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農福連携 現場に波紋 相模原19人刺殺事件

日本農業新聞 7月29日(金)7時0分配信

 神奈川県相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で26日、入所者が元施設職員に襲われ、19人が死亡、26人が重軽傷を負った事件は、農福連携を通し障害者を積極的に雇用する社会福祉法人や農家にショックを与えた。「人間の尊厳が踏みにじられた」「農福連携でやっと障害者が社会参加するようになったのに、こんな事件が起こると障害者を過剰に閉じ込めてしまいかねない」と懸念する声も上がっている。

「障害の否定」なぜ・・・

 計180人の知的・精神・発達障害者がトマトジュースやジャムなどの農産物加工品を生産する神奈川県平塚市の社会福祉法人・進和学園。同じ県内で起こった事件だけに、久保寺一男統括施設長は「障害者施設の元職員が障害者を手にかけたのが信じられない」と動揺する。「障害者はいない方がいい」との植松聖容疑者(26)の発言について、「日頃から接していれば、障害者の必要性や役割を理解できたはず。なぜ、人間の尊厳を踏みにじる考えに至ったのか」と憤る。

 同法人は二つの就労継続支援事業所を運営。現在、事業所内では不審者を感知し、通報するシステムを導入しているが、今回の事件は防犯対策を再考するきっかけになったという。久保寺施設長は「ここは日中の就労場所なので、不審者が侵入し、利用者に危害を及ぼす危険性は低い」としながらも、「これを機に事業所も含めた全施設で防犯の盲点がないか確認する」と話す。

必要以上に閉鎖助長

 「農福連携の推進で、ようやく地域社会に障害者が受け入れられるようになったのに・・・・・・。こうした猟奇的な事件が起こると、自衛の力が弱い障害者を守らなければと、必要以上に障害者を閉じ込めてしまうことになりかねない」

 静岡県浜松市で、ミツバやチンゲンサイを水耕栽培する農業生産法人・京丸園(株)代表の鈴木厚志さん(51)は懸念を抱く。

 知的・精神・発達障害のある24人を雇用して経営実績を挙げ、農福連携セミナーなどでは「障害者雇用で経済的なリスクはない」と言い続けてきた。今回の事件を踏まえて、「従業員の安全管理は雇用側の最重要事項だ。障害者だからと過剰に心配をするのではなく、大事な従業員のために必要な防犯を心掛ける」と決めた。(齋藤花)

農通じ社会復帰「偏見」が妨げに 共済総研・濱田主任研究員

 専門家は今回の事件をどう見るのか。農福連携に詳しいJA共済総研の濱田健司主任研究員は、精神障害者を対象とした精神保健福祉法に基づく措置入院をしていた植松容疑者の異常行動によって、「精神障害者は危険人物という偏見がはびこれば、農福連携推進の妨げになる」と懸念する。

 事件の背景には、障害者は「お荷物」とか「助けてあげる対象」といった偏見があると分析。「農福連携は、福祉施設の中にいた障害者が農業を通じて地域社会に出ていくこと。地域の役に立っているということが周囲に分かれば、こうした偏見がなくなり、社会に必要な存在として認識されるようになる」と説明する。

日本農業新聞

最終更新:7月29日(金)7時0分

日本農業新聞