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【インタビュー】シンセイナム「正しいテンポを見極めないといけない」

BARKS 7月31日(日)20時5分配信

デビュー・アルバム、『エコーズ・オブ・ザ・トーチャード』をリリースするエクストリーム・メタル・バンド、シンセイナム。まずはその参加メンバーを見て頂きたい。

◆ザ・デッド・デイジーズ『メイク・サム・ノイズ』オフィシャルページ

・フレデリク・ルクレール(ドラゴンフォース):ギター、ベース、シンセ、ヴォーカル
・ジョーイ・ジョーディソン(元スリップノット、ヴィミック):ドラム
・アッティラ・シハ-(メイヘム、SUNN 0)))):ヴォーカル
・ショーンZ(ドス、キマイラ):ヴォーカル
・ステファン・ビュリエ(ラウドブラスト):ギター
・ハイモット(セト):ベース

そうそうたる面々が揃っている、まさにオールスター・バンドと言うべきバンドだ。事の発端は、ドラゴンフォースのフレデリクによるソロ・プロジェクト構想からスタートしたものだ。その後元スリップノットのジョーイ・ジョーディソンと意気投合、そしてあっという間にエクストリーム・メタル界のスーパースターが集うこととなった。今回はドラムを担当した元スリップノット、現ヴィミックのジョーイ・ジョーディソンに話を聞いてみた。

取材・文:川嶋未来/SIGN
Photo by Peter Just

──アルバム・リリース、おめでとうございます。

ジョーイ:どうもありがとう。君も参加してくれて良かったよ。(注:「アーミー・オブ・ケイオス」のコーラスに参加させて頂きました。)

──そもそもドラゴンフォースのフレデリクとはどのようにして知り合ったのでしょう。

ジョーイ:スリップノットとドラゴンフォースは一緒にツアーをしたことがあるんだ。<メイヘム・フェスティヴァル>というツアーでね。随分前のことだけど。スリップノットとドラゴンフォースの2バンドだけの特別なショウもやったよ。それでバックステージなどで会っているうちに、だんだんお互いどんなバンドが好きなのか、どんなバンドから影響を受けているのかがわかってきた。一つ大事なことは、人を外見や目に見えている情報だけで判断すべきではない、ということだよ。(ドラゴンフォースというパワー・メタルのメンバーであるにもかかわらず)フレデリクは、俺と同じようにエクストリーム・メタルが大好きだということがわかったんだ。俺自身も長い間ブラック、スラッシュ、デス・メタルのプロジェクトをやるというアイデアを温めていて、一緒にやってくれそうなメンバーを探していたんだ。そしてフレデリクに出会って、その後もコンスタントに連絡をとりあう仲になって、そのまま彼が曲を書いて、俺がバンド名を決めて…とトントン拍子に話が進んでいった。一緒にプロジェクトをやろうなんていう話をして、結局全然話が進まないというケースはよくあるだろ。でも俺たちはきちんとミーティングを重ね、お互いのアイデアを交換しあって、プロジェクトを実現させたんだ。このプロジェクトはやりたいというよりも、やるべきであったんだ。もちろんやりたいことでもあったけどね。俺もフレデリクも、それぞれインタビューでブラック、スラッシュ、デスなどのエクストリーム・メタルのプロジェクトをやりたいってずっと言ってたんだよ。だからフレデリクが曲を送って来たとき、俺はすぐに飛びついだ訳さ。何も考えずに、すぐにスタジオにドラムをセットしたよ。

──フレデリクから送られてきた曲を聴いた第一印象はいかがでしたか。

ジョーイ:まず思ったのは、実際にレコーディングを始める前に、ドラムのリハーサルをしすぎないようにしようということだ。スリップノットの時のように、バンド形態でリハーサルをする訳ではないからね。今回は曲を受け取ると一人でスタジオに入り、1曲につき4-5パターンのドラミングを考えた。まず一度通して演奏してみて、それを聞き返す。だいたいこの第一テイクが青写真になる。第3テイクくらいになると、曲の全貌が完全にわかってくる。そして第4テイクがメインのテイクになるんだ。もちろん誰でもやっているように、ミスったシンバルをパンチ・インしたりもするけど、俺は基本的に曲を頭から最後まで一気に録るスタイルが好きなんだ。俺は地下室ではなく、スタジオでドラムを叩く方が好きだ。雰囲気が全然違うからね、集中もできるし。そしてテクニック的な問題はないか、ファンがどのようなものを求めているか、この曲はどのようなサウンドになるべきなのか、など本当に色々なことを考える。

