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3Dプリンタ“ブーム”は終えんも、製造業の活用は着実に拡大へ

MONOist 7月29日(金)8時25分配信

 IDC Japanは2016年7月28日、東京都内で会見を開き、同日に発表した国内3Dプリンティング市場の2013~2015年の実績と2020年までの予測について説明した。2013~2014年にかけて注目を集めて市場が一気に拡大した3Dプリンタだが、2015年の3Dプリンタの国内向け出荷台数は前年比20.2%減の7925台、出荷金額では同32.5%減の141億円となった。

【2015年の国内3Dプリンタ市場のメーカー別シェアなどその他の画像】

 同社は、3Dプリンティング市場について、「3Dプリンタ」と「3Dプリンティング関連サービス」、「3次元造形材料」の3つに分けている。さらに3Dプリンタは、平均販売価格が50万円以下の「デスクトップ」、同3000万円以下の「スタンダードプロフェッショナル」、同3000万円以上の「プロダクションプロフェッショナル」に、3Dプリンティング関連サービスも、サービスビューローが行っている「3次元造形受託サービス」と、プロフェッショナル向け3Dプリンタを設置後にサービスサポートで発生する「3Dプリンタ保守サービス」に分けている。

 国内3Dプリンタ市場は、3Dプリンタブームが始まった2013年の3861台/115億円から、ブームの真っただ中となる2014年に9927台/208億円と一気に拡大した。しかし2015年は、7925台/141億円と大きく縮小する結果となった。特に、一般消費者向けに家電量販店などでも販売されていたデスクトップ市場の縮小が顕著で、2015年は出荷台数が前年比19.3%減の6300台、出荷金額が同40.9%減の9億2500万円となった。

 IDC Japanでイメージング、プリンティング&ドキュメントソリューション マーケットアナリストを務める菊池敦氏は、この急激な縮小の理由として“失望感”を挙げた。「3Dプリンタの造形物の限界が明らかになるとともに、操作に手間が掛かることも分かり、それらの情報が3Dプリンタの早期購入者からSNSなどで情報拡散された。ブームの当初にあった『何でも作れる』というイメージはなくなり、一般消費者の購買意欲が一気に低下した。今後もこの失望感が影響し、2016年以降もデスクトップ市場は減少するだろう」(菊池氏)という。

 同社は、国内のデスクトップ3Dプリンタの出荷台数が、2015~2020年に年平均で10.2%減少すると見込んでいる。2020年の出荷台数は3700台で、出荷金額も年平均で7%減少して6億4200万円になるとしている。

 なお2015年の国内デスクトップ3Dプリンタ市場におけるメーカー別シェアは、出荷台数ではXYZ Printing(XYZプリンティング)が44%となり、2014年から引き続きトップを維持した。ただし出荷金額では、Stratasys(ストラタシス)がXYZプリンティングと僅差で1位となっている。なお2015年は、中国企業であるTier Time Technology(ティアタイム)がシェアを伸ばしたという。

●企業向けのプロフェッショナル3Dプリンタ市場は成長へ

 デスクトップ市場とともに、主に企業が購入する高額なプロフェッショナル市場も大幅に減少した。2015年は出荷台数が前年比23.5%減の1600台、出荷金額が同31.8%減の131億8600万円となった。しかし菊池氏は「プロフェッショナル市場の減少は、デスクトップ市場とは異なり、多くの企業が2014年のブームに乗って先行投資した反動にすぎない。今後は製造業を中心に応用範囲を着実に広げ、市場も成長していく」と説明する。

 国内のプロフェッショナル3Dプリンタは、2015~2020年にかけて、出荷台数が年平均で8.2%、出荷金額が年平均8%成長すると見込む。2020年の出荷台数は2400台、出荷金額は193億9000万円になるという。

 2015年の国内プロフェッショナル3Dプリンタ市場におけるメーカー別シェアは、出荷台数でストラタシスが25%、ムトーエンジニアリングが20%、3D Systems(3Dシステムズ)が20%で並んでいる。出荷金額では様相が変わり、3Dシステムズが29%、ストラタシスが26%で、ムトーエンジニアリングは「その他のベンダー」枠に入ってしまう。また、ドイツのEOSやConcept Laser(コンセプトレーザー)といった1台当たり1億円以上する金属3Dプリンタのメーカーが入っている。

●成長が期待される3Dプリンティング関連サービスと3次元造形材料

 IDC Japanが国内3Dプリンティング市場で成長を期待しているのが、関連サービスと3次元造形材料だ。2015年の関連サービス市場は前年比62.1%増の118億3300万円、3次元造形材料も同77.3%増の85億4000万円となった。関連サービス市場は、3Dプリンティングサービスの認知と利用拡大に加え、2014年に設置されたプロフェッショナル3Dプリンタの保守サービスによって市場規模が押し上げられた格好。3次元造形材料は、プロフェッショナル3Dプリンタのユーザー企業の消費量増加によるところが大きい。

 関連サービスと3次元造形材料の市場は今後も拡大が見込まれている。2015~2020年の年平均成長率は、関連サービスが11.3%、3次元造形材料が28.5%に達するという。2020年の市場規模は、関連サービスが202億200万円、3次元造形材料が299億6900万円で、3Dプリンタ本体を上回ることになりそうだ。

 ブームの終えんにより、一般消費者向けが中心のデスクトップ3Dプリンタ市場は縮小するものの、企業ユーザーが導入を増やすプロフェッショナル3Dプリンタ市場と、それに付随する関連サービス、3次元造形材料の両市場も増えるため、国内の3Dプリンティング市場は成長を維持する見込みだ。2015年の市場規模は、3Dプリンタ市場が大幅に減少したにもかかわらず、前年比4%増の344億8600万円となり、2015~2020年も年平均15.3%で成長し、2020年には702億300万円に達するとしている。

 会見の後半で菊池氏は、今後の国内3Dプリンティング市場で期待できる事例として、医療/歯科分野の事例を紹介した。特殊な抜き型を使う義歯の生産プロセスを革新したデンタスや、歯科治療に使う器具の製造を従来の半日から2時間に短縮した徳島大学病院診療支援部、材料にハイドロキシアパタイトを使うインクジェット方式の造形によってチタンよりも人体埋め込みの親和性を高めた人工骨を開発したネクスト21などである。

最終更新:7月29日(金)13時19分

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