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4年で1億台以上も消滅! 凋落するPC市場に未来はあるのか?

ITmedia ビジネスオンライン 7月28日(木)6時38分配信

 メーカー各社が新型PCを発売すると、仕事帰りのサラリーマンなどが夕方の量販店に足を運び、機能を吟味したり、店員と値段交渉に臨んだりした。そうした光景はもはや過去のもの。今ではPCマニアくらいしか熱心に売り場へ通わないのが実態ではないだろうか。

【PC総出荷・販売台数の年度別推移】

 そんな状況だから、当然、PC市場の縮小は止まらない。

 IT調査会社の米ガートナーが発表した2016年のPC出荷台数予測(世界)は2億3200万台。2015年に比べると約5000万台の減少。そして、2012年の3億4300万台に比べると32%減と、約3分の2の規模にまで落ち込むことになる。わずか4年で1億台以上も目減りした計算だ。

 販売金額では、2012年の2190億ドルに比べて、45%減となる1220億ドルと、半分近くまで縮小。低価格向けの製品へと売れ筋がシフトしていることを示す結果となり、PCメーカーにとっては収益確保が厳しい状況であることがうかがい知れる。

 市場低迷の理由は、先進国市場での需要が頭打ちになったのに加えて、新興国の景気低迷などが原因と見られる。

 また、2015年7月に登場した米マイクロソフトのOS「Windows 10」は、2016年7月29日までの期間、Windows 7およびWindows 8.1のユーザーを対象に無償アップグレードを提供。これまでに約3億5000万台のデバイスで使用されており、そのほとんどが無償アップグレードによるものと見られている。最新OSの登場が新たなPCの出荷には貢献していないことも影響しているはずだ。

 実際、2016年第1四半期(2016年1月~3月)の売り上げの落ち込みは激しい状況となっている。ガートナーによると、第1四半期における全世界のPC販売台数は前年同期比9.6%減。IDCでは、11.5%減と2ケタ減の実績となっている。そして、ガートナーが発表した2016年第2四半期(4月~6月)も、前年同期比5.2%減の6430万台となり、7四半期連続で前年実績を下回った。

 一方、IDCは、2016年のPC市場は、前年比7.3%減の2億5560万台になると予測し、ガートナーよりも強気の見通しを出している。そして、2in1パソコンを含めると前年比2%減にとどまるとする。これには、いくつかの明るい材料があるためだ。

 1つは、企業のIT投資意欲が引き続き旺盛であるという点。さらに、Windows 10の無償アップグレードが7月29日に終了し、今後は、Windows 10を搭載したPCの販売に弾みがつくと予想される点などがある。

 IDCでは、2020年の市場規模を2億4950万台と予測。5年間の市場平均成長率をマイナス0.5%と、ほぼ横ばいで推移すると見ている。先進国では2.1%減になると見ているが、市場の約55%を占める新興国市場における年平均成長率を0.9%増と予測する。特に新興国におけるノートPCの成長は2.0%増の成長を見込んでいる。

●市場は3分の2に縮小

 PC市場の縮小傾向は、日本でも同じだ。

 業界団体である一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによると、2015年度のPCの国内出荷実績は、前年比22.6%減の711万台という大幅な縮小だ。そして、2012年度の市場規模と比較してみると、当時の実績1115万台から36.2%減。世界市場と同様に3分の2の規模にまで減少したことが分かる。

 特に落ち込みが大きいのが、デスクトップPCで前年比32.1%減。2012年度から比較すると42.1%減となっている。一方でノートPCは前年比18.9%減にとどまっているが、2012年度と比較すると34.1%減と、やはり3分の2の規模にまで縮小している。今年に入ってから、業界内では世界、日本ともに共通して「6掛け」という言葉が使われている。

 こうしたPC市場の縮小はどんな状況を生むことになるのか。

 まずはPCメーカーの寡占化だ。PCの特徴は、CPUやOSなどの主要製品が標準化されており、その調達価格は「量」に影響されるという点にある。つまり、大量に調達できるメーカーほど、CPUやOSを安く抑え、それを最終製品の価格へと反映できる。単純に言えば、同じPCを使った場合、シェアの高いメーカーの方が圧倒的に安いPCを作ることができるのだ。

 市場縮小の結果、淘汰(とうた)が進むと、価格競争力を持たない中堅のPCメーカーは苦戦を強いられることになるのは明らかだ。それがここ数年のPC市場の再編につながっている。

