ここから本文です

開発進む健康増進保険-ITで個人データ収集・分析、健康な人ほど保険料安く

日刊工業新聞電子版 7月26日(火)15時0分配信

画一的な保険料に変化もたらす

 健康状態を保険料に反映させる保険の開発が進んでいる。住友生命保険は健康であれば保険料を約3割割り引く商品を2018年にも投入し、第一生命保険は子会社を通じ、「健康年齢」をベースに保険料を算出する保険を開発する。背景にはITの進歩で個人データの収集・分析のハードルが低くなってきたことがある。年齢や性別などで画一的に価格が決められてきた保険のあり方が変わろうとしている。(杉浦武士)

【健康なら安く】
 住生は南アフリカの保険会社ディスカバリー、ソフトバンクと提携。運動や食生活の改善で健康になれば保険料を3割ほど安くする保険を開発する。個人の健康データはソフトバンクが提供するウエアラブル機器などを通じて収集。年間を通して蓄積したデータをディスカバリーが提供するモデルを活用し、数値化する。結果を5段階に区分けし、各区分ごとに保険料が増減するという。

 第一生命傘下のネオファースト生命保険も日本医療データセンターと提携し、健康診断の結果から算定した「健康年齢」を反映した医療保険などの開発を始める。同じ年齢でも健康であれば、保険料が安くなる仕組みが有力だ。

【ウエアラブル端末でデータ取得】
 ここ1―2年で健康状況を保険に活用する動きが相次ぐのはITの進展が大きい。スマートフォンやウエアラブル端末の普及で個人の健康データ取得が容易になっており、収集したデータと疾病率などとの因果関係の分析が進めば、保険サービスに活用する動きがさらに進みそうだ。現状の生命保険料が年齢などで決められているだけに、個人ごとの健康状況を把握できるようになれば、保険料の設計も個人のリスクに応じて変化することが期待される。

 もっとも、世界を見ればITで取得した個人の健康データを保険に活用する動きは真新しいわけではない。仏アクサは仏国内でランナー向けに、特定のデバイスを配布し、毎日7000歩または1万歩以上を1カ月続けると保険料を実質的に割り引く保険を発売ずみ。さらに米シリコンバレーと上海に研究ラボを、パリとシンガポールにはビッグデータを解析するデータサイエンティストの養成拠点を設けるなど、世界レベルでビッグデータの利活用に向けた投資を活発化している。日本勢は海外勢に比べて出遅れているといえる。

【保険業界を変革】
 ただ、日本市場でみれば住生などの大手生保が本格的に踏み込む意義はある。保険業界は横並び意識が強く「商品も数カ月で模倣される」(業界関係者)。これを逆手にとれば大手生保が動けば競争上、他社も追随せざるをえなくなる。保険料割引でインセンティブを与える”健康増進保険”は、業界に対しても変革を迫るインセンティブになる可能性がある。

最終更新:7月26日(火)15時0分

日刊工業新聞電子版