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IoT無線の主役争う? LPWAとWi-Fi HaLow、完全競合の可能性も

EE Times Japan 7月29日(金)9時54分配信

■進化するWi-Fi

 現在の主要なWi-Fi規格は、スマートフォンなどでの通信向けのIEEE 802.11ac(2.4GHz/5GHz帯)の他、4Kや8Kの映像など大容量のデータを高速で伝送できる60GHz帯近距離無線通信向けの「WiGig(IEEE 802.11ad)」、さらに、サブギガヘルツ帯を使い、低消費電力で長距離通信を行うIoT(モノのインターネット)向けの新規格「HaLow:ヘイロー(IEEE 802.11ah)」がある。

【補完関係にある802.11acとLTEに比べ、802.11ahとLPWAは完全な競合になる可能性があると、小林氏は述べる】

 同イベントに登壇した、Wi-Bizの会長である小林忠男氏は、用途によって明確に住み分けが図られている上記3つの規格に触れ、「Wi-Fi Allianceは、世の中の需要と動向を見ながら無線システムの開発をしている」と述べる。「Wi-Fiの進化によって、パブリックな空間でもプライベートな空間でも、よりWi-Fiを使いやすくなるだろう」(同氏)

■LPWAとは完全な競合関係か

 「ただし、いろいろと課題もある」と小林氏は続ける。その1つが802.11ahだ。IoT向けのネットワークでは、SigFoxやLoRaなどのLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークが拡大している。3GPPでは、NB(Narrow Band)-IoTなどセルラーIoTの標準化が最終段階に入っている。小林氏は「802.11acが、セルラーネットワークのオフロードなど、LTEとうまい具合に補完関係にあるのに対し、SigFoxやLoRa、NB-IoTは、802.11ahと完全な競合関係になってしまう可能性がある」と述べる。

■LTE-UやMulteFireへの懸念

 さらにもう1つの課題として、4Gベースの無線通信を5GHz帯で使用する「LTE-U(LTE Unlicensed)」「LAA(License Assisted Access)」「MulteFire」の存在がある。これらは全て、4G並みの性能のネットワークを免許不要の5GHz帯で実現しようというものだ。

 Wi-Fi通信には2.4GHz帯と5GHz帯が使われているが、Wi-Fi Allianceは2.4GHz帯が混雑していることから5GHz帯への移行を進めている。小林氏は「5GHz帯は空いているといわれているが、都心部ではどんどん周波数が使われて足りなくなりつつある。そういった状況の中で、4Gベースのネットワークも使われることになれば、果たしてWi-Fiが健全な発展を遂げていけるのだろうかという懸念が生じる。この点は今後、しっかりとした議論が必要なところだ」と強調した。

 「IoT時代には、キャリアが構築する高品質なIoTネットワークと、公共の場や企業、家庭で、Wi-Fiによって構築されるパブリックおよびプライベートなIoTネットワークの両方が必要になる。SigfoxやNB-IoT、HaLowなど、どれが勝つのか、という視点ではなく、何をどこで使っていくかという視点で検討することが重要だ」(小林氏)

■「Wi-Fi CERTIFIED ac」の新機能「Wave 2」

 Wi-Fi Allianceは「2016 Tokyo Wi-Fi Summit」に併せて記者説明会を開催し、802.11acをベースに相互互換性を確認する認証プログラム「Wi-Fi CERTIFIED ac」の新機能「Wave 2」を紹介した。Wave 2は、次の4つの技術によって、従来の「Wave 1」に比べて約3倍(理論値)のスループットを実現できるとする。

・マルチユーザーMIMO(MU-MIMO):複数のデバイスに同時にデータを送信可能(従来は、まずAに送信、次にB、次にC、といったように順に送信)
・160MHzの帯域幅:従来は80MHzだった帯域幅を最大160MHzに拡張
・4つの空間ストリーム:空間ストリームのサポート数を、従来の3つから4つに増加
・5GHz帯でのサポートを拡大:5GHz帯で利用できるチャンネルを増加し、干渉と混雑状態を緩和

 Wave 2の認定プログラムは2016年6月29日(米国時間)から正式に開始しているが、Wave 2に対応した製品は、認定プログラムがドラフト段階だった時から市場に投入されている。例えばSamsung Electronicsの「Galaxy S7」はWave 2に対応している。

 Wave 2に対応し、相互運用性の認定向けテストベッドに選定されたチップセットやレファレンス設計は、以下の通り。

・Broadcom「BCM94709R4366AC」
・Marvell「Avastar A88W8964」
・MediaTek「MT7615 APリファレンスデザイン」「MT6632 STAリファレンスデザイン」
・Qualcomm「IPQ8065 802.11ac 4ストリームデュアルバンド」「デュアルコンカレントルーター」
・Quantenna Communications「QSR1000 4x4 802.11ac Wave 2チップセットファミリー」

 Wi-Fi Allianceのマーケティング担当バイスプレジデントと努めるKevin Robinson氏は、Wi-Fi市場における2つのトレンドとして「コネクテッドデバイスの増加」と、高精細な動画など容量が大きい「リッチコンテンツの増加」を挙げた。同氏は、Wave 2によって、“大容量かつ多様なコンテンツのスムーズな伝送”というユーザーの強いニーズに応えられるとし、Wave 2の認定プログラムが正式に始まったことで、Wi-Fi Allianceの最も重要な仕事である「Wi-Fiデバイス間の相互運用性の確保」が、より強化されると述べた。

 なお、LTE-UやLAA、MulteFireについて、記者からは「Wi-Fi Allianceは、これらの規格に反対する立場にあるのか」という質問があったが、Robinson氏は明確には回答せず、「Wi-Fi Allianceの活動の焦点は、ユーザーがより使いやすいWi-Fi環境を整えることにある」と述べるにとどまった。ただ、Wi-Fi Allianceは2015年に、LTE-UとLAAについてより多くの情報を開示するよう、FCC(米国連邦通信委員会)に要求している。

最終更新:7月29日(金)9時54分

EE Times Japan