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『バイオハザード7 レジデント イービル』カプコン川田将央氏&神田剛氏が語るVRの可能性【インタビュー】

ファミ通.com 7月27日(水)20時1分配信

●屈指の人気シリーズさえも動かしたVRの魅力、そして可能性
 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)が開発するプレイステーション4専用VRシステム、プレイステーション VR(以下、PS VR)の発売日が2016年10月13日に決定。その予約受付には希望者が殺到し、早くも入手困難となる気配が見えている。VRがもたらす新次元のゲーム体験への、ゲームファンの期待感は高まるばかりだ。
 しかしVRは、まったく新しいものであるだけに、今後どのようなコンテンツが生まれるのか、そしてそもそもVRは一過性のブームに留まらず、継続してコンテンツが供給されていくのかなど、未知数な要素は多い。

 本稿では、VRのいまと未来をさぐるべく、『バイオハザード7 レジデント イービル』を開発しているカプコンの川田将央氏と神田剛氏にインタビューを敢行。VRコンテンツ開発の最前線を行く者ならではのお話しをたっぷり伺った。

※本記事は、週刊ファミ通2016年8月4日号(2016年7月21日発売)に掲載された記事に、加筆・再編集したものです。

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【『バイオハザード7 レジデント イービル』とは?】】
 言わずと知れた人気サバイバルホラーゲームのシリーズ最新作。主観視点“アイソレートビュー”を採用することで、かつてない没入感が味わえるとともに、VRへのフル対応も実現。PS VRのプレイ環境さえあれば、通常のゲームプレイ同等に本編すべてを楽しむことができる。
 PlayStation Storeで配信中の体験版『バイオハザード7 ティザー ~ビギニングアワー~』は配信開始から半月足らずで全世界200万ダウンロードを突破しており、世界中のゲームファンを恐怖に陥れている。

※『バイオハザード7 レジデント イービル』公式サイト
※関連記事:『バイオハザード7』のPS4体験版が早くも全世界200万ダウンロード突破!


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●ポリゴン登場に匹敵する大きな変革に期待!
――御社は早い段階からVRコンテンツの研究開発に着手されていますよね。やはり、それだけVRが魅力的だと考えたからなのでしょうか?

川田 当初はVRというものに対して、それほど興味を持っていなかったのですが、竹内(カプコン第一開発部部長の竹内潤氏)に、「VRをもっと勉強しろ」と言われて、某社のVRシステムを体験させていただきました。これが非常にすばらしく、仮想空間といったものがこんなに居心地がいいものなのかといたく感動しまして、すっかりVRに魅了されてしまいました。モニター越しに見る世界とは違う、“体感する”感覚は、ものすごく新しい体験だと感じました。

――竹内さんからご指示があったほどですし、御社はかなりVRに対して前向きなのですね。

川田 そうですね。ウチの開発部は、トップが新しいものに目がない人間ですから(笑)。PS VRの研究の一環としてSIEさんにデモを体験させてもらう機会もあったのですが、直接脳に情報をインプットされているような、なんとも言えない感覚がありまして、まるで『攻殻機動隊』の時代が来たようだな、と妙に納得したことを覚えています。これはもしかしたら、ポリゴンにゲームが切り替わったときと同じくらいの、大きな変革につながる可能性もあるのではないかとも思いましたね。

――全社的に力を入れていこうという方針も、早い段階から決まっていたのでしょうか?

川田 『KITCHEN』を初めて出展したのは2015年のE3ですが、VRタイトルの企画自体は、2014年の1月か2月ごろには立ち上がっていましたね。

――『KITCHEN』を企画した意図は、どのあたりにあったのでしょうか?

