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米国で確実に近づく「富裕バブル」崩壊の足音

ニュースイッチ 7月30日(土)9時15分配信

水準はリーマン・ショック直前を超える高さ

 1990年代から米国では、バブル生成と破たんというマーケットサイクルが繰り返されている。直近のバブルは、09年から始まった中央銀行相場による「富裕バブル」である。リーマン・ショック直後から先進諸国の中央銀行は、経済と金融を大恐慌から救うために大規模な量的緩和を実施し続けた。

 「ヘリコプターマネー」(上空からヘリコプターで紙幣をばらまくような緩和策)のおかげで市中には通貨量が増え、投機筋が上げ相場を見込んでリスクオン(リスク選好型)になることを予想し、市場関係者はそのトレンドに乗ろうとする。

 こうして株や不動産などの資産価格が上昇し、資産家は手持ちの資産価値が増えるので、気前がよくなってお金を使い始める。そこで富裕効果が実体経済を刺激し、個人消費が伸び始め、生産活動が活性化し、景気が上向くというイメージである。こうした資産バブルを景気が後追いするというパターンがいつまで有効なのだろうか。

 現在、米国の企業決算はエネルギーセクターを除けば好調で、堅調な雇用統計も後押しして富裕効果が実体経済に好影響を及ぼしているようだ。7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げを見送り金利を据え置いたものの、9月のFOMCでは利上げ実施の可能性が出て来ている。

 英国の欧州連合(EU)離脱により世界景気の落ち込みが懸念され、加えて供給過剰の見込みから直近、原油安となっているが、米国株式市場は原油市場の下げに関係なく、上昇している。

 ところが、元米連邦準備制度理事会(FRB)エコノミストのダニエル・ソーントンとジョー・カーソンの両氏は、金融市場では既に富裕バブルがピークに達していると分析している。

 両氏のリポートによれば、09年の景気後退期から米国の株価や不動産価格は倍になり、持ち家や株式などを保有する世帯当たりの金融資産価値も倍増し、可処分所得の6・4倍となっている。この水準はリーマン・ショック直前を超える高さである。

 富裕バブルが景気に先行し実体経済が後追いするというパターンが繰り返されるとなれば、間もなくバブルは破たんし景気がタイムラグを持って来年には落ち込むというシナリオが予想される。バブル破たんのトリガーは何か。

 筆者は国際金融市場の資金のやりとりと決済状況を注意深く見守っている。国際的な緊張が高まりテロ行為が横行するなか、マネーロンダリングなどを防ごうと国際間の決済に遅延や凍結のリスクが高まっている。

 資金の流れが滞り、物流に支障が出れば、貿易国家である日本はその影響をじかに受けるだろう。ここ6―12カ月、経営者は手元資金や流動性に注意を払う必要がある。

大井幸子(国際金融アナリスト兼SAIL社長)

最終更新:7月30日(土)9時15分

ニュースイッチ