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ポストスマホへの布石?村田製作所がソニーの電池事業を買収する狙いは

ニュースイッチ 7月29日(金)7時41分配信

M&Aは成長に向けての重要なステップ

 村田製作所がソニーの電池事業を2017年3月をめどに買収する。買収額は数百億円とみられる。モバイル機器メーカーへの広い販路や生産技術力を生かし、リチウムイオン二次電池事業を拡大。注力分野のエネルギー関連事業の中核に位置付ける。その狙いはどこにあるのか。

 買収交渉は4月頃からはじめたという。資産査定などを経て10月中旬の契約の締結を目指す。それにしてもスピード感がある。

 ソニーの電池事業の16年3月期売上高は約1600億円。モバイル機器向け二次電池事業は韓国勢などとの競争が激しく、赤字体質が続く。事業売却や他社との統合も度々、検討されてきた。

 村田は積層セラミックコンデンサーや表面弾性波(SAW)フィルターなどモバイル機器の重要部品で世界トップ。藤田能孝副社長は「顧客を網羅する販売網を使って事業を拡大する」と話す。

 買収対象はスマートフォン、タブレット型端末向けなど。USBポータブル電源など消費者向けはソニーが事業を継続。中国やシンガポール製造拠点、国内外の研究開発、販売拠点など同事業に関する人員、資産は村田製が引き受ける。

 村田は自社で車載用電池などの開発を進めているが、まだ試作段階。ソニーの生産ラインを使って小さな投資で事業を拡大できるとする。積層セラミックコンデンサーで培った積層技術を生かし、固体電池などの次世代型製品開発も加速させるという。

 スマートフォン向けの部品で圧倒的な強さを見せる村田だが、電池事業の買収は大きな分岐点となるのだろうか。同社は将来の成長に向けた重点事業として自動車、ヘルスケア、エネルギーを掲げるが、電池がそれらポストスマホの成長を加速するキーデバイスとなり得るはず。

 ただ積層セラミックコンデンサーや高周波デバイスと違って、ソニーの電池事業はグローバル市場で劣勢。業績も悪化しており、大きなリスクを背負い込む恐れもある。同じ京都企業である日本電産のような、巧みなM&Aを見せられるかが試される。

 電子部品業界でM&A(合併・買収)や戦略的提携が活発化している。稼ぎ頭だったスマートフォン市場の成長鈍化が鮮明になり、自動車やIoT(モノのインターネット)など次の有望市場を攻める上で、他社と手を組み足りない有力技術や商材を補完することが攻略に不可欠となってきているからだ。

 「ここ2―3年はスマホで食べていけるが、そこからは先はどうなるか分からない」(大手部品メーカー首脳)。すでに多くの企業が部品が多用される自動車やIoTといったスマホ以外の成長分野に経営資源をシフト。特に車分野は先進運転支援システム(ADAS)の進化はもちろん、自動運転車の実用化が現実味を帯びてきており、「スマホなどで培った技術をうまく生かせれば、次世代車で我々がやれることは大きい」(栗山年弘アルプス電気社長)。

 ただ、いくら有望市場とはいえ限られた市場。競合他社との競争が激しさを増していく一方だ。こうした環境の中で勝ち残るには、他社と差別化した製品や技術を提案する力が試される。特に最近はセットメーカーが顧客のニーズに迅速に応えるため設計開発を効率化したり、エレクトロニクスの知見を持たない異業種やベンチャーがモノづくりに乗り出す動きが活発化している。

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最終更新:7月29日(金)7時41分

ニュースイッチ