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Sprintは「と金」、ARMは「本業」、その他の事業は「禅譲」――海外事業により注力するソフトバンクグループ孫社長

ITmedia Mobile 7月30日(土)15時10分配信

 ソフトバンクグループは7月28日、2017年3月期(2016年度)の第1四半期決算を公表した。同日に行われた決算説明会で、孫正義社長は「Sprint事業」と「ARM買収」の説明に大きな時間を割いた。

【今度の買収は「無理がない」と説明する孫社長】

●Sprint:黒字転換にめど 利益に貢献する「と金」の存在に

 ソフトバンクグループ(当時は「ソフトバンク」)は2012年10月に米Sprintの買収を表明し、翌年7月に子会社化した。それ以来、米Sprintはソフトバンクグループの連結業績の「マイナス要因」であり続けてきた。

 しかし、2014年度からポストペイド(後払い)携帯電話の契約数が純増に転じ、2016年度第1四半期にはMNP純増も達成した。これは第1四半期同士の比較では過去5年間で初めてだという。解約率も改善し、この四半期ではSprintとして過去最低の1.39%となった。「『つながらない』ということで解約率が高かったが、ネットワークを改善し、総合的なサービスも改善した」(孫社長)結果が数値になって表れた格好だ。

 また、ポストペイド携帯電話ユーザーのABPU(1ユーザー当たりの平均請求額)も順調に伸び、売上高も安定化の兆しが見えた。コスト削減も順調に進んでいるという。

 結果として、Sprintは「今までのように(ソフトバンクグループの)足を引っ張る存在ではなくて、我々の利益に貢献できる側の存在」(孫社長)となるめどが付いたという。孫社長は、Sprintを将棋の「歩兵」のコマに例えて、敵陣の三段目に入って「と金」になったと説明した。

 企業が自由に使える余剰資金(フリーキャッシュフロー)面では、早ければ2016年中にも通年の余剰資金をプラス(黒字)か、限りなくプラスマイナスゼロにできる見通しだという。

 Sprint事業が好転したこと、ソフトバンク(旧・ソフトバンクモバイル)が手がける国内通信事業に関連する設備投資が一巡したことが、ARMの買収を後押しする大きな要因となったようだ。

●ARM買収:ソフトバンクグループの「本業」に 戦略はあえて語らず

 7月18日、電撃的に英ARMの買収を表明した孫社長。今回の説明会では「ソフトバンク(グループ)創業以来、一番大きな、一番中核になる事業」「圧倒的にソフトバンクの中心中の中心になる」「『ソフトバンク(グループ)の本業はARMです』と多くの人が思うほどの存在になる」と、さまざまな言葉でARMに対する期待を語った。

 ソフトバンクグループとしては過去最大となる約3.3兆円での買収の原資は、約70%を手元資金、残りの約30%をみずほ銀行からのブリッジローンで賄う。孫社長は「余裕を持った資金調達ができた」と、ARMの買収が財務上無理のない範囲で行うものであることをアピールした。

 ブリッジローンについても、2016年度に国内通信事業で生じる見通しの5000億円の余剰資金を踏まえて「実質無借金」(孫社長)と考えているようだ。

 ARMはプロセッサのアーキテクチャ(構造)を研究開発・設計する企業で、Qualcomm、MediaTek、Appleといったプロセッサを開発する企業にアーキテクチャのライセンスを供与して収益を上げている。直近では売上高、利益は安定して成長しており、利益率も高い。今後も、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)技術の進展によって組み込み機器向けのプロセッサアーキテクチャのライセンス提供の増加が見込まれ、売上・利益の絶対額は「これからも『うなぎ上り』」(孫社長)を続けることが予想される。

 そのような状況で、孫社長は「この2~3年、あるいは4~5年間は目先の利益を少し減らしてでも、売上やシェアの拡大、技術者の増員、研究開発費の増額、IoT時代のパラダイムシフトに向けた先行投資をしよう」とARMの関係者に語りかけているという。

 さまざまなデバイスにARMアーキテクチャのプロセッサが使われ、それがインターネットを介して「横」につながることで、「広い意味でのソフトが(インターネット上)でバンク(保存)され、世界中の人と分かちあう」という、孫社長が1981年にソフトバンクグループ(当時は日本ソフトバンク)を創業したときから思い浮かべてきた理想をいよいよ実現する――それが、ARMの買収を提案した大きなきっかけとなっているようだ。

 ただし、従来のソフトバンクグループの買収とは異なり、ARMの買収は既存事業との相乗効果に乏しいことも事実だ。この点について質疑応答で改めて問われた孫社長は、「(相乗効果が見えない)だからいいんですよね」とした上で、「シナジー(相乗効果)がすぐ見える会社は独占禁止法上、ARMを買収できない。だからこそ、(相乗効果が)直接見えないソフトバンク(グループ)が買いに行ける」と相乗効果が直接的にない「メリット」は説明したものの、既存事業との具体的な相乗効果については説明を避けた。

 当面の間、ソフトバンクグループはARMの既存の経営戦略を加速するとしている。将来のARMの姿、あるいはグループ全体に対する相乗効果については孫社長の「頭の中」だけにあるに等しい状況だ。

●その他の事業:割く時間は「10%」の一部 権限委譲を推進

 説明会の質疑で「SprintのCNO(最高ネットワーク責任者)職をいつまで続けるのか?」と問われた孫社長は「少なくとも来年(2017年)末までやる」と回答した。その上で、自身の執務時間の45%をSprint事業に、45%をARM事業に割り当てるとした。つまり、国内通信事業を含むその他の事業は残り10%の時間で行うことになる。

 しかし、その他の事業も、「10%」では片付かないほどの規模感がある。この点については、宮内謙副社長(ソフトバンク社長などを兼任)に国内事業、ロナルド・フィッシャー取締役(Brightstar Global Group会長などを兼任)にSprintとARMを除く海外事業を一任するなど、順次「禅譲」を進めることで乗り切る考えであるようだ。

最終更新:7月30日(土)20時59分

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