川田 もともとVRに挑むうえで、いくつか問題点があるだろうということはわかっていました。ですので、まずはいちばんリスクが少ない形で作ってみようということで開発したのが、『KITCHEN』だったんです。つまり、移動がなく、固定視点で、コントローラーを持った状態で自然にプレイできる状況を作り、その中で恐怖が襲ってくるという体験を味わえるコンテンツですね。その結果、プレイしていただいた方の反応が、われわれが思っていた以上によかったんです。そこで、これは『バイオハザード7』にも、本格的にVRを導入すべきだと考えまして、無謀にもフル対応することとなったわけです(笑)。

――フル対応というのは、思い切った試みですよね。やはりそれも、『KITCHEN』の成功が後押しした形でしょうか。

川田 「まあ、こんなもんかな」という程度の手応えだったら、我々もそこまで積極的にはなれなかったと思いますが、E3では本当にすごく高い評価をいただけましたので。それは確かに強い後押しになっていますね。

神田 E3での『KITCHEN』は、あえてモニターを隠し、宣伝用の画面写真素材なども公開せずに出展しました。それは、まず実際に体験プレイをしてもらい、リアクションの話題が広がれば、その結果としてバズが上がって、注目度も高まるのではないかと考えたからなんです。

――プロモーションの難しさは、VRコンテンツが抱える大きな課題だと思いますが、あえて画面を見せず、プレイヤーのリアクションだけですごさを伝える方法を選んだわけですね。

川田 はい。そして、『KITCHEN』を体験した多くの方々が、「カプコンはこんな作品を作れるのなら、これをぜひ『バイオハザード』でやってくれよ!」といった声を上げてくださっていて……我々はかなりニヤニヤしていました(笑)。

――じつは作っているんですよ、と(笑)。

川田 それを発表まで、1年間くらい我慢していたんです(笑)。

●VRとホラーは相性抜群。しかし『バイオ』は怖いだけのゲームではない!
――VRコンテンツ開発の難しさとは、どんなところでしょうか? 『バイオハザード7』の開発を進めている中で、現時点で課題はどの程度解消されていますか?

川田 やはり、まずフレームレートを上げて、現実で味わう感覚との齟齬をできるだけなくしていくという部分は、大きな課題になります。今回我々が開発した新エンジン“REエンジン”では、そうした部分はほぼ克服できていますね。あとは操作まわりのユーザーインターフェイスですとか、E3版のデモで達成できていなかったことも、いろいろと修正を進めています。じつは先日、SIEの方に最新版を体験していただいたのですが、かなり満足してもらえました。現時点ではまだ、すべての改良点を実装できてはいませんが、引き続き対応を行っていきます。E3での体験プレイではVR酔いを感じた方がいたかもしれませんが、つぎに体験していただくときには快適に遊んでもらえるように、ブラッシュアップを重ねています。

――“VR酔い”を軽減する方法としては、ハード面もさることながら、カメラワークなどコンテンツ側のノウハウも重要ですよね。

川田 VRでは、プレイヤーの意図する視点とカメラワークが違う動きをしたときに、酔いが生じやすいんです。ですので、演出面でも注意が必要になります。歩く速さや、視点を動かすときにカメラが回転するスピードなどを調整することも重要ですね。非常に細かい作業になりますが、問題点をできるだけ解消することで、プレイヤーに長時間快適にプレイしていただける環境を構築しようとがんばっています。

――『バイオハザード7』の場合、モニターでの通常プレイ用と、VRモード用とで異なる調整を行っている部分もあるのでしょうか?

川田 それはたくさんありますよ。フィルターのかけかたや、視野角の調整など、いろいろ細かいところを調整しています。もちろん大筋のゲームの進行や、遊ぶ内容に関しては同じですが。

――となると、VR対応ではないタイトルと比べると、相当に手間のかかる開発になるわけですね。

川田 でも、それだけの価値があるチャレンジだと思っていますし、価値がある体感につながっていると思っています。

――そのほかに、実際に開発されてみて、「VRって、こういう側面もあるんだ!」と、なにかお気づきになった部分はありますか?

神田 やはり、ホラーとの相性のよさは感じますね。今回は『バイオハザード7』で採用しているわけですが、VRで“より没入感のあるホラー体験ができる”という点に関しては、今後についても大きな可能性を非常に感じています。

――体験した方の反応も抜群ですよね。ただ一方で、VRだとあまりにも怖すぎて、限度を超えるといろいろマズイのでは、などと心配になったりしますが……。

神田 開発陣の中でも「怖すぎるシーンにウォーニング(警告)を入れるべきでは?」という意見はありましたし、事前に注意を伝えるような、プレイ上のケアは必要になるかもしれません。ただ、過度に配慮するあまりに、ホラー感やスリルが失われたりしてしまうのは、我々の意図している部分ではありませんから……難しい判断ですね。

