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無名な店ばかりなのに、客が集まる商業施設が浅草にあった

ITmedia ビジネスオンライン 7月28日(木)6時35分配信

 読者の皆さんが思い浮かべる「行きたくなる店」とは、どのようなところでしょうか。

 人の集まる店には共通点があります。そこに行くと楽しい、活気がある、ストレスが発散できる、安くて質の良いものが買える、おいしくて新鮮なものが買える、何だか懐かしいものがあるなど。繁盛する店はこのような条件を持っているものです。

【大勢の人でごった返す店内】

 しかし、最近では繁盛店の条件はさらに細分化され始めていて、単に安くて良いものが買えるというだけでは、消費者は満足しなくなりました。

 そうした中、お世辞にも有名ではない地方の店が多くテナント入居しているにもかかわらず、彼らが陳列する逸品を求めて多くの人々が訪れる場所が東京・浅草にあります。2015年12月に開業した商業施設「まるごとにっぽん」です。

 浅草で地方の魅力が体験できる商業施設。一見すると、インバウンド需要狙いの外国人向け観光施設と思われがちですが、行ってみると日本人のお客さんだらけであることに驚きます。既にオープンしてから8カ月以上が経ちますが、ますます人気の店になっているようです。商業施設としてはそれほど大きくないこの場所にたくさんの人が押し寄せているのはなぜでしょうか。

●浅草六区に再び賑わいを!

 まるごとにっぽんは浅草六区エリアにあります。今でこそ浅草六区は大勢の買い物客で賑わうようになっていますが、数年前までは人通りが少ない寂れたエリアでした。

 同店を開発した東京楽天地という会社は、この浅草六区を中心に日本のレジャーをけん引してきた企業の1つです。東京楽天地は1952年9月に浅草宝塚劇場と浅草宝塚地下劇場をオープンし、1954年4月、浅草楽天地スポーツランドを開業しています。都内で初めてのジェットコースターなどの最新の設備を導入し、その後、ボウリング場やゲームセンターへの転用を進めてきたようです。

 創立78周年、浅草に進出してから63年が経ち、改めてこの浅草六区を賑わいのある街に変えたいという思いでまるごとにっぽんを開発したのです。

 同店の狙いは、全国各地の魅力が詰まった地域情報の統合拠点を作り、地方自治体や地方事業者が出店できる仕組みを構築することで、「真の地域振興の拠点」を目指しています。

 施設のテーマは「風土巡礼」。観光地として国内外の多くで賑わい、日本文化を体感できる浅草で、地方事業者が、モノ・コト・ヒトの魅力を発信することを狙いとしています。

 まるごとにっぽんの小笠原功社長は、「都市部への人口流出や後継者不足で徐々に疲弊している地方都市が増える中、地方創生の足掛かりとなる施設を作りたいとの思いがあった。また、親会社の東京楽天地が70年間商売をしてきた浅草六区の賑わいを取り戻したい思いから、浅草に施設を開業した」と話しています。

 フロア構成は、1階食品、2階日用品、3階情報発信、実演・体験、4階飲食で、合計売場面積は約3732平方メートル。約1000坪です。

 年間集客想定は372万人以上を見込んでおり、年間売り上げ目標は30億円としています。それほど大きな売場面積ではないのですが、とにかく連日お客さんが集まっています。最近私が見た施設の中ではダントツの集客力。平日の店内の混み具合は、今年3月にできた新宿駅新南口のルミネ「NEWoMan」や、「東急プラザ銀座」にも負けないほどです。開業100日目で来館者数180万人を突破したということですから、当初目標の2倍近い集客ペースであることが分かります。特に高年齢層を最も集めている店と言ってもいいでしょう。

 確かに立地が良いというメリットはあります。まるごとにっぽん周辺の2014年6月の歩行者交通量は、平日で1日当たり2万5000人(接道する3道路の合計値)、休日で5万人。浅草エリア全体では毎年約2800万人の観光客で賑わいます。訪日外国人の多くも浅草に立ち寄ります。

 しかし、それだけで人が常に集まるということはありません。なぜまるごとにっぽんはたくさんの人を引き付けているのでしょうか。そのポイントは品揃えに対するこだわりにありました。

