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“ポストVR”を見据え「触覚デザイナー」の育成に奔走する慶大准教授

ニュースイッチ 7月28日(木)15時10分配信

「見る」「聴く」」だけでなく相手に「触れたい」というニーズに応えたい

 2016年は「仮想現実(VR)元年」といわれる。ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)が相次ぎ製品化され、ゲームやレジャーなど幅広い分野で利用が始まるためだ。慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)の南澤孝太准教授は「VRが普及すると『見る』『聴く』だけでなく、相手に『触れたい』というニーズが必ず出てくる」と指摘する。

 こうした状況を見据えて、南澤准教授が研究テーマに掲げるのが、身体を通して得るさまざまな体験をデータ化し、インターネットなどを介して共有する「身体性メディア」。例えば、観客がスポーツ選手の視点で試合を観戦し、心臓の拍動や緊張感を共有するなどの体験が可能な次世代技術の開発を目指している。

 体験のデータ化などの際に重要になるのが、モノに触れることやボールを打つ衝撃などの感覚を体験できる「触覚技術」だ。南澤准教授が開発した「テクタイルツールキット」は誰でも簡単に触感を記録、再生できる。これまで2000人が“触感作り”に挑戦し、60万人が体験している。

また、つかんだ物体のバーチャルな動きを感じられるデバイス「グラビティ・グラバー」を開発。このデバイスを使うことにより低コストで触感を体験できる。

 研究の道に進んだきっかけは幼少期にある。千葉県浦安市で育ち、子どもの頃から地元にある東京ディズニーランドが好きで、「アトラクションを作る人になりたいと思った」。中学生の時には電子工作に打ち込み、大学でVRと出合い研究者の道を選んだ。

 慶大に赴任して以降、社会実装にも力を入れている。KMDは技術とデザイン、ビジネス、政策を一体的に考えて、社会実装を進める研究科。このため、政治や経済などの専門家と共同で研究する機会に恵まれた。

 今後、触覚技術関連のデザインを手がける「触覚デザイナー」の育成・認定に関する制度を立ち上げる考え。「CG産業が制作技術の開発からCGデザイナーの育成にシフトしたように、触覚に関してもデザイナーという職業を確立したい」。技術と社会デザインの両面から次世代メディアの創出に力を注いでいる。

<解説>
 「ポケモンGO」でAR(拡張現実)は多くの人が体験し、誰もが見聞きしたことのある技術になった。キャラクタービジネスとの相性の良さが実証され、ポスト・ポケモンを狙ったコンテンツ開発が進むはず。これでVRクリエーターが食べれるようになれば、次は“ポストVR”。触感デザインはその第一候補で、没入感の次の存在感や体感を増幅できる。これまではクリエイターなら技術に頼らず、作品の面白さで勝負となりがちだった。触感デザインが研究者とクリエーターのコラボでキラーコンテンツまでたどり着けば、技術開発とコンテンツ開発のあり方が変わる可能性もある。
(日刊工業新聞社科学技術部・小寺貴之)

最終更新:7月28日(木)15時10分

ニュースイッチ

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