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再生エネルギー、助走から飛躍へ

ニュースソクラ 7/26(火) 16:20配信

優遇税制など制度改革が急務

 昨年12月、パリで開かれたCOP21(第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議)は、温暖化防止のためのパリ協定を採択した。

 同協定は、今世紀末までに気温上昇を2℃未満に抑えるためには、今世紀後半にはCO2(二酸化炭素)などの温室効果ガス(GHG)の排出量をゼロにすることが望ましいと指摘している。

 この目標を達成することは容易ではないが不可能とも言い切れない。そのための第一歩として、日本を含め世界のエネルギー事情がどうなっているのか足下の姿をしっかり把握しておくことが必要だ。最近発表された「自然エネルギー白書2015年」を参考に現状をみてみよう。

 再生可能エネルギー(略称、再エネ)とは太陽光、風力、地熱、小水力、バイオマス、太陽熱などの総称だが、国によって自然エネルギー、クリーンエネルギーなどと呼ばれる場合もある。温暖化ガスを発生させる化石燃料、一度事故を起こすと取り返しがつかないほどの被害をもたらす原発と区別する用語として登場したものである。

 1914年時点の最新の数字を見ると、世界の発電量に占める再エネの割合は22.8%だ。化石燃料と原子力の割合が77.2%でまだ大部分を占めている。再エネのうち16.6%が既存の大型の水力発電だ。温暖化対策の必要性が叫ばれるようになった90年代初め以降に新規に導入された太陽光や風力などの再エネ(狭義の再エネ)比率は6.2%に過ぎない。この中では風力が全体の半分、3.1%を占め最も多く、次いでバイオマス1.8%、太陽光は0.9%に止まっている。

 日本の場合は発電量に占める再エネ比率は12.6%だ。世界比率の半分程度だ。このうち大型水力が8.2%を占めているので、それを差し引いた狭義の再エネ比率は4.4%である。狭義の再エネの中では太陽光が最も多く2.2%を占め、次いでバイオマス1.5%、風力0.5%、地熱0.2%などとなっている。一方発電量の大部分、87.4%は化石燃料(同年は原発稼働ゼロ)で賄われた。

 以上の説明から皆さんはどのような感想をお持ちになるだろうか。第一に再エネ、再エネとマスコミは熱のこもった報道をしているが、現実は、世界の発電総量の2割強を賄っているに過ぎない。狭義の再エネになると10%にも達していない。これでは今世紀末までに温室効果ガスの排出量をゼロにすることなどとても不可能ではないかと心配される向きが多いのではないか。

 第二に日本は再エネの先進国と思っていたが、実際には後進国だった。期待を裏切られたと感じた方も少なくなかったのではないか。

 一方、この数字を積極的に評価する見方もある。地球温暖化問題が大きくクローズアップされた90年代初めには狭義の再エネはまだほとんど存在せず、発電量に占める割合はほぼゼロだった。それから約25年後、その割合が2割強を占めるまでに至ったことは大きな成果ではないかという見方である。実は筆者もこの立場である。

 狭義の再エネ導入期の90年代初めは、太陽光、風力などの技術はまだ未成熟で出力も小さく設置コストも高く、補助金なしではとても普及は見込めなかった。それから20数年後、ICT(情報・通信技術)革命に支えられ、狭義の再エネは品質、出力、価格などで飛躍的に改善した。

 たとえば太陽光発電。90年代当初は個人住宅用(約3.5kwを屋根に敷設)が中心だった。経産省の資料によると、太陽光発電を設置するための価格(システム価格)は1993年当時1kw当たり400万円近くもかかった。それが2000年頃には100万円を切り、現在では40万円を切るものも出てきた。20年で価格は10分の1まで低下した。

 一方、この数年は電力会社や石油、ガス、鉄鋼、地方自治体など様々な事業主体がメガソーラー(1000kw以上)発電に乗り出している。太陽光発電を集積させ合計出力が2万~4万kwクラスのメガソーラーが各地で設立、計画されている。

 風力発電も90年代初め頃は1基当たりの出力がほとんど500kw以下だった。最近では5000kwを超える大型が続々と登場している。遠浅の好適地が多い欧州には世界の洋上風力の9割以上が集積している。ここを舞台に活躍している独シーメンス、米GE、欧州の電力大手など11社は、2025年までに欧州の洋上風力発電の発電コストを従来型の火力発電並みに引き下げると発表した。これが実現すれば、現在の価格よりも4割程度下がる見通しで、石炭や天然ガスを燃料とする火力発電と互角になると言う。

 狭義の再エネは90年頃から今日まで約20年が助走期間だった。技術や価格面などで大きな制約がありそれなりの時間がかかった。この間に蓄積された技術革新が支えになってこれからは飛躍の時代を迎える。これまで何年にも渡って集積してきた累積発電出力を数年で上回るような技術革新、大型投資が日々繰り返される時代に入った。

 各国政府にはこうした再エネ飛躍の時代を支える優遇的な税制、融資面の大胆な制度改革が求められる。こうして民間、政府のタッグマッチが効率よく作動するようになれば、今世紀末までに再エネが既存の火力発電や原発に置き換わる可能性はきわめて大きいと言えるだろう。

■三橋規宏(経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授)
1940年生まれ。64年慶応義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学政策情報学部教授、中央環境審議会委員、環境を考える経済人の会21(B-LIFE21)事務局長等を歴任。現在千葉商大学名誉教授、環境・経済ジャーナリスト。主著は「新・日本経済入門」(日本経済新聞出版社)、「ゼミナール日本経済入門」(同)、「環境経済入門4版」(日経文庫)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「日本経済復活、最後のチャンス」(朝日新書)、「サステナビリティ経営」(講談社)など多数。

最終更新:7/26(火) 16:20

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