 まるごとにっぽんにはさまざまな全国の逸品を集めている、まさに日本の地域産品のセレクトショップです。全国各地の地産グルメを扱う食物販店舗、地方に伝わる伝統を生かし新しいモノづくりに取り組む物販店舗、全国の市町村が集まる「おすすめふるさと」とコラボレーションするサービス店舗、浅草の景色を楽しみながら旬の味覚が楽しめる飲食店など、全4フロアに、飲食店8店、物販37店、そのほか5店の合計50店を集積しています。

 店舗数はそれほど多くないのですが、アイテム数は数万に上るでしょう。コンビニは一般的には3000アイテムほどを品ぞろえしていますから、それよりもはるかに多く、その1つ1つがニッポンを感じさせるものばかりで、非常におもしろい。また、店内は心が落ち着く空間になっています。

●「マイナー」が武器

 品ぞろえ以外にもいくつかの強みがあります。私なりに分析すると、まるごとにっぽんは以下のような特徴があると思います。

出店している店はかなりマイナー、だからおもしろい

 特徴は何と言っても、それぞれの店の「マイナーさ」です。

 経営コンサルタントとして私はこれまで25年にわたって数千店舗以上の店を見てきたため、それなりの自負はあったのですが、それでもほとんど知らない店や知らない地域ブランドばかりでした。それもそのはず。出店している50店舗のうち、「約半数が初めて実店舗を構えた」というのですから、知らなくて当たり前です。さらに約8割の店舗は東京初出店でした。

 既にブランドが確立された著名な商品ではなく、これまで地方に行かなければ手に入らなかった逸品を販売。それによって地方の農家や漁師、事業者などに経済効果をもたらす施設にしたいということですから、狙いも明確です。

 今の消費者はどこかで見たことがあるものに興味を持たなくなりました。特にネットでさまざまなものがすぐに買えるわけですから、店舗で購入したくなるものは「わざわざ感」がないと駄目です。その点で、マイナーで手に入りにくいというのは大きな武器になります。

 これは一見するとデメリットのようですが、まだ世に出回っていないし誰も知らないけれど、品質が良くておいしい。地元の人しか知らない名品、名産が手に入る。こうしたキーワードがあると多くの消費者は希少性を感じて興味を持ちます。

 そのため、まるごとにっぽんは、大手商業施設では流通が難しい小ロット商品を直営ゾーンで販売するような販路開拓支援、店舗内装と什器をまるごとにっぽんが用意することで、初期投資を抑えたテナント出店支援など、出店者に腕試しの場所として活用してもらえる仕組み作りを行って、マイナーな商品ラインアップを拡充しているのです。

出店しやすい条件を整備

 次の特徴は、出店する企業への手厚いサポートです。手軽に出店しやすいイベントスペース「おすすめふるさと」ブースは、1市町村当たり約2.7坪に高機能演出照明(スペースプレーヤー)と特製展示台1台を配置。第1期の契約期間は、2015年12月~2017年3月までの16カ月間で、賃貸借料は、固定賃料で月額税別15万~20万円、共益費は月額1万円。展示品販売の売り上げ手数料は、売上高の15%です。浅草のこの立地でこの賃料は決して高くはないでしょう(注:2015年9月時点の出店条件)。

 1~2階の通常店舗も5年契約の賃貸借契約となっています。定期的に出店する市町村の入れ替えを行い、紹介できる地方を増やしていきます。

 今後はこの施設が全国の主要な都市に広がっていくようになるかもしれません。同社ではこの業態を地方だけでなく、アジアをはじめ海外にも出していきたいという意向があるとも聞きました。

 インバウンド需要にかげりが見え始めた今、訪日外国人に頼るのではなく、日本人が喜ぶような店を真剣に考えることで、地方創生をキーワードにしたビジネスの次の一手が見えてきます。

 どこでも買えるような商品ではなく、マイナーな商品、一般化していない商品は、日本にまだまだあります。そのような商品を探して消費者に提案することが、たとえ中小企業であっても繁盛店になる可能性を秘めているかもしれません。

 消費者の目が厳しくなった今、地方を盛り上げるとか、インバウンドに対応するとか、そんな見え透いたやり方にはお客さんは感動しません。逆に、店を作る側が「これはおもしろいはず」「これなら今までにないもの」「これならお客さんもびっくりするはず」という一点にこだわる割り切りが大切です。その点で「マイナー」というキーワードは今後のポイントになりそうです。

(岩崎剛幸)

最終更新:7月28日(木)6時35分

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