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「すごい目」のロボットで橋梁点検を効率化、0.1mmの亀裂も捉える

スマートジャパン 7月28日(木)6時10分配信

 橋梁やトンネルなどの社会インフラの老朽化が進む中で、維持管理コストの増大や点検作業などの専門知識やノウハウを持つ人材の減少が大きな課題となっている。そこで活躍が期待されているのがロボットだ。点検作業の効率化や省人化などに貢献する技術として、注目が集まっている。

 こうした背景から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2014年度から「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」を立ち上げ、さまざまなインフラの維持管理作業に貢献するロボット開発の促進を図っている。同プロジェクトのもとで橋梁点検ロボットの開発を進めている1社がイクシスリサーチ(横浜市)だ。同社は2016年7月26日に神奈川県川崎市内にある道路橋で、開発中のロボットを使った実証試験の様子を公開した。

主桁に吊り下がって走るロボット

 イクシスリサーチが開発を進めているのは「主桁吊り下げ型ロボット」だ。鋼板をI形断面に組み立てて桁にする鈑桁橋を対象とするロボットで、富士フイルム、首都高速道路技術センターと共同開発している。並行する2つの主桁下フランジにタイヤを引っ掛けてつり下がるように設置するのが特徴的だ。

 このロボットの開発目的は、人が近接目視で行っている橋梁の床版に生じるクラック(ひび割れ)や鋼材の劣化状況などの点検作業を、より効率的化することにある。「人の目」の代わりとなるのは、富士フイルムが特別に開発したステレオカメラだ。ライトとフラッシュを備えており、遠隔操作で橋軸方向に移動しながら床版や鋼材の様子を撮影できる。ステレオカメラは左右と垂直方向に動き、視点も柔軟に変えられる。点検したい部分に近づいて撮影可能だ。撮影した映像は地上のモニターを通して確認できる。

0.1mm幅のクラックを自動認識

 このロボットの最も大きなポイントといえるのがステレオカメラの採用だ。2つのレンズを備えるステレオカメラによって、単に撮影するだけでなく、距離の測定も行える。こうしたステレオカメラの機能と画像処理技術によって、撮影した画像から床版に生じているクラックや、鋼材の劣化部分などの大きさを計測できる。クラックであれば0.1ミリメートル(mm)幅までを自動認識できる機能を備えるという。

 この他に、床版を撮影した複数の画像をパノラマ合成して保存する機能も開発した。撮影した画像には撮影座標、撮影方向などの情報も付与されている。保存した画像データと、橋梁の図面データを統合管理できる機能も開発しており、橋梁の各部分がどういった状態なのかを、図面とともに確認できる。こうして画像データで保存することにより、橋梁の状態を複数人で客観的に評価できるメリットも大きいという。

 橋梁の点検作業などは、実施した後に国土交通省が指定するフォーマットに従って報告書を提出する。これまでは作業現場で野帳などにメモした近接目視による記録を、後日にまとめなおして提出するという作業フローであり、一定の作業時間が必要だった。イクサスリサーチではこうした事務作業の手間を省力化できるよう、ロボットで撮影した画像データや記録を、国土交通省の指定フォーマットに流し込める機能も開発している。

一体どれくらいの省力化につながるのか?

 このロボットは操縦作業者、データの確認作業者、周辺の安全確認担当の3人で運用する。設置と撤去にかかる時間はそれぞれ15分程度で、1日に6~7時間稼働させることを想定しているという。現時点での性能では、点検作業そのものの時間は人手の目視作業と同等程度とする。しかし、その後の報告書の作成時間を大幅に短縮できることを考慮すると、点検作業全体のコストは大幅に削減できるとしている。

 イクサスリサーチはNEDOプロジェクトにおいて、2014年度からの4カ年計画でこのロボットの開発を進めている。既に実際の現場で50回程度の実証試験を行ってきたという。ロボットの販売時期や価格などは現時点で未定だが、同社では残る約1年半の間でさらに実証を積み重ねてロボットの性能向上を図り、実用化のめどを立てる計画だ。

最終更新:7月28日(木)6時10分

スマートジャパン

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