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沖縄の小離島に薬剤師 調剤に島民感謝

沖縄タイムス 7月30日(土)14時0分配信

 沖縄県粟国島で初めての調剤薬局「あぐに薬局」がスタートしている。昨年5月にオープン、調剤を始めて8月で丸一年。医科診療所がある沖縄県内の小規模離島では現在2店だけで、極めて珍しい。沖縄市などで薬局を営む生駒雅宣さん(61)=宜野湾市=が、離島の医療水準アップを志して開いた。(南部報道部・堀川幸太郎)
 あぐに薬局は薬剤師1人で平日午前9時~午後6時に営業する。近くの粟国診療所や本島の病院に通う患者の処方箋を受け付ける。特別養護老人ホームで使う薬も調剤。市販薬もあり、かつては本島で風邪薬や紙おむつを買いだめしていた住民は助かっている。
 生駒さんは、離島に薬剤師を置く意義を「医師・看護師と役割分担したチーム医療ができる」と語る。医師も自らの処方箋通りに薬を出せるが、その分診療時間を割く形になる。薬剤師は調剤などを担って手助けできる。また、一緒に往診して患者の服薬状況や効果を確かめ、助言もできる。
 粟国診療所を管轄する県立南部医療センター・こども医療センターの薬局長、長田茂さん(59)は6月末に現地を視察。「医師は仕事に専念できると話していた。薬剤師さんは折を見て1人暮らしのお年寄りがきちんと薬を飲めているか見に行ってくれていて、ありがたい」と感謝した。
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 物心ついた時から東京暮らしが長い生駒さんは、那覇市壺屋生まれ。外資系の製薬会社に勤め、48歳の転勤で沖縄に戻った。経験を故郷に役立てようと薬局運営会社を2014年に設立。翌15年、「あぐに薬局」を開いた。先輩の助言や、離島という点で同じ宮古島出身の母の存在が後押しした。
 あぐに薬局の経営は軌道に乗り始めた。しかし、粟国-那覇間で1年近く続く航空便欠航が影を差した。昨年8月末の第一航空=大阪=による粟国空港事故以来、再開のめども立たない。ヘリ便は予約が取れるとは限らず、定期船も欠航しがち。薬剤師が休暇後に予定通り戻れるかなど不透明な要素が大きくなった。
 現状のままでは運営に穴を開けかねないと判断し、8月からは薬局約100店を運営するプチファーマシスト社=大阪、柳生美江社長=に経営を譲る。生駒さんは「力不足。申し訳ない」と自らを責めるが、柳生社長は「経営の難しい離島に、あえて飛び込んだ理念やフロンティア精神を引き継ぎたい」と語った。

 【沖縄県内離島の公立診療所と薬局】県保健政策課や県内5保健所によると、公立診療所は20の離島にあり、このうち薬剤師のいる調剤薬局は粟国島と伊江島(1995年開設)にある。医療法に定める診療所(19床以下)より大きい病院がある宮古島・石垣島・久米島は除く。医科診療所に限り、休止中を外して7月現在で集計。

最終更新:7月30日(土)14時0分

沖縄タイムス