 とはいえ、中堅PCメーカーのシェアを食い始めた大手PCメーカーも決して順風満帆とはいえない。ここ3年で3分の2まで市場が縮小した分を、これだけではカバーしきれないからだ。

 実は最近、PCメーカーにおいて開発投資を絞り込むという動きがあちこちで見られ始めている。もともと利益率が低いPC業界だけに、市場規模の縮小は、粗利の絶対額の確保にはマイナスに働く。当然、この分は開発投資の縮小にも直結するというわけだ。

 開発投資が縮小すれば、ユニークなPCが登場しないことにつながりかねない。そして、ユニークなPCが登場しなければ、PC市場を活性化することができず、市場がさらに小さくなるという悪循環に陥る。普及価格帯の製品ばかりが増えても、それが市場活性化の潤滑剤になるとは言い難い。

 日本では、パナソニックやVAIO、マウスコンピューターなどが、事業規模が小さくても、付加価値を追求したPCを生産。ユニークなPCを投入することに成功しているが、最終製品の価格がやや高くても、こうしたPCメーカーが存在していることは、市場の活性化にはプラスなのだ。

 だが、この手法が新興国で通用するとはいえない。とくに、スマホによる代替が可能な領域が増えており、コミュニケーションにおいてはより威力を発揮するスマホを選択するユーザー層が少なくないのが実態だ。

 PCメーカー首脳の間からは、「PCは絶対になくならない」という声があるものの、その一方で、業界として、新たな提案を行ってこなかったことが市場縮小の原因だったとの反省の声が上がる。

 例えば、PCの利用の多くが、WordやExcelといったOfficeアプリケーションによる生産性向上であったり、メールを中心としたコミュニケーションやインターネットによる動画視聴であったりということは、10年以上変わらない。それがPCの新たな需要層を開拓できなかった原因というわけだ。このままではPC市場が衰退の一歩を辿るのは明らかだ。

●中古PCの台頭

 そうした中で興味深い動きが浮き彫りになってきた。中古PCの台頭である。

 一般社団法人情報機器リユース・リサイクル協会(RITEA)によると、2016年度の国内リユースPC(中古PC)の販売台数は、前年並の270万台となった。

 MM総研が発表した2015年度のPCの出荷台数は990万6000台。これらを合算すると、新品PCと中古PCを合わせた国内市場規模は1260万6000台で、市場全体に占める中古PCの構成比は21.4%となった。

 Windows XPサポート終了の特需があった2013年度は、リユースPCの比率は231万1000台で、市場構成比は12.3%であったが、2014年度は、PCの出荷台数が減少。前年比23.6%減の1260万8000台になったのに対して、リユースPCは前年比16.9%増の270万1000台と増加。構成比は17.6%に達していた。

 今回の調査では、リユースPCは前年並みで推移したものの、PCの出荷台数が21.4%減と縮小。初めてシェア20%を超えることになった。

 同協会では、使用済み情報機器の廃棄処理よりも、情報機器リユース取り扱い事業者に買い取ってもらった方が、経済メリットがあることや、中小企業を中心に、使用済みPCのデータ消去作業について自信を持てない企業が、データ消去サービスと装置買い取りをまとめて依頼するケースが増加していることで、安定してリユースPCが市場に供給される環境が整ってきたとしている。実際、販売された270万台のリユースPCのうち、39.5%が製造年度から3年以内のものであり、質の高い製品が流通されていることが分かる。

 「景気回復基調の中で、高性能化を目指した機器の早期買い換え需要が続いていることも、市場に質の高いリユースPCが流通している理由の1つ」という。PC市場の鈍化を埋めるところにまでは至っていないが、新たな潮流として注目しておきたい。

 だが、PC市場全体を俯瞰(ふかん)したとき、これからもPCの出荷は国内外で大きな成長は見込めないだろう。その中で、PCメーカーや、それを取り巻く周辺機器メーカー、ソフトウェアメーカー、量販店などは、どんな形でこれからのPCビジネスに取り組んでいくのかを熟考する必要に迫られているのは確かだ。

 長らくPCの機能を効果的に活用したり、PCでしか利用できないキラーアプリが登場したりということはなかった。今後、PCメーカーにとっては、どんなPCを作り、それを市場に投入することができるのかが鍵になるだろう。今まさにスマホゲーム「ポケモンGO」によってスマホの利用が促進されるように、PCにも新たなキラーアプリと言えるものが登場すれば、市場活性化につながるかもしれない。

 低迷しているPC業界においても、ポケモンGOのような起死回生の市場活性策が生まれることを期待したい。

(大河原克行)

最終更新:7月28日(木)6時38分

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