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社説[障がい者の人権]社会で守る決意示そう

沖縄タイムス 7月30日(土)5時0分配信

 相模原市の知的障がい者施設「津久井やまゆり園」で19人が刺殺され、26人が負傷した事件で、関係団体が次々と声明文を発表している。
 容疑者の言動に傷つく障がい者の心に寄り添ったメッセージに共感が広がる。
 知的障がいがある人の親たちでつくる全国手をつなぐ育成会連合会は「障害のある人もない人も、私たちは一人一人が大切な存在です」とホームページで発信した。
 動揺が走る障がい者へ届くようにふりがなをふり「もし誰かが『障害者はいなくなればいい』なんて言っても、私たちは全力でみなさんを守る。安心して堂々と生きて」と呼び掛ける。
 一人一人の命の重さを思い、一日も早く普段通りの生活を取り戻してほしいという親たちの気持ちが伝わる文章だ。
 書くことさえためらうような内容だが、容疑者は「目標は重複障害者が安楽死できる世界」と主張し、「意思疎通できない人たちを刺した」などと供述しているという。
 重傷を負った女性の両親が「はらわたが煮えくり返る思いだ」とやり場のない怒りを口にしていたが、事件は障がい者本人だけでなく、家族や支援者も不安に陥れている。
 障害者基本法は第1条で「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり」と目的を記している。
 そんな当たり前のために、社会全体が声を上げる必要がある。
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 当事者団体であるDPI(障害者インターナショナル)日本会議は「障害者を『あってはならない存在』とする優生思想に基づく行為。強い怒りと深い悲しみを込めて優生思想と闘う」とする抗議声明を発表した。
 容疑者の言葉に振り回されることのないよう「ひるむことなく、活動を一層強化する決意」も示している。
 事件の約5カ月前、措置入院中の容疑者が「ヒトラー思想が降りてきた」と話していたことが分かっている。
 ナチス・ドイツは優生思想に基づき障がい者20万人以上を虐殺した歴史がある。健康で理想的な社会をつくるために劣った人間を排除するとして「安楽死計画」を推進したのだ。
 障がい者の存在を否定する容疑者の危険な思想は、特定の属性を持つ集団を憎悪し、標的とする犯罪「ヘイトクライム」そのものである。 
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 それにしても暗たんとした気分がとぐろを巻く。
 昨年11月、茨城県の教育委員が「(障がい児の出産を)減らしていける方向になったらいい」と発言し問題になったことがあった。
 障がい者は社会の邪魔になるという考えが足元で広がっているとしたら、社会の闇は深い。
 この春、施行された障害者差別解消法は、その人らしさを認め合いながら共に生きる社会を目指している。
 「全力でみなさんを守る」というメッセージを発信すべきは政府の方だ。

最終更新:7月30日(土)22時4分

沖縄タイムス