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日雇い労働、ウーバー、Airbnb 共通するのは?

ニュースソクラ 7月29日(金)12時1分配信

ギグ・エコノミー、日本でも育つか?

 あまり聞かない言葉だが、米国ではかなり流行している言葉にギグ・エコノミーがある。

 ギグとは、「単発の仕事」といったような意味であり、ギグ・エコノミーとは、専門的な分野で単発の仕事を請け負う経済の仕組みをさす。例えば有名なウーバー(Uber)では、アプリを介してオンライン・プラットフォームで買い手、売り手が直接、単発的に契約を結び、マイカーでお客を運ぶ運転手は20%を手数料として払って収入を得る。これが典型的なギグ・エコノミーである。

 また、空いている部屋を宿泊に供するエア・ビーアンドビー(Airbnb)、プログラミング、法律業務などの専門職サービスを提供するUpworkなどもギグ・エコノミーの範疇に入る。最も高度な単発的な仕事の請け負いでは、ビジネススクールを卒業する優秀な学生が企業から経営コンサルティングの仕事をゆだねられ、ボストンコンサルティング、マッキンゼー並みの高度な仕事をしている例もあるようだ。

 従来、このような単発の仕事を請け負うのは建築現場の日雇い労働者などの例が多かったが、上記のように最近の米国では、インターネットの発展を通じて働きたいときに好きな仕事を請け負う動きが広まっている。いわゆるフリーランスの雇用者は5,400万人、全体の34%と推計されている。米国雇用統計で労働力化率が長期に亘って低下してきたのは、ギグ・エコノミーの広がりが効いているかもしれない。

 こうした一方で、中産階級の仕事は、台頭する中国製品に職場を奪われ、減り続けている。さらに今後20年のうちには人工知能(AI)に工場労働、サービス分野の仕事が侵食されて、中産階級の仕事は現在の半分に落ち込むとも予想されている。それに代わり、FormW-2と呼ばれる源泉徴収される会社勤めのサラリーマンが減り、オンライン・プラットフォーム経由で仕事に就くフリーランスのウエイトが増すことであろう。

 いまやGMを超える時価総額に達するウーバーでは、まず、名前、クレジットカード番号など簡単な情報を登録して利用を始められる。スマホにより数分で車を呼び寄せられる。利用者によって評価されてサービスの悪いドライバーははじき飛ばされるからドライバーもサービスに努める。

 一方でドライバーにしてみれば、まず子供を学校に送ってからアプリをオンにして仕事を始めるなど自由度を確保できる。またマクロ的に見れば、平均では一日1時間、全体の平均で4%に過ぎない車の稼働率が、ウーバーで他人を乗せて稼働すれば稼働率は二倍、三倍になる。大胆に推計すれば自動車の台数は半分以下で済むかもしれない。

 余談だが、人工知能(AT)による自動運転が出来れば運転手すらいらなくなり、運転手も失職するのだろうか。車同士がぶつからないのであれば安全のため鋼鉄で作っている車がプラスティック製になるのかといったこともあながち夢想とばかりは言えない。話がそれたが、ウーバーを頼む顧客からすれば、タクシーの半値ほどですぐに来てくれるとか、場合によっては黒色の大型ベンツを指定して抱え運転手を雇った気分にもなれる、と満足度は高まる。

 企業側から見れば請負いであるので健康保険や年金負担がいらないというコスト面の問題に加えて、優秀な人材を単発で雇い入れることができれば、新たなプロジェクトを能力未知数の正社員で実行するといったリスクが低減するかもしれない。最低限の正社員とあとは弾力的な雇用形態の請け負いで事業を進めていくのがギグ・エコノミーの将来の姿かもしれない。

 ただ米国でもギグ・エコノミーの進展について手放しで歓迎しているわけではない。大統領候補となったヒラリー・クリントンは昨年の演説の中で「ギグ・エコノミーはワクワクする経済を創造して革新的なイノベーションを起こすかもしれない。しかし、同時に(団体交渉権などの)労働者の保護については大きな疑問も残る」と慎重なスタンスを示していた。明暗両方の側面があるのも事実だ。

 さて、わが国でギグ・エコノミーは進展するだろうか。タクシーの運転手には二種免許が必要であり、民泊についても東京、大阪の国家戦略特区で認められるようになったとはいえ、6泊7日以上と制限が厳しい。ギグ・エコノミーを制限し続ければ、新しいビジネスの芽を摘んでしまう。諸規制を大幅に緩和してギグエコノミーという新しい挑戦により経済の活性化を図るべきだと思う。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:7月29日(金)12時1分

ニュースソクラ