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孫社長のARM買収に続く投資家たち

ZUU online 7/28(木) 10:10配信

ソフトバンクグループ <9984> は7月18日に英国半導体設計大手のARMを約3.2兆円で買収すると発表し、世間を驚かせた。同社は、ARM有する独自基盤技術がIoTにおいても優れた能力を発揮すると判断し、買収に踏み切ったと説明した。

次の大きなトレンドになるとみられる「IoT」の可能性を大きく評価し、賭けに出たと見てもよさそうだ。

背景にあるとみられるのは、英国のEU離脱(ブレグジット、英国のEUからの離脱)によるポンド安。大幅な円高をチャンスととらえて、勝負に打って出る投資家も孫社長以外にもおり、見るべきモノもありそうだ。

■ブレグジットで大幅なポンド安が進行

円=ポンドの為替をまずはおさらいしておこう。英国が国民投票でブレグジットの選択した6月23日より以前には、1ポンド=150円~160円程度で推移していた。実質的にブレグジットが決まってからは、1ポンド=130円~140円程度で推移しており、一気に20円ほども円高に振れた計算だ。

ちなみに、ソフトバンクが買収を公表した翌日の7月19日には1ポンド140円43銭まで持ち直している。同社は今回の買収額の算定に際し1ポンド136円のレートを適用。ドル/円、ユーロ/円相場が安定しており、仮に買収資金の全額を円で調達すれば10%以上の投資コストを節減できる計算だ。

孫正義社長はARMの買収については「あらゆるモノがネットにつながるIoTが進めばソフトバンクのインフラとARMの製品がシナジーを持ってつながることになる。ARMはセキュリティ・サービスも提供しているので、そういう部門とソフトバンクのシナジーが発揮されるかもしれない。」と述べ、あくまで長期的な視点から投資判断を下したと強調している。
また、「私はパラダイムシフト(枠組み転換)の入り口で投資をしてきた」とも発言している。今回の投資はインターネット、モバイルネットと同じようなパラダイムシフトが起きる中で行ったもので、ちょうどそのタイミングでブレグジットによる大幅なポンド安に遭遇したという説明だ。

他方で、孫社長はブレグジット後にARMの株価が15%程度上昇しているため、ポンド安のメリットは相殺されニュートラルだとも述べている。ただ、為替差益がなければ15%高い買い物をすることになった訳であり、ブレグジット騒動で一気にポンド安が進行したことも踏まえて、投資を決断した可能性も十分にあるとの見方もできる。

■ブレグジットに「英国買い」を見る投資家達

ソフトバンクのARM買収が契機となりポンド安を背景に英国企業を買い漁る動きが出てくると予想するアナリストもいる。中には、上場IT企業の中ではIQE、Accesso、Telit、Micro Focus、Imagination Technologiesなどが買収対象となる可能性があるようだ。

フランクリン・テンプルトン・ソリューションズで70億ドル(7400億円)規模のファンド運用に携わるスティーブン・リンガード氏もブレグジットの国民投票前から投資チャンスが巡ってくるとの見解を述べていた。またリスクモデル会社のアクシオマは英国を始めとする欧州株価が短期間に25%下落するとの事前予測を発表していた。

不動産市場でも英国買いの動きがみられる。米系金融機関のウェルズファーゴはロンドン拠点の新オフィスビルを購入した。当初は賃貸物件へ移転する予定だったが、ブレグジットによりポンドが対ドルで10%以上安くなったことを踏まえ方針を変更した。このほか中華系の投資家もロンドン市内のホテルを約20%減の価格で購入した模様だ。

ちなみに、ロンドンのオフィスビル空室率は3%程度でパリやニューヨークと比べ低いこともあり相対的に安全な投資先とみられている。ポンド安に後押しされた外国人の不動産投資が加速化するとの見方も広まっているのだ。

英国の金融業界(シティ)ではすでに多くの外国企業がメジャー・プレーヤーとして活動しており外資アレルギーはあまり大きくないとみられるが、ARMのような「Crown Jewel(産業界の至宝)」の1つと目される企業の買収には抵抗感を示す人も少なくない。外国人にはそうした空気に配慮し買収活動を進めることも必要だろう。

■ブレグジットの影響は小さいとの見方も存在

ブレグジットは英国経済に打撃を与えポンド安、株安傾向が定着するとの見方が一般的だが、中長期的な懸念材料は殆どないという見解もみられる。

もともと英国は通貨統合(ユーロ)に参加せずポンドを維持してきたため、ブレグジットによる大混乱が起きる可能性は低い。この点は財政破綻によりEU離脱が取りざたされたギリシャとは大きく異なる。

一般的に国際金融・ビジネスは英語や英米法に基づき行われる。通常は英国法かニューヨーク州法を準拠法とし裁判管轄地をロンドンかニューヨークとすることを含む英文の契約書が作成される。これをフランスやドイツを基準とする枠組みに変えることはあり得ないだろう。少なくともEU域外の国との取引には重大な障害になる。

またロンドンには多数の法律事務所、会計事務所、ロイズなどによる大規模な保険市場、ロンドン証券取引所やロンドン金属取引所など世界最大級の金融取引所、バルチック海運取引所を中心とする世界的な海運市場などがある。

こうした環境を踏まえれば英国の基幹産業である金融ビジネスに与える影響は限定的と言えるだろう。

英国は入国審査を経ず自由に加盟国間を移動できるシェンゲン協定にも参加していないため、ヒトやモノの日常的な移動に大きな変化が生じることもない。バナナの形や靴屋が保管できる接着剤の量まで規制するEUの細かなルールに従う必要がなくなれば、自由を求める革新的な企業がヨーロッパ中から集まるかもしれない。

ブレグジットによりEU加盟国との貿易に関税がかかったり労働者の異動の自由が制限され人件費の上昇を招いたりするなどの悪影響が想定されるものの、英国経済の根幹を揺るがすような問題には発展しないと予測する投資家が当面したたかに英国買いを進めていくだろう。(ZUU online 編集部)

最終更新:7/28(木) 10:10

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