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【相模原事件】「戦後最大級の大量殺人」再発防止は、どうなし得るのか

BuzzFeed Japan 7/28(木) 9:25配信

7月26日未明、神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人の障害者が刺殺される事件が起こった。逮捕された植松聖容疑者は「障害者は死んだ方がいい」と日頃から話していたという。

事件前の備えはどうだったのか。どのような対策を取ればよいのか。テロや危機管理を専門とする、日本大学危機管理学部教授の福田充さんに聞いた。【伊藤大地 / BuzzFeed】

――今回の事件が起こった背景をどう捉えるか。

自分の正当性を社会に訴えたいという政治性の面でテロリズム、そして障害者をターゲットとしたヘイトクライム、この2つの要素があります。

さらに容疑者の精神状態や、薬物、交友関係、多くの要素が絡み合った境界的な事例ですが、まずは容疑者本人の責任を問うべきで、簡単に社会が悪いという問題にすべきではない。

単なる自暴自棄犯とは一線を画すからです。例えば、2008年に起こった秋葉原通り魔事件では、犯人は人生がうまくいかない、だから周りも殺して自分自身の人生も破壊するつもりだった。

ところが、今回の植松容疑者は、衆院議長への手紙からもわかるように、自分は正義だと信じ、人を殺し、金も要求して、2年で牢屋から出せ、と生きるつもりでいる。歪んだ自己承認欲求や自己顕示欲などの自己愛がヘイトクライム、テロリズムへと駆り立てている。単純に労務環境、生育環境と簡単に結びつけるべきではないと思います。

――テロリズムというには主張が明確でない印象がある。

政治的主張からテロリズムを起こす人間であっても、もともとのきっかけは、自分が挫折した、人間関係がうまく構築できない、といった個人的要因であることが多いんです。オウム真理教も、欧州のイスラム系のテロにも同じ側面があります。

――ヘイトクライムとしては、どのように捉えられるか?

障害者に対しての人権配慮が国際的に定着しているので、障害者へのヘイトは社会問題になるほど大きなうねりにはなっていません。これには、ナチスドイツの優生学とナショナリズムが結びついた前世紀の反省がその背景にあります。

世界でこのニュースが大きく報じられるのも、前世紀的なヘイトクライムだから、という側面はあるでしょう。

この点でも社会の問題というよりは、彼自身の施設での就業経験や、個人的な挫折によるところが大きかったのだろうと思います。ヘイトが向かう先が前時代的、という意味で、世界的にも特殊な事例です。

――どうやって危機管理に取り組めばよかったか。

まずは「これは予測できた」という側面を洗い出すこと。
今回のケースで言えば、衆院議長に異常な手紙を送り、措置入院となった。おそらく、ここまでの対策は正しかったと思います。

問題はそのあとです。大量殺人について言及した人物を、退院させたタイミングは正しかったか。仮に正しかったとして、退院後に家族と暮らし、通院することになっていたのに、放置されていた。ここはフォローすべきだったでしょう。

事件を起こす場所も、殺す対象も明確に主張する人物がいた。この情報をもとに、どれだけ備えがされていたかは検証されるべきですね。

――設備や人員を足すのも、法整備も簡単ではない。

まず振り返るべきなのは、すでにある手続き、ルールがきちんと運用されていたか。DVやストーカー問題でも、制度はあるが運用できていなかった結果、人が死んでしまうケースがある。これは運用を見直すだけで、ある程度防げます。法整備や、コストのかかる設備はその次でしょう。

今回の事件も被害者の多さから、異常さばかりが強調されますが、だからといって何もできなかった、というのは短絡的。その時、持っていた情報でどれだけ対応できたかを振り返り、改善すべきです。

――大量殺人のような滅多に起こらない、しかし多くの命がかかっている問題に対して、どのように対策を考えればいいのか。

大前提は、ゼロリスク社会はありえないということ。とてつもないコストがかかりますし、監視カメラだらけ、鍵だらけの社会が幸せか、という議論もある。ゼロリスクはありえないから、どこまでやるかというバランスについて、議論と合意が必要なんです。
必要な対策は何か。それはインテリジェンス。情報に基づいて、必要な対策を取るということです。

何の脈絡もなく突然襲われる、という想定から始めるのではなく、襲撃予告がある、危険人物がいる、と情報を得たときに、徹底した事前対策を取る、という考えです。すべての障害者施設や学校で、警備システムを強化しようというのは高コストで無意味です。だから、情報をもとにリスク評価し、見えるリスクに柔軟に事前の対応をしましょう、ということですね。リスクの高いところから、お金をかけて人感センサーを取り付けるようなインフラ整備をし、人を増やしていけばいいのです。

滅多に起こらないから何もしなくていい、という極論。二度とあってはならないから、どれだけコストをかけてもリスクをゼロにする、という極論。

このどちらでもなく、その間を具体的に考え、冷静に話し合い、合意形成することが大事だと思います。

最終更新:7/28(木) 14:41

BuzzFeed Japan

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。