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「クーデター未遂事件」「テロ事件」辻仁成氏が見た“欧州の現実”

東スポWeb 7月27日(水)10時0分配信

 7月に入って、南フランスでトラック暴走テロが起きれば、翌日にはトルコでクーデター未遂が発生。またドイツ・ミュンヘンで銃乱射事件が発生するなど、欧州全体が恐怖と隣り合わせになっている。フランス在住の作家・辻仁成氏(56)が「トルコのクーデター未遂事件」「パリのテロ事件」など現地に住む人間だからこそ肌で感じる“欧州の現実”を本紙に明かした。トルコのクーデター未遂事件では、エルドアン大統領(62)の“自作自演説”など独自の分析を示した。

 トルコのクーデター未遂について辻氏は怪しんでみている。

「おかしいと思いませんか? 普通、クーデターというのは首謀者がはっきりしているもの。確かに軍部の人間は捕まり、粛清されましたが、トップではない下っ端ばかり。首謀者がはっきりしないまま、エルドアン大統領はナポレオンのように振る舞い、大がかりな粛清を始めています」

 エルドアン大統領はクーデター首謀者として、米国に亡命中のイスラム教指導者・ギュレン師(75)を名指しした。辻氏は「ギュレン師は心臓が悪いという話」とし、同大統領の手法をこう分析する。

「エルドアン大統領はSNSで国民に対して抵抗を呼びかけた。ただ、大統領は『SNSは国民を愚かにする』ということで使用を制限してきた。それを今回、うまく利用したのも計算のうち。占拠されたはずの空港に堂々と入るあたりも不思議ですよね。普通なら命の危険を恐れて、避けるはず。すべて分かっていたかのよう」

 同大統領は「伝統的に強かった軍部を政権の下に組み込んだ」(辻氏)だけではない。その狙いは「ギュレン運動を支持する人間を粛清し、権力を強化することにある。現在、粛清の対象は、教師や大学教授にまで及んでいる。何万人という人間が粛清されている。このタイミングで一気にやってしまおうということ」(同)にも及ぶとみる。

 ここまでは“クーデターに屈しない強い指導者”というイメージ作りに成功し、トルコ国民の支持も得ているように見える。

 さらなる狙いとして「米国、ロシアに対しての発言力強化」(辻氏)と、15世紀から16世紀にかけて隆盛を極めた「オスマン帝国」のような“強いトルコ”の復活があるのではないか、とも。

「トルコ人はとにかく勇猛ですからね。戦いに負けるのは恥という感覚がある。かつての侍みたいな感じです。そういう部分で共感できるところがあるから、トルコは親日国なんですよ。ただ、今の日本人は侍のように強くはないけどね(笑い)。この権力強化によって、シリア問題など米国、ロシアに対する発言力は高まった。キャスティングボートを握ることになるでしょう」(辻氏)

 作家活動の中心をパリに置く辻氏は、テロも現地で間近に目撃した。

「フランスは地続きで狙われやすい。今は24時間態勢で軍隊が目を光らせている。予備役の人間も1万2000人徴集したほど。もう兵隊が疲弊しきってますよ。IS(イスラム国)のテロにより、イスラム教徒への露骨な差別も目にするようになった。これが新たな火種になる。ISとの戦いが終わったとしても、しこりは残る」

 英国のEU離脱、米国では強硬派であるドナルド・トランプ氏(70)が共和党の大統領候補として指名された。

「世界が好ましくない状況になってきているのは間違いない。英国のEU離脱、フランスのテロ事件、トルコのクーデターと、この何週間は特に印象的な出来事が続いた。トランプは『メキシコとの国境に壁を造る』と言っている。いつ何が起きてもおかしくない“分断”の時代に入っている」と辻氏は危機感を抱いている。

最終更新:7月27日(水)10時22分

東スポWeb