ここから本文です

排他性志向のビジネスモデル崩壊で製薬業界に異変、ライバル同士が手を組み始めた

日刊工業新聞電子版 7月28日(木)16時21分配信

武田薬品と第一三共が医療ITで連携

 大手製薬企業同士が手を携えて医療IT市場の拡大に乗り出した。武田薬品工業と第一三共は、ディー・エヌ・エー(DeNA)の協力を得て医療ITベンチャーとの資本・業務提携を模索するマッチングイベントを7月24日開催。他の医薬品メーカーも観客として招き、活発な議論を繰り広げた。“自前主義”に陥りがちだとされてきた日本の製薬業界も変わりつつあるようだ。(斎藤弘和)

 「どの企業も非常に専門的。その分野では、ほぼナンバーワンだと思う。勉強になった」。24日の同イベントでプレゼンテーションを行ったウンログ(東京都渋谷区)の田口敬代表取締役は、他の登壇ベンチャーをこう評価した。ウンログは排便の状態をもとに健康を管理するサービスを手がけ、NTTドコモの起業支援プログラムで受賞した実績もある。そんな田口氏から見ても参加者のレベルは高かったようだ。

 武田薬品の大塚勝タケダデジタルアクセラレータージャパンヘッドによると、「ベンチャーキャピタルやDeNA、第一三共などの力を借り、登壇者を厳選させてもらった」。結果としてキュア・アップ(東京都中央区)やメドケア(東京都新宿区)など、医師が医療現場での問題意識を基に立ち上げた企業も集まった。観客の関心は高く、プレゼン後に10問超の質問を受けていた会社もあった。

■排他性からの脱却
 「製薬会社は排他性を非常に大切にする文化があるが、それではこの世界で生きていけなくなった」。武田薬品の岩崎真人取締役は、イベント開催の背景をこう説明する。

 自社だけで新薬をつくれれば収益を独占でき、知見が流出するリスクも低い。だが創薬手法の多様化などに伴い、その難易度は上がり続ける。同社はこうした認識のもと、学術機関など外部と連携するオープンイノベーションに力を入れてきた。医療ITについても「IT系の人を中に入れないと、私たちの頭では分からない」(岩崎取締役)と考え、大塚氏を中途採用した経緯がある。

 とはいえ、ライバルの第一三共とイベントを共催し、かつ観客に同業他社を招くことに抵抗はなかったのか。大塚氏はこの問いに、「1社が専属契約をすると市場のパイが小さくなり、スタートアップ企業の成長の機会を奪う」と答えた。現時点では医療ITの世界を盛り上げることが先決と判断している。

■提携の具現化を
 間にDeNAが入ることで話が進んだ側面もあるようだ。南場智子会長は「オープンにやろう、と私が言い続けたことが効いたのかな」と振り返る。イベント終了時には「投資したい会社が複数あった」と笑顔で語った。

 南場氏は11年に配偶者の看病で社長を退いた経験があり、ヘルスケア事業に力を入れる動機にもなっている。大多数のビジネスパーソンにとって健康が重大な関心事である以上、製薬企業にとって潜在的な提携先はまだまだ多そうだ。今後はそれをどれだけ具現化できるかが試される。

最終更新:7月28日(木)16時21分

日刊工業新聞電子版