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中国経済:2016年上期を総括した上で今後の注目ポイントを探る

ZUU online 7月27日(水)10時40分配信

■要旨

2016年上期(1-6月期)の中国経済を振り返ると、1-3月期には景気が下振れしたものの、4-6月期にはやや持ち直すこととなった。4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比6.7%増と市場の事前予想(同6.6%増)を上回る結果となり、前期比では1.8%増(年率換算すれば7.4%前後)と2016年の成長率目標(6.5-7%)を上回る伸びを回復、工業生産者出荷価格の下落ピッチが鈍化して"名実逆転"は解消、デフレ圧力はやや緩和した。

供給面の景気指標を確認すると、工業生産は4-6月期に前年同期比6.2%増と1-3月期の同5.8%増を0.4ポイント上回った。製造業PMIは2月には49.0%まで低下して景気下振れ懸念が高まったものの、3月には50.2%へと回復、その後も50%前後を維持している。また、非製造業PMIも、2月には53%を割り込んだものの、3月以降は53%台を維持している。

需要面の景気指標を確認すると、小売売上高は、4-6月期は前年同期比10.3%増と1-3月期の同10.3%増と同じ伸びだった。固定資産投資(除く農家の投資)は、4-6月期は前年同期比7.3%増と1-3月期の同10.7%増を3.4ポイント下回った。また、輸出額(ドルベース)は、4-6月期は前年同期比4.7%減と1-3月期の同11.1%減からマイナス幅が縮小した。

金融政策の動きを振り返ると、年明けに株価が急落し、人民元が売られる中で、3月1日に中国人民銀行は預金準備率を0.5%引き下げた。一方、住宅市場ではバブル懸念が高まり、消費者物価も上昇率を高めたため、中国人民銀行は貸出・預金の基準金利の引き下げを見送り、短期金利の代表指標であるSHIBOR(翌日物)は2%前後で横ばい推移となった。

2016年上期の中国経済を総括すると、景気はやや持ち直したものの、金融政策には手詰まり感があり、景気回復の持続性には疑問符が付く。今後は、(1)消費堅調の持続性、(2)二極化した投資の持続性、(3)住宅市場の販売・着工の好循環の持続性に注目したい。

■GDP統計は改善

2016年上期(1-6月期)の中国経済を振り返ると、1-3月期には景気が下振れしたものの、4-6月期にはやや持ち直すこととなった。

7月15日に中国国家統計局が公表した2016年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比6.7%増と、市場の事前予想(同6.6%増、Bloomberg)を上回る結果となった。

内訳を見ると、第1次産業は前年同期比3.1%増、第2次産業は同6.3%増、第3次産業は同7.5%増だった。第3次産業が引き続き高い伸びを示し経済を牽引するとともに、ここもと経済成長の足かせとなっていた第2次産業も、1-3月期の伸び(同5.9%増)を0.4ポイント上回り、依然低水準ながらも回復の動きを見せた。

また、同時に公表された前期比の伸びを見ると、4-6月期は前期比1.8%増と年率換算すれば7.4%前後の高い伸びを示した。1-3月期には同1.2%増(改定後、年率換算4.9%前後)まで低下して、景気がこのまま失速するのではないかとの懸念が浮上していたが、今年の成長率目標(6.5-7%)を上回る伸びを示し、景気の持ち直しを確認する結果となった。

一方、インフレ率は春節(旧正月)の時期に食品価格が急騰したことや原油価格が底打ちしたことを受けてやや上昇した。1-6月期の消費者物価は前年同期比2.1%上昇と昨年の同1.4%上昇を上回った。また、工業生産者出荷価格も同3.9%低下と昨年の同5.2%低下から下落ピッチが鈍化した。

これを受けて名目成長率が実質成長率を下回る"名実逆転"は解消、1-6月期の名目成長率は前年同期比7.2%増と、実質成長率(同6.7%増)を0.5ポイント上回った。過剰生産を背景としたデフレ圧力は依然として強いものの、価格転嫁の動きもでてきており、デフレ圧力はやや緩和したようだ。

■供給面から見ると景気は持ち直し

工業生産(実質付加価値ベース、一定規模以上)の動きを見ると、4-6月期は前年同期比6.2%増(推定(*1))と1-3月期の同5.8%増を0.4ポイント上回った。鉱業は前年同期比1.9%減(推定)とマイナスに落ち込んだが、製造業は同7.3%増(推定)と1-3月期の同6.5%増を0.8ポイント上回った。特に自動車は同11.5%増(推定)と2桁の高い伸びを示した。

また、製造業PMIの動きを見ると、2月には49.0%まで低下して景気下振れ懸念が高まったものの、3月には50.2%と拡張・収縮の境界となる50%を回復、その後も50%台を維持している。但し、同時に発表された予想指数は6月に53.4%まで低下、勢いには陰りが見られる。

一方、非製造業PMI(商務活動指数)を見ると、2月には一時53%を割り込み、製造業の不振が非製造業にも波及し始めたのではないかとの懸念が浮上したが、3月には53.8%へ回復、その後も4ヵ月連続で53%台を維持している。また、同時に発表された予想指数も6月は58.6%と高水準を維持、今後もしばらくは堅調な動きが続くと見られる。

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(*1)中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、ニッセイ基礎研究所で中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には"(推定)"と付して公表された数値と区別している。
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■需要面の景気指標は冴えない

消費の代表指標である小売売上高の動きを見ると、4-6月期は前年同期比10.3%増(推定)と1-3月期の同10.3%増と同じ伸びだった。価格要因を除いた実質でも同9.7%増(推定)と1-3月期の同9.7%増と同じ伸びだった。

