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血糖を調節する新たなメカニズムを解明

MONOist 7月28日(木)8時55分配信

 京都大学は2016年7月8日、ナルディライジンというタンパク質が、血糖上昇時のインスリン分泌に不可欠であり、血糖値を一定の範囲に維持するために重要な働きを担っていることを明らかにした。同大学医学研究科の西英一郎特定准教授らの研究グループによるもので、成果は同月6日に米糖尿病学会の学術誌「Diabetes」オンライン速報版で公開された。

 血中グルコース濃度(血糖値)は、常に一定の範囲内に収まるように、膵島(ランゲルハンス島)から分泌される血糖調節ホルモン(インスリン、グルカゴン)によって厳密な調節を受けている。膵島は約80%がβ細胞、約15%がα細胞で占められており、血糖の上昇を感知すると、β細胞から血糖降下作用を持つインスリンが、血糖の低下を感知すると、α細胞から逆の作用を持つグルカゴンが、それぞれ分泌される。

 同研究グループは、膵β細胞だけでナルディライジンが欠損しているマウス(βKOマウス)を作製した。このマウスでグルコース負荷試験を行ったところ、正常なマウスのようにはインスリンの分泌が増加せず、血糖値が上昇して、糖尿病型表現型を示した。このことなどから、膵β細胞のナルディライジンがグルコース反応性のインスリン分泌に必須だと分かった。

 また、βKOマウスの膵島ではβ細胞が減少し、α細胞が増加していた。そこで、細胞系譜解析という手法を試みたところ、もともとβ細胞であった細胞の一部が、ナルディライジンを失ったことでα細胞に変化したことが分かった。つまり、ナルディライジンは、インスリンの分泌を制御するだけでなく、β細胞に分化した状態を維持するためにも必要だと考えられる。

 さらに、グルコース反応性のインスリン分泌が障害されるメカニズムを明らかにするため、膵島の遺伝子発現を調べると、βKOマウスではMafAという転写因子の発現量が減少していた。MafAは、インスリン自体やインスリン分泌調節に関わるタンパク質(GLUT2など)の発現量を制御する、膵β細胞に特異的に発現する転写因子だ。培養した膵β細胞でナルディライジンの遺伝子発現を増減させたところ、MafAの発現やインスリン分泌の量も、それに応じて増減することが分かった。

 詳細な検討の結果、(1)ナルディライジンによるインスリン分泌調節の、少なくとも一部はMafAに依存していること、(2)ナルディライジンがIslet1という転写因子と協調してMafAの発現量を制御していることが明らかになった。

 以上から、膵β細胞のナルディライジンが血糖値を一定の範囲内に保つことに不可欠なタンパク質であることが示された。この成果は、ナルディライジンの量や働きをコントロールすることによる新しい糖尿病治療法の可能性を示唆するものだ。

最終更新:7月28日(木)8時55分

MONOist