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もう「自称オリジナル」にダマされない 隠れ海外OEM製品の見抜き方

ITmedia PC USER 7月31日(日)6時25分配信

連載:牧ノブユキのワークアラウンド(PC周辺機器やアクセサリー業界の裏話をお届けします)

【それはメーカーと言えるのか】

 ネットがまだ本格的に商取引で使われていなかった90年代の半ば頃までは、海外のメーカーから買い付けた製品をそのまま国内で売れば、ユーザーにそのユニークさを面白がってもらえるとともに、売上もそれなりに上げることができた。

 しかし現在は海外のマイナーメーカーの製品であれど、画像検索をすればすぐに「元ネタ」を見つけられる時代である。海外から直接こうした製品を買う個人ユーザーも少なからず存在しており、誰にも元ネタを気付かれないまま海外から仕入れて販売するのは、難しくなりつつある。

 こうした海外製品の取り売りは、法的に何らかの問題があるわけでは全くないが、そもそもこうした製品は検証が不十分なまま売られることも多い。また、輸入にかかるコストや為替レートを差し引いても割高で、OEM元を隠すのはユーザーにそれを悟られないためというケースがままある。

 自社開発力がなく、リスクを回避して手っ取り早く知名度を上げたい新興メーカーは、こうした策を依然として取りがちだ。

 これに近い事例として最近目立ち始めているのが、日本国内でのクラウドファンディングだ。日本のクラウドファンディングは海外のようにOEM製品の出品が禁止されていないことが多いため、仕入れた海外製品を自社開発のように見せつつ、数量限定で売りさばくという、取り売りそのものの手口が横行している。中にはOEMであることを事前にユーザーに知らせず、納期遅延でそれが露見し、炎上につながるケースも出ているようだ。

 こうした製品は見る人が見れば一目瞭然なのだが、いくつかの「細工」が施されていると、それらを新製品として報じるニュース媒体の記者などのメディア関係者ですら、コロリと引っ掛かってしまうケースが意外に多いので笑えない。

 海外で既に実績がある製品をオリジナルと勘違いして「さすが○○社! 目の付け所が違う!」などと吹聴しまくるのは、情弱だと自らアピールするようなもので、避けたいところである。

 前置きが長くなったが、今回はこうしたメーカーおよび国内クラウドファンディングでよく見られる、OEM元隠しの手口を「ダマされない海外OEM製品の見抜き方」として紹介していこう。

●OEM元が分からないようにするための「細工」とは?

 製品のOEM元が分からないようにするには、製品の見た目を変えてしまうのが何より効果的だ。

 特に周辺機器は、外観が変わっても機能そのものに影響はないし、またボディーデザインの好みは文化圏ごとに大きく異なるので、その国が好むオリジナルのボディーに差し替えれば、プラスアルファの販促効果が見込める。少なくとも外観がまるっきり変われば、プレスリリースの段階で、「あっ、これは海外で売っているあの製品だ」と、ユーザーに指摘されることもなくなる。

 とはいえ、オリジナルのボディーを作るとなると、デザイン料や金型代などのコストもかかるし、ロットの関係で何千個、何万個単位の買い取りが発生することもある。また、ボディーデザインの変更が原因で放熱が不十分となり、不良品の発生率が上がることもある。

 それゆえよく用いられるのが、ボディーのデザインは変えず、成型色もしくは塗装の色だけを変えるワザだ。色を変えるだけなら現状の金型がそのまま使えるのでコストは抑えられるし、時間をかけて放熱などの再試験を行う必要もない。

 もう1つ、目立つ位置にメーカーもしくはブランドのロゴを入れるのもお手軽な方法だ。一般的に、ボディーにデカデカとロゴが入っていると、ユーザーの注目がそちらに集まり、ボディーの形状の印象は薄れるので、この方法は有効だ。逆に言うと、不自然なまでにロゴが目立つ製品は、怪しいということになる。

 なお、以前別の記事で紹介したが、こうした場合のロゴはボディーに彫り込まれた、いわゆるモールド加工ではなく、必ずシルク印刷になる。理由は簡単、メーカーのロゴを彫り込むには金型を修正しなくてはいけないためだ。もっとも最近は、ロゴの部分だけを差し替えられる構造にし、いかにも自社製品のような外観を持たせられるOEM専用の製品も少なくない。

●イメージカットに外国人モデルはご法度?

