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スバルの10年後を見据える、新型「インプレッサ」のプラットフォーム

MONOist 7月27日(水)6時25分配信

 富士重工業は2016年7月26日、東京都内で会見を開き、同年10月以降に発売予定の新型「インプレッサ」の国内仕様車を公開した。新プラットフォーム「スバル グローバル プラットフォーム」を採用して“動的質感”を向上するとともに、同社初となる歩行者保護エアバッグを標準搭載として安全性能を高めた。インプレッサとしては初めて、運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」が標準装備となる。2016年9月から先行予約を受け付ける。

【「スバル グローバル プラットフォーム」のカットモデルなどその他の画像】

●インプレッサを120点の完成度にするために

 スバル グローバル プラットフォームは、2020年を最終年度とする中期経営ビジョン「際立とう2020」で掲げたブランド力向上の一環となる取り組み。インプレッサは同プラットフォームを採用する最初のモデルとなる。2025年までに軽自動車と小型スポーツカー「BRZ」を除く全てのモデルに採用する計画で、同社の開発者たちは「10年後も通用するプラットフォームとして作り込んだ」と口をそろえる。

 新プラットフォームは、衝突安全性能と運動性能の両方を向上させている。より効率的な衝突エネルギーの吸収を可能にするフレーム構造とし高張力鋼板の採用拡大を進めることで、衝突エネルギー吸収率を現行モデル比で1.4倍に向上。

 また、新プラットフォームでは低重心化も図った。車体の剛性向上や足回りの進化との相乗効果で、旋回して危険を回避する場合にも安定して走行でき、高性能なスポーツモデルと同等の危険回避性能を実現するという。これにより“動的質感”(運動性能のよさ)も高めた。

 新型インプレッサで新プラットフォームを採用するのは、歴代インプレッサで最も販売台数が多い現行モデルを超える性能を実現するためだ。4代目である現行インプレッサは、モデル末期にも関わらず2016年4~6月の売れ行きも対前年比134%だったという。

 「その4代目よりもさらに喜んでもらうにはどうしたらよいかが開発のスタート。しかし4代目が100点満点というわけでもない。どうすればインプレッサは120点になるか。地道な改善の積み重ねではなく改革的な進化が必要で、クルマを根本から見直し、骨格を刷新しなければならないと考えた」(富士重工業 スバル商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャーの阿部一博氏)。

●1000分の1秒でクルマに起きる変化を定量化

 動的質感を追求するにあたって、運動性能の定量化に取り組んだ。「走らせた時の車両の状態は感覚的にしか分からない部分が多かった。例えば、安心感の高い乗り心地は具体的にどういう状態なのか、どうすれば安心感が高まるか、ということ」(同社スバル第一技術本部 シャシー設計部 主査の井本昌志氏)。そのため、「一瞬だがヒトが必ず気付く」(井本氏)という1000分の1秒単位の時間で起きる変化に着目して車体骨格や足回りを見直した。

 車体骨格の見直しでは、車体に200個のひずみセンサーを取り付けて、実走行中のひずみ方を検証した。これまでは「10個単位のセンサーでひずみを計測したことはあったが、200個は例がなかった。内装の内張りを取り外すとひずみは目視でも分かるが、フロアは見ることはできない」(同社スバル第一技術本部 車体設計部 主査の中島篤氏)。

●200個のセンサーを使って分かること

 200個のセンサーを使うことで「例えばステアリングを切った時に、どの部位がどんな順番でひずんでいくかを見ることができた。下回りにどのように骨格を追加するとよいかも検討できた」(中島氏)。ひずみが起きる場所にはスポット溶接を施す箇所の間に接着剤を追加することでひずみを抑制した。「一部に接着剤を使用するのではなく、フロアを横断するような形で広く使った。乗った時にがっちりした感じに気付いてもらえるだろう」(同氏)。

 サスペンションの評価は、タイヤが転動した状態で実路での動きを再現できる台上試験機を新たに開発して行った。「カーブでロールし始めてからロールが止まるまで、といった過渡領域の状態を定量化できた。この恩恵の1つがリンクの配置見直しだ。タイヤが動くとリンクが移動してトー変化が起きる。このトー変化をどう抑えるか検討した。これまでは複数の条件を加味して検討できる試験機がなかったので、試験機メーカーにもかなり無理をいった」(井本氏)。

 足回りの進化はクリープでも分かるという。「これまで、足回りの良しあしは限界性能を試さなければ分からないので、一部の人にしか理解してもらえなかった。新プラットフォームは全ての人に分かる良さを追求した」(同氏)。

●インプレッサにこそ必要な歩行者保護エアバッグ

 新プラットフォームに合わせて、歩行者保護エアバッグも開発した。海外向けでの採用は未定だが、国内向けのインプレッサには標準搭載となる。対歩行者の事故が多い日本で優先して採用すべきだと判断した。

 歩行者保護エアバッグを新たに開発したのは、「乗員だけでなく周囲の人々にとっても安全なクルマにしたいという思いがあるからだ。ボンネットが短いクルマは歩行者と衝突した時に頭部がAピラーにぶつかる可能性が高い。バンパーやボンネットは樹脂化で柔らかくできるが、ピラーは樹脂化できないので歩行者保護エアバッグが必要だった」(富士重工業の説明員)。

 歩行者保護エアバッグは、バンパーの内側にある圧力センサーで一定の範囲の衝撃を検知すると展開する。小動物などとの衝突や、車両同士の正面衝突ではエアバッグは作動しない。

 バンパーの内側にはチューブが這わせてあり、チューブ内の圧力の変化をチューブ両端の圧力センサーが検出する。この形式の圧力センサーは高温下で反応しやすくなるという欠点があったが、温度センサーと組み合わせて検知精度を高めた。「圧力センサー単体ではエンジンの熱や夏場の暑さで誤作動しかねない。しかし、温度も考慮することで検知精度を確保している」(同社説明員)。

 歩行者保護エアバッグは、新プラットフォームでのみ搭載できる。圧力センサーはボッシュが、インフレーターはオートリブが、エアバッグ本体はタカタが供給している。

●ボルボの歩行者保護エアバッグとの違い

 歩行者保護エアバッグは、Volvo Cars(ボルボ)が2013年に発売したコンパクトカー「V40」に世界で初めて採用された。ボルボと富士重工業の歩行者保護エアバッグの違いは、エアバッグ展開時にエンジンフードが上がるかどうかだ。

 「ボルボはエンジンフードをポップアップさせるが、そのためにはエアバッグ用以外にもエンジンフード用のインフレーターが追加で必要になり高コストになる。われわれは標準搭載できるようコストを抑える目的で、エンジンフードは動かさない。コストはボルボと比較して3分の2~2分の1に削減できたと見ている」(富士重工業の説明員)。

 スバル グローバル プラットフォームは、富士重工業が考える“総合安全性能”のうち、衝突安全性能を特に大きく進化させたといえる。10年後を見据えたという成果は、新型インプレッサから順次展開していく。から順次展開していく。

最終更新:7月27日(水)6時25分

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