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投資家はサプライチェーン上の人権に目を光らせている

ニュースイッチ 7月28日(木)14時50分配信

英国の「現代奴隷法」が問う企業と取引先との“共通価値の創造”

 英国で2015年10月、「現代奴隷法」が施行された。英国で事業を展開し、連結売上高が3600万ポンド(約50億円)を超える企業は16年3月末以降、会計年度が終わるたびに宣言文書を開示する義務を負った。宣言文書には人身売買や強制労働への対応を書き込む。英国に子会社を置く日本企業のほとんどが対象となる。

 東京経済大学の寺中誠非常勤講師は現代奴隷の定義を「搾取する目的で個人の自由を奪い、占有ないし支配している状態」と説明する。「生産者本人に正当な対価が入らず、支配している他の主体がそれを得る」状態が搾取だ。強制労働が搾取に該当する。

 英現代奴隷法は自社だけでなく、取引先の労働環境も調べるように求めている。現代奴隷が確認されなくても、予防策がとられているかどうかもサプライチェーンを対象に調査し、宣言文書に盛りこむ必要がある。

<経営にリスクとメリット>

 英現代奴隷法が象徴するように、海外ではサプライチェーンを巡る人権問題に関心が高まっている。数年前、大手アパレルの生産委託先での児童労働や、IT企業の委託先での過酷な労働環境が問題視された。委託先と資本関係がなくても大企業が社会から非難される事態が起きている。放置すると不買運動に発展するため、サプライチェーンの人権問題は経営リスクとなっている。

 人権問題に取り組むとメリットも生まれる。富士ゼロックスは中国の取引先での従業員トラブルが原因で、生産が停止することが多かった。取引先でのストライキや放火によって部品供給が滞るためだ。それが現在、取引先と協力して労働環境の改善を進めた成果で、主力拠点の深セン工場は操業停止がなくなった。

 同社は07年、取引先に調査票を配布し、労働者への人権配慮や労働災害防止などの対策を採点する活動を開始。調達担当者が取引先を訪問した時にもゴミ集積所やトイレ、消火器、社員寮などを見て異常がないかを確認している。

 問題があれば同社の専門チームが現地調査に乗り出し、改善を助言する。取引先トップとも面談し、労働者に尊敬を払うなどの改善を促す。専門チームの訪問後、取引先でのスト発生は9割削減された。

 これまで問題があっても取引停止にした例はない。同社の調達本部中央調達部の多田順一部長は「押しつけではなく、ともに学び、ともに強くなる考え方がベース」と説明する。富士ゼロックスとの取引を継続できるので、人権問題への取り組みは取引先にも利点がある。

最終更新:7月28日(木)14時50分

ニュースイッチ