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米マクドが復活の兆し! 外食産業が注目する「朝食」事情

ITmedia ビジネスオンライン 7月29日(金)7時52分配信

 米国では密かに「朝食戦争」が勃発している。

 ファストフードチェーンやレストランなどが、次々と新しい朝食メニューを投入したり、プロモーションを展開するなど、顧客の争奪戦を繰り広げている。というのも、外食産業の新たな切り札として、「朝食」に熱い視線が注がれているからだ。

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 米国ではいま、朝食に対する新たな潮流が生まれており、今後「朝食戦争」がさらなる広がりを見せそうだと注目されている。

 このトレンドの波にうまく乗っているのが、マクドナルドだ。売り上げが低迷していた米マクドナルドは、2015年10月に朝限定のブレックファーストメニューの一部を終日提供するという大胆な決断をした。

 米マクドナルドはこれまで、レギュラーメニューとブレックファーストメニューを同時にオペレーションするのは困難として、完全に切り離して営業を行ってきた。しかし、売上低迷という危機的状況を打開するため、メニューの改革に乗り出したのだ。

 消費者側にしても、「朝食」を食べるのは朝だけに限らないし、ランチなどに食べたいブレックファーストメニューもある。マクドナルドの決定は、「朝食」の枠を超えるニーズに応える動きだ。

 この戦略が功を奏し、徐々に売り上げも回復傾向にあるようだ。米マクドナルドでは現在、ブレックファーストメニューが、売り上げの約25%を占める。ランチやディナーの売上が横ばいのなか、このブレックファーストの売り上げを伸ばすことでファストフード界の王者が復活の兆しをみせているのだ。

●レストラン業界も興味深い動き

 一方、もともと朝食を売りにしてきたレストラン業界も興味深い動きを見せている。1日当たりの平均売上の24%をブレックファーストメニューが占める米デニーズも、大きな改革を行ったばかりだ。

 その改革というのは、パンケーキのレシピをグレードアップしたことだ。新しいレシピのパンケーキは、2016年7月からメニューに投入された。

 この新しいパンケーキの最大の特徴は、厚みのある生地。パンケーキミックスに水を加えて作る既存のレシピとは違い、新鮮な卵とバターミルクを使うことで、50%フワフワ感がアップしている。ちなみに、新メニューの導入で材料費もそれなりに増加しており、新しいレシピは材料費が従来より500万ドル増にもなるという。

 それでも新しいレシピを提供するわけは、これまでごく平均的な朝食しか提供してこなかったデニーズが、そのままでは「朝食戦争」に生き残れないことを認識しているからだ。「普通においしい」程度では、顧客を満足させるのは困難になりつつあり、まだ余力のあるうちに生き残りをかけた朝食メニューの改革に取り組む必要性があった。

 デニーズではさらに、主力メニューであるパンケーキの改良に加え、2026年までに使用する卵をケージ・フリー(放し飼い)で育てた鶏の卵に切り替えていくことを発表している。

 朝食をめぐる変化は外食産業以外にも広がっている。かつて自宅でのブレックファーストの定番として大人気だった「シリアル」にも変化が見られる。

 米国でのシリアルの消費量は、過去10年下がり続けている。2005年には約1億5500万トンが消費されていたが、2015年までに2000万トン以上減っている。

 その背景には、朝食の選択肢が増えていることがある。近年では、ヨーグルトやバータイプの商品(ドライフルーツやナッツ、プロテイン・バーなど)に加え、グラノーラなどのハイエンドな商品が人気だ。さらに健康志向な人たちにはスムージーが選ばれる。

 また、ファストフード店に行けば、値段が安くて手軽に食べられる朝食がある。朝の慌ただしい時間にわざわざ自宅で朝食を食べる必要はないし、若い人の間では、食べたあとに食器を洗ったり片付けるのが面倒だとの声もある。

 そんなことから、シリアルを食す人が減少しているのだ。ただそんな時代の変化に、シリアルメーカーも新しいアプローチを試みている。

●どんなふうに朝食が変化していくのか

 シリアルの生みの親で業界大手のケロッグは、2016年6月にニューヨークシティのタイムズスクエアにカフェスタイルのダイニングをオープンした。この「Kellogg's NYC」では、定番のシリアルに新しいツイストを加えた朝食メニューを終日提供している。

 このダイニングで最大のウリは、地元の人気スイーツ店「Milk Bar」のオーナーで、有名パティシエのChristina Tosiとコラボした個性派シリアルだ。抹茶やレモンゼストなどがトッピングされた、ちょっとファンシーなシリアルやデザートが提供されている。

 ケロッグの試みは、「朝食の定番」という枠を超えて、シリアルの新たな魅力を発信する場所としてブームを作り出せるか、今後の展開が興味深いところだ。

 時代の変化とともに朝食への意識が変わりつつある中で、ファストフード店からシリアルメーカーまでが工夫を凝らして「朝食」に力を入れている。

 この「朝食戦争」はこれからさらに広がりを見せる可能性がある。どんなふうに朝食が変化していくのか、その行方に注目だ。

(藤井薫)

最終更新:7月29日(金)7時52分

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