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「脱Excel」か「まだExcel」か――その選択のポイントとは?

ITmedia エンタープライズ 7月28日(木)12時49分配信

 業務部門が情シスに頼らず、自らデータ分析やリポート作成を行う「セルフサービスBI」。昨年ごろから一気に注目度が上がり、導入する企業が増えてきているものの、効果が上がるケースと上がらないケースに分かれてしまっているのが現状だ。

【画像:マイクロソフトの「Power BI Designer」は無料でダウンロードできる】

 「データの活用を考えるならば、情報システム部門としては、もはやセルフサービス型のBIを検討せざるを得ない、または取り組まざるを得ない状況にあると思います」

 こう話すのは、BI分野に詳しいガートナー ジャパンの堀内秀明氏だ。成功事例や失敗事例、そして製品も増え、ますます選定が難しくなっている「セルフサービスBI」と情報システム部門を取り巻く状況について、同氏に聞いた。

●情シスがセルフサービスBIに取り組むのは「宿命」

 企業の情シスが「セルフサービスBI」を検討せざるを得なくなっている理由として、データ分析の分野においては、業務部門が製品を勝手に導入してしまうケースが多いことを挙げる。

 「小規模であれば無料で使える製品も多く、業務部門としても気軽に使い始められるため、この傾向は今後も進んでいくでしょう。ユーザーが増えてくれば、情報システム部門も無視できなくなる。遅かれ早かれ、情シスがセルフサービスBIに向き合うのは”宿命”ともいえるでしょう」(堀内氏)

 セルフサービスBIによるメリットは「情報提供にかかる時間が短縮できた」「今まで帳票を作っていたのが作らなくてよくなった」などさまざまなものがある。

 特にデータの作成や分析を1つの部署で一元管理しているような企業の場合、業務部門が求める分析のスピードやレポートの量が増えていき、最終的にニーズに応えきれなくなることも多い。そのような企業にとっては、セルフサービスBIは魅力的なツールに映るだろう。しかしその一方で、Excelでデータ分析を行う企業も多いのは事実だ。堀内氏はその理由を次のように話す。

 「一般の人にまで広く浸透しているため、取引先ともデータをやりとりしやすく、使い方を解説する書籍も数多く出回っています。一元管理型のBIでカバーしきれないところをどうするかという観点では、これまでも、そしてこれからも、基本的にはExcelが中心でしょう。業務部門がBIのダッシュボードからデータをCSVファイルなどで切り出して分析しているというケースは多い。そこから脱するのか、まだまだExcelなのかという状況だと思います」(堀内氏)

●セルフサービスBIを検討する企業、2つのアプローチ

 データ分析ツールとしてポピュラーなExcelではあるが、多くの人が使えるツールであるが故に起こる問題もある。まずは、データの統制が取りづらくなる点だ。1つのデータにさまざまな人がコメントや操作を加えたものが散在し、複数のバージョンが混在している――というのはよく聞く話だろう。

 もう1つはリテラシーの問題だ。Excelに詳しい人間が難しい関数やマクロ、VBAなどを駆使して作り込んだデータは、リテラシーが低い人にとっては仕組みを理解できず、触れられないデータになってしまいがちだ。仮に管理者が異動でいなくなってしまえば、逆にそのExcelファイルが業務のボトルネックになりかねない。

 「例えば、営業のルールが変わって、マクロや関数を変えようとしてもどうしたらいいか分からない。数字を入力しようと思ったら条件に合わずに弾かれた、みたいなケースもあります。そんな状態のデータが、さも公式のものであるかのように使われてしまうのは、危険だと言わざるを得ません」(堀内氏)

 こういう状況では、専門チームがある程度のデータセットを作って、残りは業務部門に任せるという“いいとこ取り”の統制ができるツールとして、セルフサービスBIを検討するケースが多い。その一方で、これからデータ解析を始めようとしてセルフサービスBIを検討する企業もあるという。

 「情報システム部門が小さい企業では、情報活用まで手が回っていないところも多く、基幹系に直接接続してデータを手に入れているという企業も珍しくありません。『システムは基幹系しかないけどデータは分析したい、セルフサービスBIはどうだろう……』と検討するのがよく聞くケースです」(堀内氏)

 一定の段階までデータ活用が進んでいる企業と、これからデータ活用を始めようとする企業の両者が、似たようなツールに可能性を感じているのが現在の状況なのだ。しかし、そこで安易にセルフサービスBIを導入すると、大きなミスを招く可能性もある。

●セルフサービスBIの“落とし穴”

 デモンストレーションなどを見ると、セルフサービスBIは機能が豊富で、多くの人に使いやすそうに見えるが、実際のところはデータに対する知識が必要で、データを使って思考錯誤するような、いわゆる“パワーユーザー”に向くツールだ。あらかじめ分析する項目が決まっているような定型レポートを確認したり、そこから少し分析したりする程度なら、一元管理型BIの方が向いている。

 「これは実際にあった話ですが、セルフサービス型を核にして商品を選定した上で、それを全社展開すればいいだろうと考えた企業がありました。しかし、そうするととんでもないお金がかかってしまう。セルフサービスBIはユーザー数で課金するケースが多いです。仮に1ユーザーあたり10万円とすると、10人で導入するならまだいいですが、全社展開して1000人となると1億円です。

 このような場合、CPUライセンスが選択可能な一元管理型のBIツールを選択すると総費用を抑えられます。データ活用の環境を見直す際には、一元管理型とセルフサービス型の違いを理解し、それぞれ別に検討を進めたほうがいいとアドバイスしています」(堀内氏)

●独自路線を進む「Power BI」

 注目が集まるとともにプレイヤーが増えたBI市場だが、2015年にマイクロソフトも本格的にセルフサービスBI市場に参戦したこともあり、製品の選択肢は増え続けている。一元管理型BIとセルフサービスBI、両者はシナリオも違えば売り方も異なるが、マイクロソフトが提供する「Power BI」はさらに違うアプローチを取っていると堀内氏は解説する。

 「マイクロソフトはBIを単体で売ろうとは考えていないとみています。過去にはSQL Serverの付加機能としてBIを提供していた時期もありました。データベースを導入した流れで分析機能を付け、フロントのExcelまで含める“全部売り”です。今はPower BIをOffice 365の拡張機能という位置付けで提供しています。

 彼らからすれば、Power BI Designerを無料で提供するだけでは大きなメリットはありませんが、Designerでダッシュボードを作って社内で提供しようと思えば、自ずとOffice 365を使うことになります。マイクロソフトは『特別なBIツールを買わなくてもここまでできる』という見せ方をしているわけです」(堀内氏)

 Power BIと一般的なセルフサービスBIを比べると確かに機能に大きな差異はない。こうした製品を比較するときは、ツール自体や機能の比較に目が行きがちだが、それだけでは本質を見誤ると堀内氏は注意を促す。

 「Power BIを入れるか入れないかというのは、要するにマイクロソフトのOfficeという全体的なシステムに賛同するかどうかというのに等しいです。Office 365を使おうと検討しているなら、他のBIを見る前にPower BIを検討する方がいいですよね。表を作ってマルバツを付けて比較すればいい、という問題ではなくなってきているのです」(堀内氏)

最終更新:7月28日(木)12時49分

ITmedia エンタープライズ

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