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「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第32回:一芸(岡山学芸館高DF平野智大)

ゲキサカ 7月30日(土)16時2分配信

“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」

 インターハイの通称で知られる全国高校総体は、サッカーだけでなく、陸上や競泳など様々な競技が行われている。もし、サッカーボール投げという種目があったなら、彼は優勝候補だろう。

 サッカー競技の1回戦、強い日差しが肌を焦がす東広島運動公園陸上競技場に「1投目、平野君」というアナウンスが聞こえそうなロングスローがさく裂した。後半から出場した岡山学芸館高(岡山)のDF平野智大が投げたライナー性のボールは、ぐんぐんと伸びてゴール正面まで飛び、見る者すべてを驚かせた。学芸館の一芸選手の見せどころだった。平野は「僕は、あれしかない。登録メンバーの17人で足下の技術は一番下だと思います」と苦笑いで話したが、決定機に結び付く場面もあり、見ごたえ十分だった。

 助走、腹筋と背筋、肩、手首を一連の動きでつなげ、各部位の力をトータルで発揮するのは、難しい。しかし、平野は他競技で培った独特の感覚を生かしている。小学生時代にサッカーと並行して取り組んだ水泳で得意としていたのが、背泳ぎ。母と妹がやっていたバレーボールに趣味で参加したときに得意としたのが、スパイク。どちらも腕を背中側へ動かす。スローインでボールを振りかぶる姿勢に違和感を覚えず、力を伝えられることと無関係ではない。

 中学生時代にロングスローをマスターし、「玉野光南高にすごいのを投げる人が2学年続けていたので、3代目を継ごうかと思った時期もあった」と話すほどに自分の武器とした平野は、今年に入ってからライナーに挑戦。入学時はタッチラインから投げて山なりでニアポストまでだったが、ゴール正面まで投げられるようになった。ハンドボール投げでも、スローインで30メートル以上を記録。今後は、さらにコントロールと速度を磨きたいという。「ボールの質で距離が変わる。片手で持てるくらいにくっつくボールは、最後の手首のスナップが効いてよく飛ばせる」と話す様は、もはや職人だ。

 もちろん、いくら強烈と言ってもスローインのみで活躍の場を得ることは難しい。平野が選んだのは、他競技ではなく、サッカーだ。今後の抱負を聞くと「これからは、足下の技術を磨いて先発のポジションを獲得したい」と話した。課題は百も承知だ。総体は結局、1回戦で敗退。しかし、観衆のどよめきは忘れられない思い出になった。冬の全国高校選手権でロングスローがテレビ放映されたらと思えば、課題克服も頑張らずにはいられない。


■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」

最終更新:7月30日(土)16時16分

ゲキサカ

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