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福島の仲間と再会かなわず 「幻の甲子園」光南の岡部伶音右翼手

山陽新聞デジタル 7月26日(火)7時54分配信

 第98回全国高校野球選手権岡山大会最終日の25日、創志学園に4―1で下された光南の岡部伶音右翼手。福島の仲間たちと甲子園で再会する―。その約束は、まさかの九回逆転負けでかなえられなくなった。「ようやく恩返しができると思ったのに」。ベンチ前で泣き崩れ、しばらくは起き上がることができなかった。

 野球どころではない事態に見舞われたのは、小学校卒業を目前に控えた2011年3月11日。突然、教室が激しく揺れた。故郷の福島県白河市を襲った未曽有の大震災。自宅は傾き、両親、弟と4人で一時的に長野県に身を寄せた。原発事故も収束の気配を見せず、家族で岡山へ移住したのは、その年の11月。競輪選手で震災発生当時、玉野市でレースに出走していた父・芳幸さん(45)の知人を頼っての決断だった。

 「言葉も違うし、どんな所かも分からない。何より仲間と別れるのが嫌だった」。不安を抱えて始まった慣れない土地での新生活。“日常”を取り戻させてくれたのは、やはり野球だった。岡山市の硬式チームに所属し、白球を追っていた中学3年の夏。聖地を踏んだ光南を現地まで応援に行った。「甲子園で会おう」。福島の友人たちと交わした誓いを果たすための進路は固まった。

 しかし、ここでも困難が待ち受けていた。新チームで最初の公式戦となった昨秋は地区予選で敗退。「以来、弱さを自覚し、本音でぶつかり合った」。そうしてたどり着いたこの日の決勝。五回無死一塁で、スリーバントの犠打を成功させるなど堅実なプレーで貢献した。「最高の仲間に支えられ、あと一歩まで来られた」。岡山で出会ったチームメートへの感謝の思いをあふれさせた。

 「悔しいけど、終わってしまったことは仕方ない。『勝って謙虚に、負けて堂々と』です」。これまで、どんなときも下を向かず苦難を乗り越えてきた。これからも、きっと。

最終更新:7月26日(火)7時54分

山陽新聞デジタル