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不屈の登山家が明かす「固い絆」 心に突き刺さった『ヒマラヤ』への思いとは

クランクイン! 7/29(金) 12:00配信

 山岳映画『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』のモデルとなった不屈の登山家オム・ホンギル氏が来日を果たした。日焼けした肌と豊かに盛り上がった腕の筋肉。小柄だが、体中からにじみ出るそのオーラは、ヒマラヤの頂きに立った者にしかない神々しさに満ちあふれている。劇中に描かれる山岳史上最も過酷な挑戦といわれた登山に、オム氏はなぜ命を懸けたのか。我々一般人には無謀とも思える決断の裏に隠された“固い絆”について、言葉を噛み締めるように静かに語った。

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 本作は、アジア初のヒマラヤ8,000メートル級高峰14座(現在は16座を完登)の登頂に成功した登山家オム(ファン・ジョンミン)率いる“ヒューマン遠征隊”の77日間に及ぶ壮絶な死闘を描いた実話。2004年、エヴェレストで命を落とした愛弟子パク・ムテクの亡骸を探すため、オムは仲間と共に彼が亡くなった"デスゾーン"と呼ばれる8,750メートルに挑む。そこには、名誉も栄光もない、あるのは血の繋がりよりも濃く、深く、そして固い絆だけだった…。

 完成した作品を観て、しばらく席を立てなかったというオム氏は、「最初から最後まで目が離せなかった。とても感動的な作品でした。大きな余韻というか、響きを感じました」と満足そうな表情を見せる。とくに印象深かったのは、やはり愛弟子ムテクの遺体と対面したシーンだという。「実はムテクが亡くなった2004年、私は彼と一緒にネパールへ旅立ちました。ムテクは母校テミョン大学の創立50周年を記念した登山でエヴェレストを、私は15座目となるヤルンカンという山をめざしていたので、同じホテルに1泊し、翌日、それぞれの目的地へ旅立った。それが最後になりましたね」と視線を落とす。


 そして1年後、自身の心の葛藤や仲間の説得など、紆余曲折を経て、登山を決行したオム氏は、遺体と対面することになる。「凍った彼の亡骸を抱きしめた瞬間、私の体中の血も凍り付くような感覚がありました。こみ上げてくる涙、嗚咽をこらえることができず、私はしばし理性を失った…」と言葉を詰まらせる。まさに映画で描かれたシーンそのもの、本作のクライマックスとなるところだが、「私を演じたファン・ジョンミンさんの迫真の演技は、心に突き刺さり、涙がどっと溢れ出た。あたかもそこに私がいるようだった」と賛辞を惜しまない。

 この映画は、大きなリスクを背負ってでも、友情のために命を懸ける登山家の"固い絆"を描いており、一般社会に生きる我々も感動の涙を搾り取られる。だが、その行動は、やはり我々一般人から見ると常軌を逸しており、「なぜ、ここまでできるのか?」と、愚問と知りつつも投げ掛けたくなる。これに対してオム氏は、「登山は自分自身を空にし、犠牲にしないといいチームは作れない。私たちは、生死の境を一緒に行き来しているので、お互いの命を“担保”にしながら山に挑戦するのです。だから、自然に強く固く深い絆で結ばれる。(ヒューマン遠征隊を)自発的に考え、行動に移すことができたのも、その絆があったからこそ」と言葉に力をこめる。

 登山で築いた絆は、登山を経験したものでなければ実感できない。けれど、人間の奥底にある“お互いを思いやり、お互いを信じる”という気持ちの原石は、みな同じ。だからこそこの映画は、全ての人の心に突き刺さり、その痛さから涙が溢れ出るのかもしれない。(取材・文・写真:坂田正樹)
 
 映画『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』は7月30日よりヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート新宿ほか全国順次公開。

最終更新:7/29(金) 12:00

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