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<特別連載>ミャンマーのロヒンギャ問題とは何か? (5) 軍政が人為的に作った「135民族」という数 宇田有三

アジアプレス・ネットワーク 7月27日(水)10時56分配信

Q. アジア諸国で、他に上座仏教を信仰している国はあるのですか?
A. ミャンマーの他、タイ、カンボジア、スリランカなどです。ちなみに、2015年のロヒンギャ難民のニュースの中で、ミャンマーからタイを経由して、イスラーム国であるマレーシアやインドネシアに渡ろうとしている姿が映し出されていました。

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タイは仏教国として知られていますが、マレーシアと接する南部は実はイスラーム地域です。ここでは詳しくは触れられませんが、タイの南部ではこれまで、王室を頂くタイ政府とイスラーム勢力の紛争によって数千人の人びとが命を落としています。

Q. イスラームといえばイラクやイラン、エジプトなどの中東諸国を思い浮かべます。
A. 国別の人口比で見ると、世界最大のイスラームの国はインドネシアです。それにパキスタン、インド、バングラデシュとアジアの国が続きます。実はアジア諸国が多いですね。

日本の書店で簡単に手に入るイスラーム関連の本は、アラブ諸国や中東が中心で、アジアでのイスラーム関連書物は数が少ないです。それに東南アジアや南アジアのイスラームについて、日本のメディアではあまり報じられません。

Q. 東南アジアのムスリムで余り知られていないことは他にありますか?
A. 例えば、タイの南部のムスリムは4つに分類され、その多くはタイ語ではなくマレー語を話します。またタイの方言を話すムスリムは土着化し、ある村では仏教徒の通婚率が20%にもなり、ムスリムなのですが、願かけの一つの手段として、「仏教徒とともに寺で出家するという慣行」(南タイのサトゥー県)もあります。ムスリムによるアジア諸国への土着化について、後で簡単に触れたいと思います。

Q. では、ミャンマー国内の仏教徒は人口のどのくらいの割合なのですか?
A. 一般的に出される数字として、ミャンマーの総人口は約5100万人で、そのうち約90%が上座仏教徒です。上座仏教の他に、キリスト教、ヒンズー教、イスラームが信奉されています。また、「ナッ神」という土着の精霊信仰が生活の隅々に入り込んでいます。

Q. ビルマは多民族国家といわれますが、その数はいくつぐらいあるのですか?
A. ミャンマー政府は公式に135の民族が存在していると発表していますが、その区分けは果たして妥当かどうか考える必要があります。というのも5100万人の人口に対して、その区別は細かすぎるのではないかと思われるからです。ベトナムは人口が約9100万人でミャンマーよりも多いです。でも公式な民族数は54です。そのベトナムでは、民族数で次のような指摘もあります。
 
《54の国定民族として認められていないサブグループや地方グループに位置づけられている人々が(中略)自らを新たな「一民族」として認めるよう、国家に要求する声を上げたのだった。これに押されて、国家は民族数を増やすことを含めて、民族分類枠組みの再検討を開始した。この作業は当初国家が予想していたような「民族学的」「文化人類学的」な調査で解決できる問題ではなく、政治問題であることが明らかになっていった。
(中略)しかし、それらの要望をすべて受け入れると、現在の倍、つまり民族数は軽く100を越えることだった。》
(伊藤正子『民族という政治―ベトナム民族分類の歴史と現在』)

ここでの指摘は重要です。つまり「民族」という区分けは、おしなべて「政治問題」なんですね。ちなみに約13億5000万人という世界最大の人口を抱える中国は、公式に56の民族を認定しています。

Q. では、その政治問題ともいえる民族数に、ビルマではどういう説明があるのですか?
A. ビルマの政府発表によると、ビルマには8大主要民族があり、さらにその下に135の下位集団(サブグループ)が細かく規定されています。
この8大主要民族とは、(1)バマー(ビルマ〈ミャンマー〉)(2)カチン(3)カヤー(カレンニー)(4)カレン(カイン)(5)シャン(6)ラカイン(アラカン〈ヤカイン〉)(7)チン(8)モンです。

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最終更新:8月1日(月)15時36分

アジアプレス・ネットワーク

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。