内訳を見ると、化粧品や衣類の伸びが落ちたものの、日用品類や家電類が伸びを高めた。住宅販売の回復で好調だった家具類はやや伸び悩んだが、前年同期比15.0%増(推定)と高水準を維持している。また、自動車の伸びは同7.7%増(推定)と横ばいに留まった。

投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)の動きを見ると、4-6月期は前年同期比7.3%増(推定)と1-3月期の同10.7%増を3.4ポイント下回った。

業種別に見ると、全体の3分の1を占める製造業が前年同期比0.2%増(推定)と6.2ポイント低下したのに加え、卸小売業が5.6ポイント低下、不動産関連でも不動産業が2.0ポイント低下、建築業も1-3月期の同6.0%増からマイナスに転じた。一方、電力・エネルギー・水供給業と鉄道運輸業が伸びを高め、水利・環境・公共施設管理業が2割超の高い伸びを維持するなどインフラ関連は概ね好調だった。

海外需要の代表指標である輸出額(ドルベース)の動きを見ると、4-6月期は前年同期比4.7%減と1-3月期の同11.1%減からマイナス幅が縮小した。

米国向けや日本向けはややマイナス幅が拡大したものの、欧州EU向けがマイナス幅を縮めたほか、ASEAN向けがプラスに転じたことなどで、輸出額全体ではマイナス幅が縮小する結果となった。但し、先行指標となる新規輸出受注(製造業PMI)が6月には4ヵ月ぶりに50%を割り込むなど、輸出の先行きには陰りが見え始めている。

■金融政策には手詰まり感

金融政策の動きを振り返ると、年明けに株価が急落し、人民元が資金流出懸念から売られる中で、中国人民銀行は3月1日に市中銀行から強制的に預かる資金の比率である預金準備率を0.5%引き下げた。過剰設備・過剰債務の調整を進める上で、その痛みを和らげるための措置とされた。また、ドル売り元買い介入が増える中で、金融市場に元建て資金を供給する必要があったことも背景と見られる。

一方、中国人民銀行は貸出・預金の基準金利の引き下げを見送り、短期金利の代表指標であるSHIBOR(翌日物)は2%前後で横ばい推移となった。

年明けの中国では景気が大きく下振れしたため、市場には利下げ期待があった。しかし、原油価格が底打ちしたことや春節に食品価格が急騰したことで、消費者物価は上昇率を高めていた。また、住宅価格が上昇したことも利下げを見送った背景と思われる。

住宅価格は昨年4月を直近底値に上昇傾向を続けており、2014年4月の直近高値に迫るところまで上昇してきた。特に深セン市では直近高値の1.7倍まで上昇するなどバブル懸念が高まり、景気テコ入れのために利下げに踏み切れば、バブル膨張を助長しかねなかった。

また、通貨供給量(M2)の動きを見ると、6月は前年同月比11.8%増と「13%前後」とされた今年の政府見通しを下回っており、経済への影響が懸念されている。

内訳を見ると準通貨「その他預金」の伸び鈍化が目立つ。昨年夏には、株価安定策の影響で「その他預金」が急増した経緯があることから、その反動減の面が大きいと考えられる。但し、M1が前年同月比24.6%増と高い伸びを示しているにも拘らず、融資残高は同14.3%増と昨年9月の同15.8%増をピークにじりじりと伸びが鈍化している。この点に関して、中国人民銀行の盛調査統計局長は「流動性の罠」の可能性を指摘しており、民間企業の投資意欲に対する懸念は払拭しきれない。

■2016年下期の注目点

2016年上期の中国経済を総括すると、景気はやや持ち直したものの、金融政策には手詰まり感があり、景気回復の持続性には疑問符が付く。今後は下記3点に注目したい。

第一に消費堅調の持続性である。2016年上期の消費は、小売売上高が実質で10%近い伸びを示し、経済成長率への寄与率は73.4%に達した。昨年までの3年間は、所得が成長率を上回る勢いで伸びたため、消費が中国経済を牽引することとなった。しかし、2016年上期の全国住民一人あたり可処分所得(実質)は、統計が公表され始めた2013年以降では初めて実質成長率を下回り、その追い風は弱まっている。消費関連の景気指標の動きに注目したい。

第二に国有・持ち株企業と民間企業で二極化した投資の持続性である。2016年上期の投資は、民間企業の投資が前年同期比2.8%増と落ち込む一方、国有・持ち株企業の投資が同23.5%増と高い伸びを示し、全体では緩やかな減速に留まった。

中国政府は、行政手続きの簡素化、公共事業や民生分野での参入障壁の解消、資金調達面での支援などを推進、民間企業の投資を促進し始めた。しかし、国有企業改革が進まない中で、民間企業が新たな投資分野を開拓するのは容易ではなく、民間企業の投資は低迷する可能性が高い。その時、国有・持ち株企業は、政府の意向を受けて成長率を維持するため高水準投資を維持するのか、二極化した投資の行方にも注目したい。

第三に住宅市場の販売・着工の好循環の持続性である。2016年上期には、商品住宅の販売(面積)が前年同期比28.6%増と急増する中で、在庫が減り始め、新規着工が同14.0%増と2年ぶりにプラスに転じた。

しかし、住宅価格の急上昇でバブル懸念が高まった一部都市では購入制限の強化に動きだしている。住宅価格や販売・着工など関連指標の動きからも目が離せない。

三尾幸吉郎(みお こうきちろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 上席研究員

最終更新:7月27日(水)10時40分

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