ここから本文です

小野薬品の人気抗がん剤が問う新薬開発と医療費抑制

ニュースイッチ 7月28日(木)8時16分配信

不適切な利用で薬剤費がかさむ。年度末までに指針を策定へ

 小野薬品工業が2014年9月に発売した抗がん剤「オプジーボ」は、多くの患者が待ち望んでいた非小細胞肺がんなどの特効薬だ。十数年を費やし開発した画期的な新薬で、薬価が高水準に決まり、同社の急成長をけん引する。一方で政府は高騰する医療費の抑制の対応に迫られている。オプジーボの高い薬価にも意見は分かれる。新薬開発に膨大なコストをかける製薬会社、特効薬を使いたい多くの患者、医療費の抑制を求める政府、それぞれの立場を納得させる案の策定は至難の業だ。

 医療用医薬品市場ではオプジーボが話題になっているが、高額な医薬品全般に対する風当たりは15年以降、強まりつつある。まず15年12月、中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)で「特例拡大再算定」が16年度から導入されることが決まった。年間販売額が大きい医療用医薬品の薬価を最大50%引き下げる制度だ。

<「ソバルディ」がやり玉に>

 やり玉に挙がったのは、ギリアド・サイエンシズ(東京都千代田区)のC型肝炎治療薬「ソバルディ」。注射剤を使った従来療法に比べて半分以下の12週間で治療ができ、臨床試験では実に96・4%もの患者が治癒した。収載当初の薬価は1錠(1日分)6万1799・30円だったため、短期的な医療財政への影響が懸念された。

 16年4月には、高額医薬品は薬価収載自体を慎重に進めるべきだとの意見が出てきた。議論のきっかけはアステラス・アムジェン・バイオファーマ(東京都千代田区)の高コレステロール血症治療薬「レパーサ」。同剤はスタチン系と呼ばれる既存薬での治療効果が不十分な事例や、遺伝疾患である家族性高コレステロール血症を適応として同年1月に承認を受けた。

 だが4月13日の中医協総会では、臨床現場の医師が同剤を通常の高コレステロール血症患者に処方してしまう懸念が示された。薬価は1キット2万2948円であり、不適切な利用が続くと薬剤費がかさんでしまう。

 厚生労働省は用法に関する留意事項を発出して適正利用を促す旨を回答したが、議論は承認審査の仕組み自体に波及。中川俊男委員(日本医師会副会長)は「予想される薬価や市場規模を度外視している。

 不十分なデータで審査をしていると言わざるを得ない」と指摘し、抜本的な見直しを求めた。中川委員は6月22日の中医協総会でも検討の進捗状況を問いただしており、厚労省は対応を急がざるを得ない状況だ。

<製薬企業は“もうけすぎ”?>

 高額薬剤が狙われる背景には、製薬企業の“もうけすぎ”に対する批判がある。東海地方の市民病院の関係者は、「(医療に携わる)皆が貧しくなるなら耐えられるが、製薬企業はそうなっていない」と主張する。この関係者によると、病院の売上高経常利益率は高くて6―7%だという。だが大手製薬企業は15%以上になる例も珍しくない。

 日本製薬工業協会(製薬協)は4月の官民対話で、社会保障費の伸びを薬価切り下げで補い続けるのは難しいと主張した。だがその後も薬剤費削減の圧力に歯止めがかかる気配はない。「消費増税が先送りされ、社会保障費のパイが拡大しない中では製薬業界が負担を受け入れざるを得ない」(社会福祉法人幹部)。

 こうした中で厚労省が今後、高額薬の使用条件を厳格に定めた医療機関向け指針の作成に乗り出すという観測も出ている。オプジーボやレパーサがその対象になり、販売の伸びに影響する可能性もある。

1/2ページ

最終更新:7月28日(木)8時16分

ニュースイッチ