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IFA先進国 アメリカの事情とは ―吉永高士(NRIアメリカ)―

ZUU online 7/27(水) 6:10配信

20年以上、米国で投資、金融の事情を見てきた吉永 高士氏(NRIアメリカ金融研究室長)。アメリカのIFA(インディペンデント ファイナンシャル アドバイザー)制度についても詳しい吉永氏が、仕組みと状況を解説します。

■IFA一人が抱える預かり資産規模は平均24億円ほど

アメリカの証券マンは60万人くらいいて、そのうち31万人くらいがリテールです。これは、外務員資格の免許を持っているだけでなく、実際にお客さまを持って営業している人の数です。

アメリカではアドバイザーの雇用形態はもともと従業員であるケースが過半を占めており、例えば、メリルリンチのような日本では大手証券会社に相当するところはみんな従業員です。31万人のうち、約7万5000人がIBD(インディペンデント・ブローカー・ディーラー)という証券会社に属するアドバイザーで、日本でいうIFAに相当するIC(インディペンデント・コントラクター)と呼ばれる人です。ICは、販売する金融商品の取引を契約している証券会社とは雇用関係を持たない第三者のアドバイザーです。

預かり資産はIC全体でおよそ230兆円です。一人当たりの営業員が抱えている資産規模は、大手証券では150億円程ですが、これに対してIFAは平均で30億円程のイメージです。

大きな証券会社の正社員はIFAと比べると5倍くらいの預かりを持っているわけです。つまり手数料収入も5倍くらい異なるので、ICが投資商品販売チャネルを席巻しているというワケではありません。

ICがいかに良いものかという点については後ほど触れますが、私の理解ではいろんなタイプの営業マンがいて、お客さまもいろいろなタイプがいます。対面チャネルがそれぞれあることによって、投資家のすそ野も広がるのです。

■一人当たり10万ドルが最低ライン

IFAはどこからくるのかというと、通常の対面証券会社出身者が多いです。たとえば、アメリカの大手証券会社はつい5年ほど前までは年間2,000人の未経験者を雇い、3年後に数値基準をクリアできて生き残る人は1割というような採用を続けていました。辞めた9割の人はというと、業界から完全に去る人もいますが、預かり資産や手数料収入基準の低いところに行く人もおり、後者の場合はIBDを通じて外務員登録するICとなる人が圧倒的に多いのです。

ICを使っている証券会社をアメリカではIBD(インディペンデントブローカー/ディーラー)といいます。ICはIBDを通じて外務員登録を行い、コンプライアンスも含め当該IBDの管理下に置かれます。多くのIBDではICと契約する際の預かり資産最低限ラインは10万ドルくらいです。メリルリンチのような通常の対面大手証券会社では預かり資産を一定期間のうちに50億、100億円と積み上げ続けることが期待されるのに対し、IBDのICは預かり10万ドルのままずっと10年、20年やっていても構わないのです。ICの中には最初からもっと多くの預かりを抱えて通常の対面証券会社から移籍する人もいますし、ICとして成功して預かり資産を300億円、500億円と増やす人もいますが、大部分の人で均してみると、預かりの規模も手数料収入規模も大手証券会社の数分の1という規模になっています。

アメリカ全体では名義登録されているだけのものも含めて証券会社は約4,000社あります。そのなかで、IBDタイプの証券会社はおよそ1,050社あり、そこに7万5,000人くらいの営業員がいます。1社あたり70人ですね。一番大きいIFA事業者が日本にも進出しているLPL(PWM日本証券)で、営業員は約1万2,000人います。営業員10人以下の証券会社もたくさんあるのです。

LPLのケースだと預かり資産や手数料収入の多い人もいます。10万ドル以上の売上があればLPLに登録できるので、いろんなタイプの営業員がくるわけです。小口の資産家を400世帯抱えている人から、富裕層に絞って特定の30世帯だけのために営業しているという人も。IFA事業者は多様な人材を抱えているのです。

■日本でも資産管理が「ゴールベース」になる

アメリカでファイナンシャルプランナーを業としてやろうと思うと、CFPまたはそれに順ずる資格を個人として取得するだけではなくて、投資顧問業者登録が必要です。アメリカの証券会社は、投資顧問業者登録を会社としてやっているケースが圧倒的に多いです。CFPを持っているだけでなく、所属している組織がIBDであれ、通常の対面証券会社であれ、あるいはCFP自身が経営する会社であれ、みな投資顧問業者登録しています。自分はIFAや対面証券の営業員でもあり、かつFPとしてファイナンシャルプランを提供している人も普通にたくさんいます。

アメリカでは証券マンが最初にとる資格が、シリーズ7という外務員資格と、シリーズ65または66というインベストメントアドバイザー資格です。このうち、CFP資格がなくてもシリーズ65か66があればファイナンシャルプランを提供できます。ファイナンシャルプランはあくまでも投資顧問サービスという位置づけであり、一種の士(さむらい)ビジネスです。

ファイナンシャルプランは1回提供したらそれで以降は終わりではなく、1年に1~2回といった頻度で実施するレビューでプランをアップデートしながら、お客様のゴールに向かって近づいているかを確認するわけです。また、レビュー時に追加のゴールを聞き出しながら、そのゴールに紐付くポートフォリオを提案して、預かり資産を増やしていく。

投資の実行手段はラップがほとんどです。個々の銘柄や商品自体の魅力や必要を語って売買を起こしコミッションをいただくトランザクション型ビジネスと違って、毎年一定以上の頻度で一定以上の時間をかけてお客様にゴールの切り出しやその後の進捗管理などを行いつつ必要に応じて投資の調整や実行を行うという営業スタイルで、かつ顧客の資産が増えてゴールに近付くときに報酬が増えるという仕組みにより「顧客と同じ側に立つ」という点で、残高の一定率の手数料を毎年いただくようにしているわけです。

日本のIFAといわれている人の活動と、アメリカのICといわれている人の活動の違うところは、IFAに関わらず日本の投資は一部の証券会社を除き「ゴールベース」にまだなっていない点です。

最終的に何を持って投資がうまくいっているのかどうかを判断するかというと、ベンチマークに勝つとか、いくら貯めるかではなく、お客様が自分や他の人のために何をしたいかというゴールが実現するか否か、また途中経過としてはそのゴールに一定の予見性とともに近づいているかどうかです。ゴールを特定した上で逆算して、しかるべき運用によりそれに近づいているか。そこで投資の成否を判断するのです。ゴールベース資産管理は、アメリカ発ではありますが、日本でもいずれ世の中全般的に浸透すると確信しています。(提供:IFAオンライン)

最終更新:7/27(水) 6:10

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