――では、怖さは怖さでとことん追及しつつも、「怖いから気をつけてね」ということはキチンと伝える、という方向性でしょうか。

川田 ただ、ホラー作品とはいえ、エンターテインメント作品ですし、「怖い怖い怖い!」という要素ばかりではないですからね。怖さはもちろん追求しますが、最終的にはそのゲーム全体を「おもしろかった!」と言ってもらえるように作っていきたいですね。

――確かに、配信中の体験版でも、探索の要素なども強いですし、全編にわたって怖いシーンばかりが続くわけではないですしね。

川田 ずっと「怖い怖い怖い!」では、さすがに持たないと思いますから(笑)。体験版をプレイして気に入った方には、ぜひ商品のほうも購入していただきたいわけですが、「ちょっと自分には合わないな」と思ったとしても、今後お伝えする新情報で「こんな要素があるならやってみようかな?」と興味を引く内容も出てくると思いますので、ぜひ注目していただきたいですね。

――第一報がいきなり遊べる体験版なのでインパクトが大きいですが、作品の全容が見えてくるのはまだこれからですよね。

川田 全体から言えば、まだまだ、ほぼ何もお見せしていないといっていいくらいの状況ですよ(笑)。

――そのほか、『KITCHEN』や『バイオハザード7』の体験会などで、ユーザーの反応に直接触れた際に、わかったことや予想外に思えたことなどがありましたら、教えてください。

神田 『バイオハザード7』については、変更点も多く、ネガティブな反応も少なくないのでは……と考えていたため、高評価が多勢を占めたことはうれしい驚きでした。やはり『バイオハザード』シリーズでは、「今回は誰が主人公なんだろう?」といったキャラクターに注目する方も多いですし、今回のような発表のしかたですと、ある程度はネガティブな意見も出てくるだろうと思っていたんです。ところが、「やはり『バイオ』と言えばホラーだよね」とポジティブに受け取ってくれた方が多くて。そこはうれしかったですね。
川田 ユーザーの反応については、よくても賛否が五分五分くらいだろうと予想していました。今回の『バイオハザード7』は大きく変えていますので、それに対して拒絶反応を示す方も多いと思っていたんです。『バイオハザード4』のときにも、やはりガラッと変えたことによって、すごく反発された方が多かったですから。今回もそれは覚悟していたのですが、7:3か、あるいは8:2くらいの割合で、ポジティブに受け取っていただいた方のほうが多いという状況でした。

――まずは賛否両論からスタートして、じっくり作品のよさを伝えていこうという計画だったのに、いきなり出だしから「あれ? こんなに受けてるの?」という状況になったわけですね(笑)

川田 ただ、E3のSIEさんのカンファレンスで映像が流れ始めたときに、最初はあまり反応がなかったんですよ。「これはダメかな……」と思ったのですが、最後には皆さんが、ワーって盛り上がってくれて。うれしくて、ちょっと鳥肌が立ちました。
神田 体験版に関しては、「ここまでやり込んでくれるのか!」というくらい、やり込んでくれている方が本当に多かったです。これにもビックリでしたね。「これはなかなか見つからないだろう」と思っていた要素も、あっという間に見つけられてしまったり(笑)。

――怖いんですけど、気になる部分が多くて、ついくり返しプレイしてしまうんですよね。

神田 ありがとうございます。そうした盛り上がりを、うまく今後の盛り上がりにつなげていきたいですね。

●PS初期のように多くの実験的タイトルが生まれる可能性も!
――PS VRでは、今後どういったタイトルが出てくるとお考えですか? 『バイオハザード7』レベルの、リッチな作品を作ろうとすると、簡単ではないと思いますが……?

