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「この映画を作らざるを得ない」奥田庸介監督が語る新作『クズとブスとゲス』

ぴあ映画生活 7月29日(金)11時47分配信

『青春墓場』シリーズが国内外の映画祭で高い評価を集めた奥田庸介監督の新作『クズとブスとゲス』が明日から公開になる。クラウドファンディングで資金を集めて製作された作品で、監督は次回作がカタチにならない日々に苦しみながら「この映画を作らざるを得ない」という想いで本作を完成させたという。

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奥田監督は、専門学校卒業後に『青春墓場』のタイトルがついた作品を3年連続で発表し、2010年にはゆうばり国際ファンタスティック映画祭のオフシアター・コンペティション部門グランプリを受賞。2012年には商業映画『東京プレイボーイクラブ』を手がけるが、その後は次回作を撮りたくても、撮れない状況が続いた。「今回の映画よりも、もう少し予算のかかる企画を進めようとしていたんですけど、誰も協力してくれなくて。私がやりたいことは決して“わかりやすい”ものではないですから、脚本を書いても、わからないと言われることが多かったんです。映画はビジネスとアートの中間のところにあるものですけど、自分はビジネスがイヤで映画をやっているのに……という葛藤があって、もがいていました」

そんなある日、監督は兄に呼び出され、自主制作で新作を撮ることを決意。結果的に資金はクラウドファンディングで調達することになったが、奥田監督は当初「抵抗があった」という。「みなさんが一生懸命に働いたお金を、俺の勝手に使うのは申し訳ないじゃないですか。でも、その気持ちを超える衝動があったというか、この映画を作らざるを得ない状況にあったんです」

映画は、女を拉致監禁しては裸の写真をネタにゆすりを続ける男、ヤクの運び屋から足を洗おうとするもあまりにもバカなので真っ当な職につけない男、その恋人で自己主張ができないためにドツボにハマっていく女が絡み合い、観客の予想もしなかった方向にドラマが転がっていく。

さらに本作には、奥田作品がバイオレンスと共に常に描き続けてきた“この場所からの脱出/逃走”というモチーフもしっかりと描かれている。「常に現状に不満があるというか、私は完璧主義者なんでしょうね。だから全部が完璧にいってほしいのに、そんなことはまずないじゃないですか。友人関係や人との付き合いも割り切れないことも多いし、俺の人生なんて後悔の塊なんで、本当は全部ほっぽり出して逃げたいんですよね。そういう想いが強烈にあって、だから、もし次に映画を撮るとしても“最後は逃げる話”ですし、完璧主義者の裏返しと言いますか、無責任な私の人生観が影響しているかもしれないです」

現在、多くの映画が公開されているが、作り手が“やむにやまれず”撮った作品がどれだけあるだろうか? 「これを撮るまでに“何で俺には映画なんだ?”って相当に悩みましたし、今も悩んでます。でも、俺から映画をとったら何が残るのか? 何も残らない気もしていて、せっかく生まれてきて、ただ生きて死ぬことのむなしさに向き合わなかったから、生きている意味はないわけで……現在も苦しみ中です」

『クズとブスとゲス』
7月30日(土)渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

最終更新:7月29日(金)11時47分

ぴあ映画生活