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【インタビュー】『めぐりあう日』実母を求める心の旅…主演セリーヌ・サレットが語る

cinemacafe.net 7月27日(水)17時30分配信

孤児となった9歳の少女が、養子として韓国からフランスへと旅立つまでを、自身の実体験を基に描いた『冬の小鳥』(’09)のウニー・ルコント監督。その鮮烈なデビューから6年の歳月をかけて完成させたのが、長編第2作『めぐりあう日』だ。いま日本でも、尾野真千子&江口洋介出演のドラマなどで改めて注目されている養子縁組を軸に、ルコント監督は養子に出された娘と実母の運命的な再会を、再び自身の人生を重ねながら、しなやかに描き出した。本作で監督の“分身”ともいえる、実母を探し求める主人公を演じたフランスの実力派女優セリーヌ・サレットに話を聞いた。

【画像】主演のセリーヌ・サレット

本作の舞台は、フランス北部の港町ダンケルク。生みの親を知らずに育った理学療法士のエリザは、自らの出生を知るため、息子のノエを連れてパリから引っ越してきた。ある日、ノエが通う学校で働く中年女性アネットが、患者としてエリザの療法室にやってくる。2人は治療を繰り返すうちに、不思議な親密感を覚えるようになるが…。

フランス語原題の「あなたが狂おしいほどに愛されることを、私は願っている」という言葉は、監督の愛読書である作家アンドレ・ブルトンの詩集「狂気の愛」から引用されている。この1節が読み上げられるラストシーンは、親子や家族の普遍の愛と命の誕生の賛歌を謳い上げ、いつまでも心に深い余韻を残す。「力強い物語に思わず涙がこぼれました。どうしてこんなふうに感情を揺り動かされてしまうのか、意外にも思えることでしたが、とにかくそんなふうでした」と、セリーヌは最初にこのシナリオにふれたときのことを、そうふり返る。

「物語そのものがもつ強さと言っていいのでしょうか。それが、映画の力強さにもなっているのです。あの瞬間に感動したと誰かが言ったとき、それは映画のどの瞬間でもあり得る。観客ひとりひとりが、それぞれ違ったシーンで感動したとしてもおかしくない、そんな力強い瞬間にあふれています。しかも、それらのシーンはけっして感傷に流されるままに演出されたものではないのです。その意味で、彼女の処女作『冬の小鳥』にきわめて近い映画だと思います」と、セリーヌは自身の感触を明かす。

確かに、ルコント監督が自らの思いを切り離すかのような緻密さで描く1つ1つのシーンは、観る者を常に刺激し、あらゆる感情を誘発させる。「たぶん、背景となっている現実や状況がみごとに構成されているからではないでしょうか」とセリーヌ。「実際、それぞれのシーンの光の具合と背景にある思いや気持ちが、みごとに演出されています。もちろん、人物像や俳優の身体、演技も重要なのは言うまでもないのですが」。

身体といえば、セリーヌが演じるエリザは理学療法士。“実母”とは知らずに、アネットの身体に幾度となく触れていくが、とりわけ、エリザの腕の中で母のほうが胎児のようなポーズをとるシーンは印象的だ。「偶然そうだというのではなく、彼女のキャラクターを描くにあたって、これ以上ない職業だと思います。誰かを癒してあげる、誰かを治療してあげることによって、彼女は自分のなかにある欠落を埋めることができ、母親から見捨てられたという事実を乗り越えて生きてゆくことを可能にしているのです」とセリーヌは語る。

「そのため、エリザは最初、他人の世話をすることで目いっぱいなのですが、次第に自分自身を救うことの重要性に気づきます。つまり、それまで自分の意志とは違った人生を歩んできた彼女が、どうやってそうした状態から抜け出し、自らの人生をきちんと中心に置き直して、正面から向き合うことことができるのか、その答えを知ろうとするようになるのです。そのためには、まず自身の出生の秘密を知る必要があり、まさにその答えを探そうとし始めたばかりなのです」と、キャラクターの背景にも言及した。

エリザ役を演じるにあたっては、「とにかくまず、理学療法士の仕事について綿密に学びました。監督のウニーは、よい意味で高い要求を課す人であり、それに応える必要があったのです。同時に彼女は、美学的にもより高い目標を設定していて、特殊効果を使ってごまかすようなことはしたくなかった。その結果、しかるべき準備が求められたわけです。こうして周到に準備し、きちんと理学療法士の仕草や仕事について学んだおかげで、映画にもよい結果がもたらされたのではないかと思います」と、手応えを覗かせるセリーヌ。

「いま、私には5歳半になる娘がいるのですが、より切実感をもって“継承”という問題を感じるようになっています」と彼女は言う。「なにを、どのようにしてなすべきか、また継承してゆくことができるのか、こうしたことを知るのは人生の根本でもあるでしょう」と語るように、本作での経験は、彼女自身の人生観にも大きな影響を与えたようだ。

一方、そんな彼女を主演に迎えることを、ルコント監督は「最初から考えていた」という。「複数の役者と会うことはぜず、彼女1本釣りでシナリオを送って読んでいただいて、彼女もプロジェクトを気に入ってくれたので、お会いすることになりました。ですので、カメラテストなども一切なしに、私が彼女に決めてオファーをしたという経緯です」と当初から“ベタ惚れ”だったことをコメント。みごと期待に答えた彼女の熱演を、「抑えた演技で、控えめだけれども存在感が光り、ある意味、アジア的な演技」と絶賛を贈っている。

『めぐりあう日』は7月30日(土)より岩波ホールほか全国にて順次公開。

最終更新:7月27日(水)17時30分

cinemacafe.net

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。