川田 リッチなタイトルを作るのは、ふつうにお金も時間もかかると思うのでたいへんだと思いますが……(笑)、たとえば“仮想空間の中で球体が転がるだけ”、というようなシンプルな作品でも、そこに自分が介入して変化を与えることができるのであれば、それはゲームになり得るわけです。感覚が騙されていく様を楽しむことができるのであれば、“おもしろい表現”だけだったものが、その先に広がっていく可能性があるわけですよ。もちろん表現には相性も必要なわけで、VRだからなんでもおもしろくなるとは思いませんが、シミュレーションに近づいているジャンル、たとえばレースゲームなどはVRとは相性がよさそうに思います。臨場感が格段に上がるわけですからね。そういう意味では、密閉空間や臨場感が求められるホラージャンルもVRと相性がよいと考えていますし、今回の『バイオハザード7』がVRで開発を進めているのも、自然な流れなのかもしれませんね。
神田 僕はE3で『バットマン:アーカムVR』を体験プレイしましたが、着替えるシーンの時点で、もう自分がバットマンになったような感覚になりました(笑)。VRはそういった部分でも、いい大人もそそられるというか、訴えかけてくる魅力があると思います。「コレ、すごいな!」と、本気で遊んでみたいと思いましたからね。

――究極の、“大人のごっこ遊び”ですよね。

神田 ごっこ遊びは強いと思いますよ。

――『バイオハザード7』のようなホラー以外に、ご自分で「VRならこんなコンテンツも作ってみたい!」といったものはありますか?

川田 作ってみたいと言いますか……『アクアノートの休日』のような、日常的ではない、ユニークな空間の中で、ただただ漂うだけの空間を存分に味わってみたいですね。現実逃避というのもVRが得意とする分野だと思っていますので(笑)、好きな音楽でも聞きながら、日常とはかけ離れた空間でボーっとするだけのコンテンツを、個人的には求めています。別にいまの仕事に疲れているからこんなことを言うわけでもないのですが(笑)、つまりVRにはゲームを“体感する”というわかりやすさの部分があって、さらにジャンルが拡大して幅が増えれば、家庭用ゲームもいまよりもっと盛り上がるのではないかと感じています。

――わかりやすいゲーム性ではない内容でも、コンテンツとしては成立しうるということですね。

川田 まだ可能性でしかないですけどね。音楽や映画とは違って、テレビゲームはまだ若いコンテンツだけあって、技術革新によるブレイクの可能性はあると思っています。初代プレイステーションの時代には、ゲームがポリゴンに切り替わる中で、いろいろと実験的なタイトルも登場しましたよね。もしかしたら、またそうした実験的な作品を世に出せるタイミングなのかもしれませんね。

●PS VRの登場で“VR元年”はますますおもしろくなる!
――これからPS VRが広く普及するには、何が必要になるのでしょうか?

川田 ハードの普及という面では、現行のゲーム機があって、そこに後付けで新デバイスを追加するというのは、先行投資という意味でちょっとハードルが高いかもしれませんね。PS VRがスタンダードになるかどうかは、SIEさんしかり、われわれサードパーティーしかり、これからどれだけ多くの魅力的なタイトルを生み出せるか次第だと思っています。

――やはりコンテンツですね……。

川田 まだまだ足りていませんよ。加えて、PS4本体も、さらにどんどん売れてもらいたいところです。

――そうですね。まずはハードから、という側面もあります。

神田 ゲーム市場的には、PS VRの登場は、いいタイミングではあると思います。PS4がある程度普及してきた中で、VRという新たなシステムが登場し、そして魅力的なVRタイトルを楽しめる環境になりました。この状況をポジティブにとらえて、また新たなステップとして、VRがどんどん普及していくという流れに期待したいですね。

――ハードに関しては、PS VRのほかにも、Oculus Riftなど多くの企業が製品を展開していることも、大きな要素ですね。

川田 そういった競争も、普及を後押ししてくれるでしょうしね。今後は注目タイトルも増えてくると思いますし、PS VRの広がりには大いに注目していきたいです。メディアの扱いも、今年は“VR元年”で押しているみたいですが、10月からは、もっとおもしろくなってくれればいいな、と期待しています。

――VRに関しては、その内容を“伝える難しさ”もありますね。

川田 やはり体感してもらうことが、ベストなんですけどね。ですのでわれわれも、できるだけ体験プレイをしていただく機会を作りたいと思っています。台車に商品を乗せて売るようなわけにはいきませんが、いろいろな場所で体験会イベントを実施したいと思っています。

最終更新:7月27日(水)20時1分

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