 ここまで見てきたのは製品そのものに手を加える方法だが、もう1つ重要なのが、Webページや製品パッケージ、ニュースリリースなどに使う写真の差し替えだ。本体写真の数々が、OEM元の写真と同じカットだと、画像検索などで「身元」があっさりと割れてしまう。それゆえ、OEM元から提供された画像は使用せず、独自のアングルで写真を撮り直すことが何より重要だ。

 これは使用例写真についても同様である。イメージカットの中で製品を手にしているのが外国人モデルだと、海外発の製品だと自ら告白しているようなものなので、日本人モデルで再撮影を行うのが常とう手段だ。余談だが、海外展開を見据えた国内メーカーのオリジナル製品では、日本人ではなくあえて外国人モデルを起用することがあり、結果的に見た目が同じようになりがちなのが面白い。

 さらに慎重を期するのであれば、もう1つ「大技」がある。それはシリーズ化だ。同じように海外から仕入れた製品をまとめ、統一色およびパッケージで1つのシリーズとして発表すれば、シリーズそのものに目が行き、1つ1つのOEM元を探られる危険性は減る。OEM元がバラバラであれば、追跡はなお困難になるというわけだ。

 ちなみに周辺機器などの通電モノについては、ソフトウェアのデザイン変更も重要だ。Webブラウザで設定する製品であれば、Web設定画面のHTML構造はそのままに、背景色を変えたりロゴを追加したりして、見た目が異なって見えるように加工する。

 ただし、プログラム本体に手を加えるのはまず無理なので、Web設定画面であればURLのパターンや、ファームウェアのファイル名の命名ルールなどから供給元は容易に分かってしまう。競合メーカーの新製品の身元を調べる際、真っ先にファームウェアのファイル名を見るというメーカー関係者もいるほどだ。

●メディアが好みそうなストーリーを用意する自称メーカー

 以上、お決まりの「手口」を見てきたわけだが、ユーザーとしてはまず何よりも「この自称メーカーは、本当にこれだけの製品を開発する技術力があるのか」と疑ってかかるのが、こうしたOEM製品にダマされない第一歩だ。

 そもそもこれまで名前も聞いたことのないメーカーが画期的なオリジナル製品を作れる技術力があるのなら、過去に類似の発表を行っているのが普通だし、もし長い下積み期間を経てようやく製品の発表に至ったのであれば、その開発ストーリーを自ら語りたくなるのが普通だ。それがないのは自社内に開発ストーリーがない、つまり技術力がないと自ら明かしているようなものである。

 海外には、日本のOEMビジネス向けに製品を売り込む専門の商社も数多く存在しており、ある自称メーカーの製品ラインアップは実は全てがたった1つの商社経由で仕入れられている、というケースもある。

 過去に他のメーカーで実務経験のあるスタッフが中にいると、こうしたOEMビジネスのルートを知らないわけはない。それゆえ大変な手間と時間をかけて自社開発を行うのではなく、既存のOEM製品を取り売りする方向を選択しがちだ。「将来は自社開発も行いたいが、まずは当面の利益を上げるため」とOEMビジネスに着手した結果、OEMしかできない自称メーカーになってしまった例は数知れずだ。

 こうした製品を発表する際は、海外製品がベースであることが露見したときのために「自社なりのこだわりを持って海外製品に手を加えた」という、メディアが好みそうなストーリーを事前に用意し、それを逃げ口にするのが常とう手段である。

 しかし、実は色やロゴしか変わっておらず、後は日本の法令に合わせるために施さざるを得なかった修正を、独自性と言い張ってしまうケースもしばしばだ。仕様を変えている場合でも、元のOEMメーカーがカスタマイズ可能としている範囲内で変えているだけなので、オリジナル性は極めて低い。

 言い換えると、よほど「前職でできなかったことを実現させる」と息巻いているケースを除けば、こうしたメーカー出身者が母体となっているメーカーは、OEMビジネスを熟知しているゆえ、逃げに走りやすい。

 むしろ大学発のベンチャーなどの方が、スケジュールやコスト面での経験値の低さから納品周りのトラブルが起こる可能性はあるものの、技術力をベースにしたオリジナル性の高い製品を生み出す可能性は高い。クラウドファンディングにせよ何にせよ、こうしたメーカーの方が開発ストーリーを語ることができ、ユーザーとしても納得して支援したくなる存在ではないだろうか。

最終更新:7月31日(日)6時25分

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