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4K大画面で味わう「火花」の臨場感と面白さ

ITmedia LifeStyle 7月27日(水)12時28分配信

 「NETFLIX」で配信されている話題のオリジナルドラマ「火花」を観た。ご存じ第153回芥川賞を受賞した又吉直樹(お笑いコンビ「ピース」)の原作を元にした、全10話 530分の超長尺ドラマだ。本欄をお読みいただいている方に説明は不要かもしれないが、NETFLIXは、1450円の月額料金(プレミアムプラン)を払えば4Kプログラムが好きなだけ楽しめる、米国生れの定額制ストリーミング動画配信サービスである。

撮影時のワンカット

 本作の配信は6月3日から世界190カ国でスタートしており、原作に強い感銘を受けたぼくは、観よう観ようと思いながら時間が取れず実現できなかったのだが、原稿仕事が一段落した先週、3日間かけて観てその面白さを堪能した。

 「笑いとは何か」をストイックに考え続けて生活を破綻させていく神谷と、その彼を師匠と慕う徳永。2人の漫才師を軸にした又吉の実体験を元にしたと思しき原作を、廣木隆一監督(『ヴァイブレータ』『オオカミ少女と黒王子』)をはじめとする若手俊英たちが、日本映画の伝統を感じさせる詩情あふれる演出で、とても切なく残酷な、見応えのある青春物語に仕上げているのだ。

 偏執狂的な笑いへのこだわりを捨てられない神谷を真摯(しんし)に演じた波岡一喜、気弱さの中にナイーブな感性を浮かび上がらせる徳永役の林遣都がともにすばらしく、水を得た魚のような快演を見せる。原作最後の、××をふくらませた神谷の狂気をどう映像化するのか楽しみにしていたのだが、当方の予想を上回るチャーミングな演出に触れ、心を完全につかまれてしまったのだった。

 また、随所に盛り込まれた漫才シーンが信じられないほど臨場感豊かで、ぐいぐいと引き込まれる。とくにラスト第10話の(原作にはない)徳永と山下(現役芸人『井上好井』の好井まさお。好演!)によるスパークス(コンビ名)の最後の漫才が凄い。徳永のキレまくった逆説トークに相方・山下も客席も涙でグショクショになるという場面では、筆者も客席の1人となって落涙した。

 ところで本作は、4K&HDR撮影で話題となった作品でもある。米国産オリジナルドラマ「マルコ・ポーロ」などですでにHDR配信を実現しているNETFLIXだが、現時点で「火花」はまだHDR化されていない。4Kコンテンツが観られる「プレミアムプラン」会員の筆者は、パナソニック「DMR-UBZ1」にLANケーブルにつないでネットワーク環境に置き、ソニーの4Kプロジェクター「VPL-VW500ES」とHDMI接続し、その映像を110インチスクリーンに映し出して楽しんだが、4K高解像度で観る喜びを随所で実感させてくれる作品でもあった。

 NETFLIXの4K映像配信の転送レートは、フルHDの現行Blu-ray Discの半分ほどだが、S/N面で破綻する場面もなく、じつにキレのよい高精細映像を楽しませてくれる。とくに吉祥寺や高円寺など中央線沿線の飲み屋街をふらつく神谷と徳永を捉えたショットなど、色温度の高いフラットな照明で東アジア的な混沌を見事に浮き彫りにするのである。また、2人の芸人の表情や夜から早朝に移り変わる街並みの変化の描写など、4K収録作品ならではの繊細な高精細感が味わえる。

 日本市場での飛躍を目指し、手間隙かけて丁寧に仕上げた長尺オリジナルドラマに果敢に挑戦するNETFLIXという配信メディアの志の高さに敬服するとともに、地上波の安逸なドラマ化に与せず、まだ海のものとも山のものとも知れない動画配信サービスのハイクオリティー映像に賭けた、吉本興業(製作)の英断にも拍手を送りたいと思う。

 こういう質の高い4K動画の魅力が満喫できる作品が増えれば増えるほど、4K大画面テレビの存在意義が高まっていくことは間違いないだろう。また、先述のように本作品はすでに世界190カ国で配信されているというが、日本独得のお笑い文化とその感性がどのように受け入れられるのか、それも非常に興味深い。

●Blu-ray Discの災難

 などと言いながら、つい先日、学生時代の友人と話をしていてグッタリした気分になったことがあった。ついに58V型の大画面4K液晶テレビを買ったその友人は、「地デジやBSのスポーツ番組などは画質も良くて大画面の迫力があって満足しているんだけど、映画の画質が粗くて良くない!」と言い張るのである。

 ん? と思い、「おまえ、ひょっとしてDVDを見て文句言ってるんじゃ?」と聞いてみると、「そうだよ。おれ映画好きだからすごいいっぱいDVD借りてきて観てるんだ」と胸を張るのである。どうやらWOWOWにも入っていないし、Blu-ray Discの存在もうっすらとしか知らない様子。NETFLIXの4K動画配信サービスの話などしても「なにソレ?」的反応。

 うーむ。日本列島にはこういうAV&IT リテラシー皆無の五十男がたくさんいるのだろうか。しかし、金を払ってわざわざ借りてくるDVDの画質が、無料で見られる2KのBSや地デジ(これは1.4Kか?)よりも劣るということは、はっきり分かるらしい(当たり前か)。

 しかし、Blu-ray Discが登場して10年も経つのに、今なお映画を地デジよりも低画質のDVDで借りてくるという「習慣」がすたれないのはいったいどういうわけか? アナログ停波で多くの国民がフルHDテレビに買い替えた5年前の騒乱時に、なぜビデオソフト業界はDVDからBlu-ray Discに一気にシフトアップしなかったのか……。

 そういえば、好きなミュージシャンの新作CDを買ってみたら、付録(?)としてライブ映像がDVD に収められていることがたまにある。実際にそのDVDを再生してみれば(当然ながら)、すべてアスペクト比16:9のHDカメラ収録。ここはどう考えてもBlu-ray Discでしょう。

 「いやいや普通のヒトは観られればいいんですよ、画質なんて関係ない」と講釈してくれる人もいるが、せっかく買った大画面4Kテレビで、いい画質で映画や音楽コンテンツが観たいというのも人情だろう。現に4Kテレビで観る映画の画質が悪いとワメいている五十男が、ぼくの周りに存在しているのだから。ああ、しかしなぜDVD ……。

最終更新:7月27日(水)12時28分

ITmedia LifeStyle