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マイナス金利で地銀はお陀仏

ニュースソクラ 7月28日(木)12時0分配信

苦境の地銀、安倍政権が命運握る

 今、地銀関係者が大量に買い込んでいる書籍がある。共同通信社の現役金融庁詰め記者・橋本卓典氏が上梓した「捨てられる銀行」(講談社新書)だ。金融庁の森信親長官に深く食い込んでいると言われる橋本記者が、森行政の神髄、とりわけ地域金融のビジョンを解いた本として話題をさらっているのだが、地銀関係者が注目するのは、そればかりではない。

 「森長官の背後には、官邸の菅義偉官房長官がいて、地方創生に非協力的な地銀は再編させるという意向を持っていると聞いている。安倍政権が地銀をどうしようとしているのか、そこが知りたい」(地銀幹部)というのだ。橋本氏の本にその糸口があると見ているわけだ。

 本来であれば政治とは一定の距離を置く地銀関係者が官邸の意向にことさらに敏感になっているのにはわけがある。アベノミクスの3本の矢のひとつ、日銀の異次元緩和で地銀の経営は青息吐息の状況に立たされているためだ。とりわけ日銀が2月に導入したマイナス金利は、地銀の経営を四面楚歌に追い込んでいる。

 「異次元緩和以降、イールドカーブは限りなく平たん化し、融資の利鞘はなきに等しいところにもってきて、マイナス金利の導入で、いまや20年物国債まで一時マイナス金利に沈んだ。国債に運用することは自殺行為のようなもの」(地銀幹部)という苦しい台所事情がある。加えて海外への運用も中国をはじめとする新興国経済を変調や英国のEU離脱を契機にする市場の混乱もあり、思うようにはいかない。

 それでも預金は集まり続けるが、地元経済は人口減少と高齢化に直面し、地元企業の資金需要も期待できない。いくら政府や日銀が個人や中小企業に融資を伸ばせと言っても限りがある。実際、マイナス金利導入以降、変動金利型のシンジケートローン(協調融資)では適用金利がゼロになるものの出ている。また、地銀の主力取引先である地公体融資の入札金利も0.1%まで低下しており、政府系金融機関への入札ではゼロ%が登場した。

 苦肉の策として地銀が手を出しているのが、これまで多くの投資家が敬遠してきたソフトバンク債や東京電力債などの高利回り社債だ。ソフトバンクは過大な有利子負債を抱え、東電は足元では福島第一原発の炉心溶融隠蔽問題が取り沙汰されているが、いずれも国債に対する上乗せ金利(スプレッド)が縮小しており、投資家の買い意欲は強い。行き場を失った地銀マネーがこれらの銘柄に流れ込んでいる。

 日銀が7月8日に発表した6月の貸出・預金動向(速報)では、国内銀行の月中平均の貸出残高は、前年同月比で2.0%増の432兆5147億円と低い伸びにとどまった。業態別には、都銀の伸び率が0.6%増(前月は0.9%増)、地銀・第二地銀は3.3%増(同3.4%増)と、地域銀行は相対的に高い伸びを維持しているようにみえるが、内実は東京などの大都市圏における不動産向け融資がほとんどで、地元での融資は伸びていない」(地銀幹部)というお寒い状況である。地銀の中には、預金を集めにブレーキをかけているところもあるほどだ。

 市場では、今月28、29日の日銀の政策決定会合で何らかの追加緩和策が打ち出されるのではないかと見られており、マイナス金利が深堀りされる可能性も囁かれている。資金需要が伸びない中、さらにマイナス金利が拡大されることになれば、「地銀はお陀仏」(地銀関係者)という怨嗟の声が絶えない。

■森岡 英樹(経済ジャーナリスト)
1957年 早稲田大学卒業後、 経済記者となる。
1997年米国 コンサルタント会社「グリニッチ・ アソシエイト」のシニア・リサーチ ・アソシエイト。並びに「パラゲイト ・コンサルタンツ」シニア・アドバイザーを兼任。2004年 4月 ジャーナリストとして独立。一方で、「財団法人 埼玉県芸術 文化振興財団」(埼玉県100%出資)の常務理事として財団改革に取り組み、新芸術監督として蜷川幸雄氏を招聘した。

最終更新:7月28日(木)12時0分

ニュースソクラ

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