても通信を切断させない技術は世界でもまだ実現した例はない」と語る。

■2016年11月にドローンでの実証実験を

 NICTと産総研は今後、制御対象を地上の小型四輪ロボットから、飛行するドローンに拡張する予定。また、無線による通信の信頼性をより高めるため、920MHz帯に加えて、緊急時のバックアップ用として、チャンネル数は限られるが、さらに遠くに電波を飛ばすことができるVHF帯(300MHz以下)を追加した無線装置に拡張予定とする。

 NICTは、「小型四輪ロボットで行った実証実験の特性評価を現在、行っている最中だ。制御対象を飛行するドローンにするには、ドローンのコントローラーに対応するインタフェースを調整するだけで、技術的な問題はないと考えている。2016年11月には、内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)で実証実験を行う予定」と語る。

 なお、今回の研究成果も、ImPACT(2015~2016年度)によって得られている。

最終更新:7月26日(火)10時46分

EE Times Japan

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