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箱根山・大涌谷ルポ 「ステンレスがさびたのを初めて見た」

カナロコ by 神奈川新聞 7月26日(火)8時3分配信

 26日に一部を除き、立ち入り規制が解除される箱根山・大涌谷。25日に園地内で行われた避難誘導訓練を取材するため、入園した。約1年3カ月ぶりに観光客を受け入れる箱根観光の拠点には、火山活動活発化の爪痕がまざまざと残っていた。

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 駐車場で車を降りると、卵が腐ったような臭いが鼻をついた。向かい風になれば、その強さは増す。園地内に歩を進めると、昨年6月29日以降にできたと考えられる新たな火口や、建て替え工事を終えた蒸気井がある山の斜面からは白い噴煙が依然として、もうもうと上がっていた。

 その噴煙の上る先、園地を見下ろすようにそびえる山々を、避難誘導訓練に参加した男性(73)がじっと見つめていた。「木が枯れちゃっているね…」。山肌を覆う木々に目を凝らすと、葉が落ちて枝だけの姿に。火山ガスの影響で枯れ始めている。

 「この時期は、緑が濃くて一番きれいな時期だったのに…」とこの男性。別の訓練参加者の男性(74)も「秋には紅葉がきれいなのにね。もう元には戻らないのかなぁ…」と残念がった。

 園地内を見渡す限り、店舗や施設に大きな損傷はないように見える。だがそれは外観の話だ。園地開放に向けて準備する従業員らは、火山ガスの影響を痛感していた。

 食堂兼土産店は火山ガスで食堂のガス管が腐食し、すべて交換を余儀なくされた。社長(75)と妻(69)は「ステンレスがさびたのを人生で初めて見た。開店準備は、さびとの戦いだね」と苦笑する。箱根ロープウェイの大涌谷駅舎は、エアコンの室外機と室内機をつなぐ配管などが腐食し、交換。箱根ジオミュージアムは電気系統のほか、幅約9メートルの大型ビジョンなどがシステム障害で映らなくなった。部品などを取り寄せ、26日のオープンに何とか間に合わせた。

 園地の一角で、自動販売機を交換していた。業者に声を掛けると、青くさびた10円玉や100円玉を見せてくれた。「大涌谷でこうなったと言ったら、銀行とか交換してくれますかね?」

 現在はその場にいても、臭いのほかには特に異常は感じられない。ただ、火山ガスはいつ濃度を増すか分からない。再び観光客を迎え入れる大涌谷は、美しくも厳しい自然の一面を感じさせてくれる。それを楽しむわれわれも、危険に備える心構えが必要だ。

最終更新:7月26日(火)8時3分

カナロコ by 神奈川新聞