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今のままでは使いものにならない―― IoTの課題とIIJの取り組み

ITmedia エンタープライズ 7月26日(火)16時14分配信

 インターネットイニシアティブ(IIJ)が先頃、各種デバイスのセンサー情報の収集から、蓄積・可視化、制御・管理の自動化まで、IoT(Internet of Things)システムに必要な全ての機能を一体化し、クラウド上の“共通プラットフォーム”として提供する「IIJ IoTサービス」を発表した。

【画像】IoTの現状と普及を阻む要因

 新サービスは、IoTシステムに必要なデバイス管理やネットワーク、セキュリティ、クラウドなどの各要素と、それらを統合的に管理する機能を提供。これまで個別に機器やサービスを調達し、組み合わせて構築していたIoTシステムを1つのサービスとして提供することで、ユーザーは低コストかつ短期間で導入でき、新たなビジネス創出へ注力することができるとしている。

 図1が新サービスの概念図、図2がサービスメニューで、2016年11月から順次提供開始される。IIJは新サービスの特徴として、「個別構築が不要で、容易なシステム導入を実現」「高セキュリティなネットワークサービス」「センサー機器の自動制御により運用負荷を軽減」といった点を挙げている。詳しくは発表資料を参照いただくとして、ここでは発表会見の中で同社が説明したIoTの現状や課題、今後の方向性に関する話が非常に興味深かったので、取り上げておきたい。

 説明に立ったIIJクラウド本部の染谷直 副本部長によると、まずIoTの現状については、「一部大手企業でIoTを活用したビジネスが登場するも、市場全体ではビジネスモデル検証が開始されたフェーズ」と位置付けた。その根拠として、図3のように「IoT利用企業は現在4.9%」(IDC)、「IoTの専門部署やグループが存在する企業は現在10.1%」(ガートナー)にすぎないという民間調査の結果を挙げた。

 また、染谷氏は、日本においてIoT普及を阻む要因として、これまでユーザー企業のITシステムを構築してきたシステムインテグレーター(SIer)にIoTを手掛けた経験が乏しい一方、ユーザー企業が自らIoTに取り組もうとしてもITについてSIerへ依存してきたために知見が乏しいという、ITに関する日本独特の産業構造を挙げた。

 この点におけるIIJのスタンスは、SIerだけでなくユーザー企業も自らIoTを活用したアイデアを生かせるようなプラットフォームを提供すべき、というものである。

●ネットワークの低レイテンシ化がIoTの最大の課題

 では、IoTの仕組みに関する今後の課題と方向性はどうか。染谷氏はその前提として、将来のIoTを支えるネットワークの規模についてこう語った。

 「2020年には全世界で500億デバイスがつながるといわれている。このうち、日本は世界のGDP比で約5.5%であることから、27.5億デバイスになる。この数字は日本での携帯電話契約数約1.5億台(2015年度末)の20倍近くに相当する」

 その上で同氏は、来るべきIoT時代に向けて2つの課題を挙げた。まず1つは、ネットワークにおけるレイテンシ(遅延時間)の問題である。「医療系ITや産業機械、車の自動運転については、レイテンシを数ミリ秒以内のほぼリアルタイムにすることが求められている。現状では、地方から東京のデータセンターまでのレイテンシは数十ミリ秒かかっている。これをどう短くするかが、これからの大きな課題だ」と同氏は言う。

 もう1つは、セキュリティをはじめとした高信頼性の問題である。「今後はIoTにおいて、人命に関わる医療機器や車などもデバイスとしてネットワークにつながるようになる。そうしたネットワークには、セキュリティをはじめとして高い信頼性が求められる」と同氏。「そのためには、これまで培ってきたネットワークを根本から構築し直さなければいけない」と指摘した。

 IoTの課題として、セキュリティをはじめとした高信頼性については、現在のITシステムから通じる問題として広く知られているように思うが、レイテンシについてはまだ一般的に問題意識として高まっていないのではないだろうか。

 IIJの鈴木幸一 代表取締役会長兼CEOはこの点について、「IoTの最大の課題は、ネットワークのレイテンシをいかに短くできるか、ほぼリアルタイムのやりとりを実現できるかにある。しかもモノとモノがやりとりするとなると、ワイヤレスのネットワークでそれを実現しなければならない。車の自動運転などは、そうした技術が開発され、運用環境が整備されないと使い物にならない」と強調した。

 こうしたレイテンシの問題に対処するため、IT業界では今、「自律分散型クラウド基盤の構築とその制御・管理の自動化」への取り組みが注目されている。自律分散型クラウド基盤というのは、クラウドにおける処理を一極集中型でなく、データの発生現場に近いところに分散して自律的に行う仕組みのことである。しかもその制御・管理を自動的に行うことによって、ほぼリアルタイムの処理を実現しようというものだ。「エッジコンピューティング」や「フォグコンピューティング」などといわれる仕組みが、これに相当する。

 こうした仕組みは、IIJでも「“マイクロデータセンター”を各地域に設置していくことを検討している」という。

 IoTは今、ブームともいえる加熱ぶりだが、インターネットが出現したときから、やがてやってくる世界であろうことは想像がついた。難しいのは、多くの場合、ほぼリアルタイムのレイテンシでないと使い物にならないことだ。ただ、近い将来、それを実現する技術や仕組みが登場するところまで来たという感じがする。レイテンシを念頭に、大いに注目しておきたい。

最終更新:7月26日(火)16時14分

ITmedia エンタープライズ

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