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正義か暴走か? FBIが行なった「前代未聞のハッキング作戦」(3)FBIの令状なきハッキング捜査が世界に広がる

THE ZERO/ONE 7月27日(水)10時51分配信

Mozillaの意見書が功を成したのかどうかは不明だが、Jay Michaudの裁判において米国地裁判事のRobert Bryanは5月25日、「FBIが提示していた証拠」を退ける決断をした。

NITが収集した「証拠」を退けた理由

Bryan判事はFBIに対して、「NITのエクスプロイト詳細を開示せよ」という命令はしなかった。しかし「証拠のデータを収集する際、FBIが捜査令状に違反していなかったかどうかを確認する権利」が被告側にあるため、NITによって取得したデータは法廷に提供されるべきではないとの見解を示した。つまり、どのような脆弱性をどのように利用し、どのように被告のデータを収集したのかをFBIが何も説明できないのであれば、それは証拠として用いることができないという判断だ。

ただし、このBryan判事の判断によって被告のMichaudが完全に無罪放免となったわけではない。あくまでもBryan判事は、「FBIがNITで得た証拠」を却下しただけであり、Michaudに対する訴訟そのものの棄却はしなかったからだ。とはいえ連邦政府側は次に何を行うのかを発表しておらず、上告を試みるのか否かも明言していないため、この裁判は宙ぶらりんの状態となった。さらにMozillaが懸念した「現在も、悪用可能なゼロデイがブラウザーに存在している可能性」も残されたままだ。

それでも、FBIがこれほど大掛かりな捜査を通して手に入れた証拠のデータが、裁判所によって取り下げられた今回の判断は、弁護人のFiemanにとっては充分に手ごたえを感じられるものだっただろう。

そもそもFBIの捜査には令状がいらなかった?

ここで「Michaudは、Playpenで逮捕された容疑者のうちの一人でしかない」ということを思い出してほしい。つまり、他の130人以上の容疑者に同様の判決が下る保証はない。そして、議論を呼びやすい事件の裁判では往々にして、裁判所ごとにまったく異なった判決が下るものだ。

バージニア州連邦地方裁判所では今年6月23日、Playpenの捜査によって逮捕された別の被疑者Edward Matishの裁判が開かれた。この裁判で、判事のHenry Morganは次のような判決を下した。「FBIには世界のコンピューターに侵入する権限がある。それは地元判事の令状も、また裁判所のいかなる審査も必要としない」

この裁判では、FBIが先述の作戦で入手した「証拠のデータ」を裁判で用いることに対する異議が認められなかった。Matishの弁護側は、FBIの利用したNITを「マルウェア」と呼び、その感染を利用した捜査が合法でなかった可能性があると主張したが、Morgan判事は「プライバシーを考慮した、法に沿った捜査であった」として原告側を支持した。

Morgan判事の言葉を借りるなら、「ハッキングの手法を使ってPlaypenのユーザーを特定する行動は、家宅捜査を求める警官が壊れた窓を調べるような行為」である。それが米国憲法に違反していないことは最高裁によって認められている、とMorgan判事は語った。つまり昨今に行われているハッキング事情から考えるに、元々コンピューターは簡単に保護を破られるものであり、それを突破することは法に反しないというのが判事の喩えだ。

さらに、NITを利用した捜査が令状の内容に沿っていたかどうかを問う以前の問題として、「FBIには、令状なしでNITを利用し、捜査を行う権限があった」というのがMorgan判事の判断である。このときの法定文書のPDFファイルは、電子フロンティア財団(EFF)のサイトで読むことができる。

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最終更新:7月27日(水)10時51分

THE ZERO/ONE

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