──バンドのメンバーが住んでいるところがバラバラなので、一人でリハーサルをし、レコーディングをするというのは難しかったのではないですか。

ジョーイ:いや、そんなことはなかったよ。一つのことにきちんと集中すれば、必ずうまくいくんだ。もしそれをお仕事だと感じたのなら、難しくなるんだろうけどね。俺はこれをお仕事だとはまったく思わなかったから、難しいとも感じなかった。俺がレコーディングやリハーサルで難しいと感じるのは、俺自身のプレイではなく、曲のサウンドは正しいか、曲のテンポは正しいか、という判断だ。スタジオの音響、ドラムの音色は正しいものになっているか、それから曲のテンポというのは超重要さ。テンポが正しくなければ、曲として成立しないんだ。例えば「アーミー・オブ・ケイオス」は、もし5BPMでも速く演奏したらアウトだ。テンポというのは非常にデリケートなんだよ。滑らかという表現をすれば良いかな。例え速く激しい曲調のものでも、スムーズに聴こえなくてはいけない。肩に止まっている蝶のような感じ、とでも言えばいいかな、少しでも度をすぎればリフは飛んでいってしまう。ブラストも速すぎてはいけないし、へヴィなパートも遅すぎてはいけない。BPMというのはとにかくこの種の音楽にとって重要なんだ。いや、すべての音楽にとってと言うべきかな。俺は以前から、正しいテンポを見極められるよう、色々と研究をしているんだ。

──今回あなたは作曲/作詞にも関わったのですか。

ジョーイ:いや、曲はすべてフレデリクが書いた。ドラム・パートは俺が考えたけれど。作詞はアッティラとショーンZがやったよ。

──フレデリクからドラム・パートについて、何か指示はありましたか。

ジョーイ:主に曲構成を示すために、ドラムマシンを使ったデモは送られてきた。それらはあくまで曲の速さなどを示すガイドラインだけだよ。だけど素晴らしいガイドラインではあった。俺は例えクリックに合わせて叩く場合でも、意図的に突っ込んだり、もたったりするようにしている。そのほうがオーガニックになるからね。とにかく大切なのはテンポさ。さっきも言ったけど、「アーミー・オブ・ケイオス」は3BPM速かっただけで、あのグルーヴは失われてしまうだろう。ヴォーカルも正しく乗らない。テンポというのはドラムだけの問題ではないんだ。テンポが正しくなければ、例えばヴォーカル・パートすら殺してしまう。キーボードについても同様だ。だから俺はこれが正しいテンポだと思えるまで、2BPMずつテンポを上げたり下げたりしてみたんだ。それでフレデリクに、このテンポでどうかって確認した。彼が今回ディレクターの立場だったからね。

──シンセイナムというバンド名は、あなたが考えたんですよね。

ジョーイ:そうだよ。

──どのような意図でこの名前にしたのでしょう。

ジョーイ:それはとても興味深い質問だ。例えばキーボードやギターのメロディ、あるいはヴォーカル・ラインなどがどこからともなく降ってくることってあるだろう。フレデリクから送られてきた曲を聴きながら、ドラム・パートを考えていた時のことなのだけど、一体どこからこの名前を思いついたのか、まったくわからないんだ。凄く夜遅くて、曲を聴きながら何となく紙をペンでこすっていた。目を閉じていて、ほとんど瞑想状態だったのだけど、その時に突如、Sin、Insane、Sanumという言葉が浮かんだんだ。これだ、という感触があったので、これを何通りかの方法で書きとめて、フレデリクやアッティラ、ショーン、ステファンにメールしてみたんだ。果たして歌詞のコンセプトに合うだろうか確認したかったのだけど、皆これが良いと賛成してくれた。

──「スプレンダー・アンド・アゴニー」のPVが公開になりましたが、これはほとんどホラー映画ですよね。撮影はどのような感じでしたか。

ジョーイ:実はとてもリラックスしたものだったよ。皆が何をすべきかきちんと理解していたしね。とても時間はかかったけど、凄く、何というのかな、ケイオスだったよ。このビデオに関わった人間全員が暗くて不吉で病的な雰囲気で、これはつまりこのビデオが求めるものを皆が理解していたということさ。バンドとしてやろうとしていることが結実しているのを見るのは、とても素晴らしいことだった。メンバーが皆メイクアップをして、まったく新しいものが生み出されているという感じだった。言葉で説明するのは難しいけど、すべてが暗くて病的だったと言うか。皆が誰も見たことないようなゾーンにいる感じだった。フレデリクやショーンがあんなメイクアップをしているところを見たことがなかったし、とにかくすべてが病的でイーヴルだったよ。

