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母と娘のドラマを描く感動作『めぐりあう日』監督が語る

ぴあ映画生活 7月29日(金)10時21分配信

『冬の小鳥』が日本でも人気を集めたウニー・ルコント監督が6年ぶりの新作映画『めぐりあう日』を完成させた。親から離れ、ひとりで外国に養子に出された少女を描いた前作に続いて監督が描くのは、生みの親を知らない主人公が複雑な現実に直面していく物語だ。

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ルコント監督は、9歳で自国を離れてフランスに養子に出され、パリ郊外で育った。前作『冬の小鳥』は、9歳の女の子がフランスに養子に行くまでのドラマが描かれたが、決して“自伝”ではなく、あくまで「自分に起こったことを題材にした特殊なケース」だという。「ですから、とても早い段階から2作目はフランスを舞台に、フランス人のキャストを起用して撮影したいと考えていました」

しかし、そこに存在しない親と子の孤独のドラマは、設定やカタチを変えて本作でも描かれている。新作では生みの親を知らない女性エリザが8歳の息子と共に港町ダンケルクに移り住み、まだ見ぬ“生みの母”の所在を求めて奔走し、やがて息子の学校で働く女性アネットに出会う。「前作はすべて少女の目線から物語を描きましたが、この映画では視点の幅を広げたいと考えていましたので、子だけでなく親の物語もしっかりと描こうと考えていました。さらにエリザの息子ノエの視点と、アネットの親の世代を描くことで、単に“母が子を捨てた”という影の部分だけを描くのではなく、“母が子を捨てた”ことが、4つの世代にどのような影響を及ぼしていくのかを描こうとしました」

興味深いのは、ルコント監督はこのドラマを“説明的なセリフ”を極力用いずに、俳優の繊細な演技や表情、美しい映像によって描こうとしたことだ。撮影を手がけたのは、フランス映画界を代表する撮影監督のキャロリーヌ・シャンプティエで、撮影時には1シーンごとに話し合いをして、イメージをじっくりと固めながら撮影したという。「私たちは“ムードブック”と呼んでいたのですが、具体的に雰囲気やイメージをふたりで持ち寄って話をしながら撮影していきました。もちろん、引用ではなく、想像の源といった使い方ですが、室内のシーンではエドワード・ヴィヤール(Edouard-Jean Vuillard)の絵画を見ましたし、ナン・ゴールディン(Nan Goldin)の写真も想像の助けになりました」

映画は、精細な描写を積み重ねながら、まだ見ぬ母を想い、真実を追いながら、同時に真実を受け止めきれないでいる女性の心のうちを丁寧に描きだしていく。このようなドラマは場合によっては重く沈んだものになりがちだが、本作は爽やかで心に深くしみるラストにたどり着く。「エリザにとって親は最初から不在ですから、いつだって無意識に“どんな親なのだろう?”と想像していると思うんです。さらに彼女には息子という“逃げられない現実”にも直面していますから、生みの親がどんな人なのか知りたいと思ってしまうのだと思います。私はこの映画で“想像から解放される”場面を描きたいと思いました。会う前は、いろいろと想像して、理想化して、空想して囚人のようになってしまうけど、現実を直視することで、そこから解放される。そのことも描きたいと思ったのです」

様々な出会いや、事件の果てに主人公エリザは、まだ見ぬ母の子として、子の親として、どのような境地に達し、新たな一歩を踏み出すのか? ルコント監督が6年をかけて紡いだドラマは再び、日本で多くの賞賛を集めるのではないだろうか。

『めぐりあう日』
7月30日(土)より 岩波ホールほかにて全国順次ロードショー

最終更新:7月29日(金)10時21分

ぴあ映画生活

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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