ここから本文です

社説[子宮頸がんワクチン]被害者への救済を急げ

沖縄タイムス 7月29日(金)5時0分配信

 子宮頸(けい)がんワクチン接種後の健康被害を訴える女性63人が27日、ワクチン接種を推奨していた国と、ワクチンを製造した製薬会社2社に損害賠償を求め集団提訴した。原告は23都道府県にわたり、沖縄からも17~21歳の3人が加わっている。
 厚生労働省は2009年10月、子宮頸がんワクチンを初承認。翌10年11月には接種の公費助成を開始した。13年4月からは沖縄はじめ全国で定期接種が始まり、小学6年生から高校1年生までの女子を対象に無料接種がスタートした。
 だが開始からわずか2カ月後、相次ぐ健康被害報告を受けて厚労省は、積極的な接種推奨を中止。その後、ワクチンと健康被害の因果関係の調査実施を表明したが、いまだ判明していない。
 被害を訴える多くは中高校生で発症している。健康な生活を送っていたのにある日突然、体中の痛みや吐き気など全身症状に襲われ、日常生活が困難になっている。進学や就職をあきらめた人も少なくないのに、治療法が分からない。若者たちの不安や喪失感はいかばかりかと思う。
 県内でもワクチン接種後に健康被害を発症し、治療を求めて県内外の病院を転々とする親子がいる。症状は一進一退だ。経済的負担も重く、時間の多くを治療に費やす日々に、10代の娘は「何のために生きているのか」と涙ながらに訴えているという。
 予防接種法では、定期接種で健康被害が生じた場合、医療費の自己負担分や手当が支給される。だが認定のハードルは高い。
■    ■
 県内では、子宮頸がんワクチン接種による健康被害が今年6月末までに28人報告されているが、医療費や手当の支給が認められたケースはない。この問題に詳しい亀浜玲子県議は、症例を診断する医師の少なさを理由に挙げる。「例えば健康被害の中には指定難病の一つギランバレー症候群と似た症状があるが、そもそも同症候群を診断できる医師は少ない」。琉球大学付属病院がこのほど県の協力医療機関に選定され、認定作業は緒に就いたばかり。亀浜県議は「ワクチンに副作用があること自体を知らない県民も多い。行政はまず情報を届けてほしい」と話した。
 承認から1年足らずで接種の公費助成が開始されたのに対し、副作用との因果関係はいまだ判明せず、救済は届かない-。集団提訴の背景には、日本の予防接種行政の大きな課題が横たわる。
■    ■
 この間に厚労省が公表した調査は、副作用の発生頻度について子宮頸がんワクチンとほかの予防接種との比較にとどまるなど不十分だ。現在は、ワクチンを接種したグループと接種しないグループの症状の現れ方を比較する疫学調査を実施している。
 しかし予防接種と副作用の因果関係を明らかにする調査研究が法律で定められておらず、現在の副作用報告は科学的な議論の土台となり得ないと指摘する専門家もいる。
 原因究明はもちろんだが、現実にいる被害者への早急な救済こそ必要だ。

最終更新:7月29日(金)5時0分

沖縄タイムス