──撮影はどこで行われたのですか。

ジョーイ:ブダペストだよ。アッティラの住んでいるところ。彼がほとんどの手配をしたんだ。とにかく凄まじい撮影だったね。

──あなた自身もホラー映画ファンですよね。

ジョーイ:ああ、大好きだよ。

──おすすめのホラー映画を教えてもらえますか。

ジョーイ:マーダー・ドールズのインタビューでよくおすすめを聞かれたな。たくさんありすぎるよ。

──ではトップ3をお願いします。

ジョーイ:トップ3か。まずは『ファンタズム』だね。あとは『エクソシスト』。それから『ネクロマンティック2』。

──パート1ではなく、2の方ですか。

ジョーイ:パート1も素晴らしいけど、パート2はさらに一つ上のレベルだよ。『ネクロマンティック』はホラー映画であるかは微妙だけどね。サイコロジカル・ファック・アップとでも言うべきものかな。

──ではあなたのエクストリーム・メタルのトップ3を教えてください。

ジョーイ:シンセイナムのメンバーのバンドを挙げることになるけど、メイヘムの『De Mysteriis Dom Sathanas』。あれは最強さ。それからスレイヤーの『レイン・イン・ブラッド』。3枚目はどうするかな、難しいな。エクストリーム・メタルだろ。ちょっと待ってくれ。きちんとしたものを選びたいからね。さっき挙げた2枚はいつも変わらないんだけど、他は変わるんだよな。候補はたくさんあるけど、よし、エクストリーム・メタルとは言えないけど、さっきの2枚と対になるやつ。これはもはやメタルでも無いかもしれないけど、Mr.Bungleのファーストあるいは『Disco Volante』。それからニューロシスの『Times of Grace』か『Through Silver in Blood』。

──シンセイナムの今後の予定はどうなっていますか。ツアーなどの予定はありますか?

シンセイナム:とりあえずビデオも公開になったところで、今はインタビューなどをたくさんやっているところだ。ツアーについてもぜひやりたいと思っているところだ。そのためにきちんとしたクルーやプロダクションが必要だしね。メンバー全員他のバンドやプロジェクトがあるので、時期もきちんと選ばなくてはいけない。

──では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

ジョーイ:アリガトウ。俺のキャリアをずっとサポートしてくれてありがとう。シンセイナムをサポートしてくれてどうもありがとう。『エコーズ・オブ・ザ・トーチャード』がリリースされるので、早く日本に行けることを期待しているよ。サンキュー・ヴェリー・ヴェリー・マッチ!

公開になっているPV「スプレンダー・アンド・アゴニー」を見て頂ければわかる通り、シンセイナムは全盛期のMorbid Angelなど、90年代初頭の正統派デス・メタルを継承しているバンドだ。ドラゴンフォースという非常にメロディックなパワー・メタル・バンドのメンバーによるエクストリーム・メタル・バンドということで不思議に思う人もいるかもしれないが、インタビュー中ジョーイも語っている通り、フレデリクは大のエクストリーム・メタル・マニアなのだ。

元スリップノットのドラマーにより、本格的なエクストリーム・メタル・バンドとしても非常に興味深いシンセイナム。デス・メタルと言っても、シンセイナムのそれは決して聴きにくいものでも難解なものでもない。曲間はホラーのサントラのような小品で埋め尽くされ、アルバム全体として映画を見ているかのような統一感が生み出されている。フレデリクの「昼間の顔」を思い起こさせるようなメロディックなギター・ソロの数々も耳を引く。エクストリーム・メタル・ファンはもちろん、ドラゴンフォースやスリップノットのファンも、ぜひともチェックしてみて欲しい。

シンセイナム『エコーズ・オブ・ザ・トーチャード』
2016年7月29日 世界同時発売
【CD】¥2,500+税
1.マテリアリゼーション
2.スプレンダー・アンド・アゴニー
3.エクスコミュニケア
4.インヴァーテッド・クロス
5.マーチ
6.アーミー・オブ・ケイオス
7.リデンプション
8.デッド・ソウルズ
9.ララバイ
10.ファイナル・カース
11.コンデムド・トゥ・サファー
12.リチュアル
13.サクリファイス
14.ダムネイション
15.ザ・フォーガッテン・ワン
16.トーメント
17.アンファング・デス・アラプトラウムス
18.ミスト
19.エコーズ・オブ・ザ・トーチャード
20.エンプティネス
21.ゴッズ・オブ・ヘル
《日本盤限定ボーナストラック》
22.ディジェネレーション
23.キング・オブ・ザ・デスパレート・ランズ

【メンバー】
フレデリク・ルクレール[ドラゴンフォース](ギター/ベース/シンセサイザー/ヴォーカル)
ジョーイ・ジョーディソン[ヴィミック/元スリップノット](ドラムス)
アッティラ・シハー[メイヘム](ヴォーカル)
ショーン・Z[ドス/キマイラ](ヴォーカル)
ステファン・ビュリエ[ラウドブラスト](ギター)
ハイモット[セト](ベース)

最終更新:7月31日(日)20時5分

BARKS